書いてあること
- 主な読者:社員に新しいアイデアを積極的に出してもらいたい経営者や管理職
- 課題:ミーティングの場で社員がなかなか意見を出さない
- 解決策:ちょっとしたきっかけで社員のアイデアは活性化するもの。ブレストやシックス・ハット法といった、社員が意見を出しやすい「仕掛け」を実践してみよう
1 組織の進化にオススメな“モヤモヤ”ミーティング
今までと同じことをやっているだけでは、会社は成長できません。新しいことに取り組んでいくために、社員にアイデアを出してもらいたいところですが、募集してもなかなか出てきません。社員はアイデア出しに慣れていなかったり、アイデアはあっても、「練っていないので、人に話すことができない」と思い込んでいたりするからです。
そこで、経営者や管理職の方々にご提案したいのが、
社員を巻き込んだ“モヤモヤ”ミーティングの開催
です。これは、社員が日ごろ、なんとなく「これがいいな」と“モヤモヤ”思っているアイデアを自由に披露する場をつくるというもので、オンライン・オフラインのどちらでもできます。“モヤモヤ”ミーティングを活性化する5つの仕掛けを紹介しますので、ぜひ実践してみてください。
- 苦手そうな社員には課題を出してみる
- ブレーンストーミングで場を活性化する
- シックス・ハット法で掘り下げる
- 明るく楽しくテンポ良く
- 経営者や管理職は大いに語ろう
2 苦手そうな社員には課題を出してみる
“モヤモヤ”ミーティングは自由な意見を出せるのがいいところです。ただ、日ごろ、あまり問題意識を持っていない社員は苦手に感じます。そうした社員には、まず、取り組みやすそうな課題を出して考えさせることから始めてみましょう。
課題の例としては、「今、一番不便だと思っていることは何か。それを解消するにはどうすればよいか」「今までの人生で一番熱中したことは何か。それを他の人にどのように勧めるか」「好きに時間を使っていいと言われたら一日何をしたいか」などが挙げられます。具体的に既存商品やサービスについて、「『もっとこうしたほうがいい』と思っていることは何か」を課題にしてもいいかもしれません。
3 ブレーンストーミングで場を活性化する
“モヤモヤ”ミーティングでは、参加している社員に、活発に意見を出してもらうことが大切です。「批判をしない」「自由奔放に考える」「質より量を重視する」「便乗する」といった約束事のあるブレーンストーミング(ブレスト)で進めるのがよいでしょう。
ブレストに慣れていない社員は、つい、他の人のアイデアを批判しがちです。こうした社員には、「『でも、しかし』ではなく『そして、それから』」を徹底し、他の人のアイデアに「便乗する」ことで、アイデアをさらに膨らませるよう指導しましょう。
ビジネスのアイデアを出し合う前に、「動画で商品をPRする新しい企画とは?」「誰もが楽しい社員旅行の企画とは?」といった身近なテーマでブレストを行い、アイデアを出し合う訓練をしてみるのもいいでしょう。
ブレストの良いところは、1つのアイデアに皆が便乗し、さらに膨らませるため、一体感が生まれることです。最初にそのアイデアを言い出したのは誰かということは重要ではなくなり、参加者全員で力を合わせて1つのアイデアを考えることができます。
4 シックス・ハット法で掘り下げる
ブレストで膨らんだアイデアを深掘りするために、「シックス・ハット法」を使います。これは、視点の違う6色の帽子(他のアイテムでもよい)のうち、全員が同じ1色を身に着け、その色の視点に立って考えていくという方法です。オンラインの場合は、6色の背景画像を用意し、全員が同じ1色を背景色にするなど工夫してみましょう。
シックス・ハット法で用いられる6色は、「青=冷静・管理的、黄=楽観・積極的、黒=警戒・否定的、緑=創造・革新的、白=中立・客観的、赤=情熱・感情的」となります。全員で同じ色を身に着けるので、思考をそろえて議論を深めることができます。
例えば「白」にしたときは、データや数字といった客観的な情報・事実だけを話します。このとき、自分の意見は言いません。一方、「赤」の場合は、「可能性を感じる」「面白い」など自分の感想や気持ちを話します。
色の順番は決まっていませんが、他の色を統制し、分析したり管理したりする要素を持つ「青」で始めて進め方やゴールを決め、全ての色が終わった後、再度「青」にして、結論や次回への課題を確認して終わることが多いともいわれています。
慣れないと「今の色」と違う視点で意見を言う社員が出てくるので、ファシリテーターが「その発言は黒い帽子ですね。今は白ですよ」と軌道修正します。状況によっては「議論が停滞してきたので、緑の帽子で解決策を出しましょう!」と全員の視点を切り替えることもあります。
シックス・ハット法の良いところの1つは、視点を切り替えて考えられることです。さまざまな視点から捉えることで、“モヤモヤ”していたアイデアのメリットや課題、さらに進化した姿などが分かるため、形が見えるようになってきます。
5 明るく楽しくテンポ良く
ブレストでもシックス・ハット法でも、“モヤモヤ”ミーティングは、社員が楽しみながらテンポ良く進めることが大切です。シーンと静かになってばかりだったり、特定の社員が長々と発言したりしないよう、「発言は1分間」などのルールを決めましょう。特に1人しか発言できない(みんなでワイワイしにくい)オンラインの場合、ファシリテーターが重要です。参加者が満遍なく発言できるように回しましょう。
また、「立場にこだわらずフラットに発言する」というルールにしたとしても、社員は経営者や管理職の発言に影響を受けたり遠慮したりしがちです。社員が慣れるまでは、経営者や管理職はなるべく社員の後に発言するように心掛けるとよいでしょう。
社員がリラックスした気持ちで自由に意見を言えるよう、会社の外に出るのも一策です。オープンカフェや公園など屋外で行えば、いつもと違った雰囲気の中で、社員の視野が広がるかもしれません。
6 経営者や管理職は大いに語ろう
社員が“モヤモヤ”と思い、その“モヤモヤ”をアイデアとして議論し合えるようになるには、社員に会社や仕事を好きになってもらうこと、会社の今後を自分事のように考えてもらうことが必要かもしれません。
それには、経営者や管理職の日ごろの働き掛けがとても重要です。経営者や管理職は、思い描いている夢や「あるべき理想の姿」、どれだけ会社と社員(部下)を誇りに思っているか、たとえ足元の仕事が大変でもその先にどれだけ大きな喜びがあるか、などを大いに語りましょう。経営者や管理職は、未来をつくるのは“モヤモヤ”思ってくれる社員たちであることを忘れてはなりません。
7 社員に、「アイデア脳」になってもらうために
最後に補足として、「社員に、アイデアを出しやすい思考になってもらう」方法をお伝えします。“モヤモヤ”ミーティングの開催と並行して、日ごろから次のことを実践してみるとよいでしょう。
- 社員にセミナーや勉強会、スタートアップピッチ、アイデアソンなどに参加してもらい、社外の人と積極的に交流する機会をつくる。
- 経営者や管理職が「○○について人と話をしたが、うちの会社でもこう活かせる」と話して、「身の回りの全ての出来事がアイデアにつながる」と社員に意識させる。
以上(2024年12月更新)
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画像:pixabay