書いてあること

  • 主な読者:社内表彰制度の導入を検討する経営者
  • 課題:自社に合った社内制度の設け方を知りたい
  • 解決策:表彰をする目的から、それに合った社内表彰制度を考えてみる

1 社内表彰制度とは

社内表彰制度とは、永年勤続表彰をはじめとして、業績表彰・皆勤表彰・改善提案表彰といった、企業の内部で行われる各種表彰制度の総称です(以下「表彰制度」)。

根本的には、どの表彰制度も「顧客サービスの向上」「社員の一体感の強化」「コーポレートブランドの強化」などの目的を持つ、いわゆる「インセンティブ制度」の一種といえます。

同じインセンティブ制度であっても、内容や基準の違い、個人に対するものかグループに対するものなのかなどにより、それぞれの表彰制度が社員に与える効果は異なります。そこで本稿では、主な表彰制度を分類し、それぞれの役割や効果、適切な運用方法について考えます。

2 表彰制度の分類

多くの企業が、さまざまな表彰制度を設けています。表彰の目的からそれらを分類すると次のようにまとめることができます。

  • 業績達成のための表彰制度
    営業成果表彰(売り上げ、新規顧客の獲得など)、営業目標達成表彰、顧客紹介キャンペーン
  • 社員のモラールを向上させるための表彰制度
    皆勤表彰、無事故表彰、永年勤続表彰、善行表彰
  • 社業に貢献するための表彰制度
    アイデアコンテスト、改善提案
  • 企業の節目に際して行う表彰制度
    創立記念日
  • 社員の節目を祝うための表彰制度
    定年退職記念、誕生日記念

なお、この分類は、表彰制度の一次的な目的に基づいてまとめています。例えば、皆勤表彰は、「社員のモラールを向上させるための表彰」だけではなく、社員のモラール向上が生む生産性の向上により「業績達成のための表彰」につながるとも考えられますが、こうした二次的な目的では分類していません。

3 目的に応じた表彰制度の効果と運用方法

1)業績達成のための表彰制度

企業の売り上げや利益を伸ばすための表彰制度です。「コンテスト」などの形で取り入れる企業が多いようです。

運用方法としては、営業コンテストの場合、社員個人やチーム単位で次のような方法を取っているようです。

  • 通常の業績評価と同様に、商品の売り上げや販売数で順位を付ける
  • 商品ごとに販売ポイントを設定して、累計ポイントで順位を付ける

こうした表彰制度は、たとえコンテスト形式にしたとしても、上司の販売促進姿勢が強くなりすぎたり、社内に過度の緊張感が漂ったりして、社員から不満が出ることも考えられます。こうした不満を少なくするためには、ビジネスの「生々しさ」を極力抑えたポイント制などによって、評価を決定するとよいかもしれません。

また、営業職以外の社員をコンテストに参加させる際に、特に気を付けるべき点として、明らかに達成が困難なノルマを設定しないことが挙げられます。

普段、営業をすることのない総務・経理といった間接部門の社員に明らかに達成が困難なノルマを設定すると、「専門外の仕事」をさせられているという不満が募り、表彰制度は、かえって社員のモチベーションを下げる結果に終わってしまう可能性があります。こうした不満をできるだけ抑え、かつコンテストで一定の成果を上げるには、チーム単位で競わせるのも良い方法といえます。

さらに、間接部門の社員をコンテストに参加させる際は、表彰の敷居を低くするために次のような工夫も必要でしょう。

  • 知人などの中から見込客を営業に紹介した時点でポイントを付与する
  • 消費者向けに販売しやすい安価な商品をコンテストの対象にする

なお、表彰する社員に与える報奨は、業績という企業の成果に直結する制度の場合、品物ではなく、報奨金にするケースが多くなっています。一人に対して支給する報奨金の金額は企業によってさまざまです。報奨金以外では、海外旅行を報奨としている企業もあります。要は、社員がやる気を出してくれるだけの魅力ある報奨を用意することが大切といえるでしょう。

2)社員のモラールを向上させるための表彰制度

企業や仕事に対する社員のモラールを高めるための表彰制度です。こうした表彰制度には、職場の雰囲気を良くし、社員の企業に対する帰属意識を高める効果があり、これらを通じて業績を向上させる効果もあります。例えば、無事故表彰によって事故が減り、車の修繕費が節減され、利益が増加するなどのメリットがそれに当たります。また、管理職を対象に、ダイバーシティや部下との円滑なコミュニケーションなど、ワークライフバランスに関する取り組みを表彰している企業もあります。

