書いてあること
- 主な読者:ハラスメント相談窓口の設置方法などについて知りたい人
- 課題:ハラスメントのことを周囲に知られたくない社員などが、相談をためらってしまう
- 解決策:内部相談窓口と外部相談窓口を併設し、相談方法や担当者を複数設ける
1 相談のハードルをいかに下げるかがポイント
労働施策総合推進法などにより設置が義務付けられている「ハラスメント相談窓口」(以下「相談窓口」)には、ハラスメントに関する相談や苦情を受け付け、被害を最小限に食い止める役割があります。相談窓口がうまく機能していれば、深刻なハラスメント問題に至る前に事態を収めることができます。そして、うまく機能させるには、
社員から「相談しにくい」と思われそうな要素をできるだけなくすこと
が大切です。
例えば、相談窓口には、
- 内部相談窓口:社内の人材を相談窓口の担当とする
- 外部相談窓口:弁護士事務所やコンサルタントなどに委託する
- 併設:内部相談窓口と外部相談窓口を併設する
の3種類があります。中小企業では内部相談窓口が一般的ですが、「内部だと相談しにくい」という社員のケアや、複雑な事案への対応も考えるのであれば、外部相談窓口も併設するのが理想です。
また、相談窓口の存在は必ず社員に周知しなければなりませんが、その際は、次の事項などを分かりやすく伝え、相談のハードルを下げる必要があります。なお、これらの事項は、相談窓口を設置したときだけでなく、定期的に周知することが大切です。
- 相談者のプライバシーを守ること
- 相談しても不利益はないこと
- 実際に起きていなくても、ハラスメントが起こりそうな状態の相談も受け付けること
- 面談、電話、メール、ウェブ上のフォーム、郵送など相談方法を選べること
- 相談担当者として男女それぞれを設置していること
また、相談窓口が使いやすいかどうかは、傍目からは分かりにくいので、「相談しにくい雰囲気がないか」などを、社内アンケートなどで実態を調査することも大切です。逆にちゃんと運用されていて、その上でハラスメントの問題が起きていないのであれば、それは相談窓口がうまく機能している証拠ですから、評価しないといけません。
2 「相談しにくい……」と思わせない担当者を選ぶ
内部相談窓口の担当者には、次のような人たちがいます。
- 経営者や役員
- 管理職
- 人事労務担当部門や法務部門の社員
- 社内の診察機関、産業医、カウンセラー
- 労働組合
経営者や役員が担当者になると、相談を受けた後の事実確認や行為者の処分の検討などをスピーディーに行えます。ただ、「経営者には相談しにくい」という社員もいますし、万が一、経営者や役員が行為者の場合、周囲が忖度(そんたく)してしまうこともあります。
こうしたデメリットを考慮するのであれば、経営者や役員だけでなく管理職も担当者に加えるようにしましょう。とはいえ、相手が直属の上司だと、やはり相談しにくいケースもあるので、その場合は複数の管理職を担当者にするなどの配慮が必要です。
また、セクハラの場合は羞恥心の問題もあるので、同性の担当者が相談を受け付けるのが望ましいです。そうした意味では、男女両方の担当者を置くことも大切です。
3 相談担当者の教育や研修を実施する
信頼できる相談窓口を作るためには、ハラスメントの基本知識や相談への対応方法等に関するマニュアルを作成したり、相談担当者に対する研修を実施したりするようにしましょう。相談担当者がうまく対応できないと、二次被害(相談窓口の担当者の言動によって、相談者がさらなる被害を受けること)が発生してしまう恐れがあります。こうした事態は防がなければなりません。
また、相談窓口には、内部告発(内容はハラスメントに限らない)の声が寄せられることもあります。こうした声は公益通報として、公益通報者保護法の保護下に置かれます。公益通報保護法では、社員数が常時300人超の会社に対し、「内部通報窓口」の設置などが義務付けられています。要件に該当する会社は、
相談窓口と内部通報窓口を一体的に運用すること
を検討してみるのもよいでしょう。
近年、ハラスメント事案が年々増加する傾向にある中、これからの相談担当者は最新の法律知識・社会的動向などを踏まえた対応を求められることになります。
4 フリーランスにも相談窓口の存在を明確に伝える
2024年11月1日から、フリーランス(注)に対しても、社員と同様のハラスメント防止措置を講じることが義務付けられます。相談窓口についても、基本的に社員と同じ窓口をフリーランスにも適用するという対応で差し支えありませんが、注意しなければならないのは、
あらかじめ相談窓口の存在を明確に伝えておかないと、ハラスメント事案が発生した際、フリーランスが外部のユニオンなどに駆け込んで、問題が大きくなる恐れ
があることです。フリーランスと契約を締結する際に、相談窓口の担当者や連絡先を、書面などで明らかにしましょう。
(注)ここでいうフリーランスとは、業務委託先の事業者であり従業員を使用していない者(いわゆる個人事業主等)を指します(フリーランス・事業者間取引適正化等法)。
以上(2024年11月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)
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