書いてあること
- 主な読者:現場で率先して交渉できる社員を育成したい経営者
- 課題:言われたことを右から左に伝言するだけで、自らの意思がない
- 解決策:「雇われ」のフレームを外す。その上で、目的を共有して成功を定義し、権限を与える
1 ほとんどの条件は交渉可能
意外と気付いていない人が多いのですが、
実は相手が提示してくるほとんどの条件は交渉可能
です。これを知っている一部の人は、後手に回ることがないように先んじて相手と交渉します。そして、互いに少しずつ譲歩し合いながら落としどころを探ります。交渉が進むほど積み上げられる合意事項も増えていくので、後から覆すことは難しくなってきます。
ですから、早い段階から社員が現場で交渉をしてくれたら、自社にとってもっと有利な条件を引き出せる可能性が高くなります。にもかかわらず、ほとんどの社員は現場で交渉をしません。そもそも、交渉するという意識がなく、
社長や上司から言われたことを相手に伝え、相手から言われたことを社長や上司に報告するだけ
というケースがほとんどです。では、どうすれば現場で交渉できる社員を育てることができるのでしょうか。その点をこの記事で明らかにしていきます。大切なのは、
ビジネスの目的を共有して成功の定義を社員に伝え、権限を与えて何度も交渉させること
です。
2 魔法の質問。これ1つでだいたい分かる
次のグラフを見せながら、社員に、
売り上げが欲しい。3つの事業のどれを選ぶ?
と質問してみてください。お気付きと思いますが、この質問はとても曖昧です。きちんと答えるためには、社員が自ら仮説を立てて、一定の前提条件を設定しなければなりませんが、まさにここが非常に重要なポイントです。
この質問の答えによって、社員はおおむね3つのグループに分けられます。
グループ1は、自分が叱られないことしか考えていないので論外です。取り繕っているだけで、自主性がありません。グループ2は、「雇われ」の立場に慣れていて、自分で考えられなくなってきています。しかし、実力を備えていることもあり、教育する価値があります。グループ3は理想です。ポイントは、
- 与えられた情報が全てではないこと
- 自ら切り開こうとしていること
です。ただ、グループ3に該当する社員は既に現場で交渉しているはずですから、教育の対象となるのはグループ2の社員です。
3 「雇われ」の呪縛から解放する
グループ2の社員は、指示通りに動くことに慣れている、あるいはそうするように指示され、その指示に従っているだけです。つまり、「雇われ」の立場に慣れているのです。ここから一皮むけてもらうために、「言われたことだけをやる」「失点したくないのでチャレンジしない」といった意識を変える必要があります。
そのために経営者が行うべきことは、
- 目的を丁寧に共有すること
- 成功を定義すること
- 権限を与えること
です。
まず、ビジネスの目的を丁寧に共有しましょう。前述した事業の選択の場合、「投資家に成長を印象付けるために売り上げが必要」「中期経営計画の中で、次世代の事業の柱を構築する」といったように伝えます。
目的を伝えても、「雇われ」の立場に慣れた社員は何をすればよいのか分からず、指示を待つだけです。そこで、成功を定義してあげましょう。例えば、「顧客Aとの取引を中期的に拡大し、売り上げを2倍にする。利益率が5%落ちても構わない」といった感じです。こうすることで、社員は自分がどこに向かい、具体的にどのような条件を勝ち取るべきかが分かります。
最後に、実行するための権限を与えます。そして、交渉することも社員の役割であることを教え、実際に交渉をしてもらいます。交渉に慣れていないと、自分の意見を押し通そうとするだけで局面が作れず、結果として物別れになります。この問題は経験を積むことでしか解決できないので、
失敗してもいいので交渉を続けさせる
ことが不可欠です。経営者が交渉する席に同席させることも効果的です。こうした育成をする中で社員に自主性が芽生え、自ら行動するようになっていくでしょう。
以上(2024年2月)
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画像:photo-ac