しかし、こうした表彰制度が持つ業績を向上させる効果は、あくまでも二次的なものです。経営者がこの効果に期待を寄せるのは当然かもしれませんが、社員にまでその認識を押し付けるのは得策とはいえません。多くの社員は、これまで頑張ってきたことを企業に素直に評価してほしいと思っているものです。

従って、この表彰制度では、本来の目的であるモラールを向上させるために、次の点が大切になります。

  • 全ての社員に「まじめにやれば報われる」という希望を持ってもらう
  • 全ての社員に平等にチャンスを与える

このような観点から、こうした表彰制度では、皆勤賞や永年勤続表彰など、仕事の能力自体よりも、むしろコツコツ続ける毎日の努力に対して表彰を行うべきといえます。無事故表彰の場合は、「◯年以上無事故」「○年間皆勤」を達成すれば表彰するといった具合に、「継続こそ力である」という趣旨で制度を定めるのがよいでしょう。

なお、こうした表彰制度の報奨は、国内旅行、小額の報奨金、時計などの記念品、商品券、文具などが多いようです。

3)間接的に社業に貢献するための表彰制度

社員からさまざまなアイデアを募集するコンテストや、書類の整理方法の工夫・日常業務の効率化などを表彰する制度です。

こうした表彰制度は、本業に閉塞しがちな社員の頭の中を切り替えられるとともに、日々の業務以外にも企業にとって必要な活動があることを社員に示すことができます。一方、間接部門の業務改善提案などは、ルーティン化している業務に新しいアイデアを取り入れ、生産性を向上させる可能性があります。

なお、アイデアや改善提案の評価方法には「提案の優秀性」「年に何件提案したかという回数」などがあるでしょう。

また、提案の方法としては「個人による提案」「部や課、チームなどのグループによる提案」などがあるでしょう。映画館の1シアターを貸し切り、事前に書類選考で選ばれた候補者を集めて大会形式のプレゼンテーションを行っている企業もあります。どの方法を取り入れるかは、それぞれの企業の組織形態や業務の進め方などに沿って検討するのがよいでしょう。

改善提案やアイデアコンテストの報奨は、次のような基準で報奨金を支給する企業が多いようです。

  • 提案の質に応じて500円程度から10万円程度の報奨金
  • 規定の提案件数を満たした上で一定の水準以上の提案者に一律5000円

なお、ニュービジネスに関するアイデアなど、直接売り上げに結びつく可能性があるものは、一般に報奨金の金額も高く、50万〜100万円といった高額の報奨金を支給している企業もあります。また、賞金だけでなく、トロフィーや特別休暇などを賞品として授与しているところもあります。

4)企業の節目に際して行う表彰制度

創業記念日などの企業の節目に際して行う表彰制度です。この節目に際して永年勤続を表彰する他、企業がこれまで業績をあげるのに貢献してきた社員に対して感謝の気持ちを伝える行事を行ったり、創立記念日を制定したりすることもあるようです。

創業記念の場合、大企業などでは盛大な行事を開くところもあるようですが、中小企業ではお菓子などの簡単な記念品の配布や、パーティー、社員旅行などの社員全員で楽しめる企画を実施することが多いようです。

5)社員の節目を祝うための表彰制度

誕生日、結婚記念日など、社員の人生の節目を祝う表彰制度です。

記念日を迎えた社員に、企業から贈り物をするのがこの表彰の趣旨です。社員に対する細かな心配りができるかが、この表彰制度の正否を左右するといえるでしょう。

ケーキ(誕生日)、筆記用具(成人式)、書籍、アルバムなど、多くの費用をかけなくても「気持ちの通じるもの」を贈るとよいでしょう。また、表彰制度と併行して、誕生日、結婚記念日などに特別休暇を与える制度も実施すれば、休日増加策としても利用できます。

4 社内表彰を行った場合の税制上の優遇措置

社内表彰を行った場合に支給する記念品などは、次に掲げる用件を満たしていると、給与としての課税をしなくてもよいことになっています。

1.創業記念などの記念品の場合

  • 支給する記念品が社会一般的にみて記念品としてふさわしいものであること
  • 記念品の処分見込価額による評価額が1万円(税抜き)以下であること
  • 創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給をするものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること

2.永年勤続者に支給する記念品や旅行や観劇への招待費用

  • 勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること
  • 勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること
  • 同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること

なお、記念品を支給したり旅行や観劇に招待したりする代わりに現金や商品券を支給する場合、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。また、本人が自由に記念品を選択できる場合にも、その記念品の価額が給与として課税されます。

以上(2018年12月)

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画像:photo-ac

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