書いてあること

  • 主な読者:出張や会食など、社長と一緒に行動することになった社員
  • 課題:ガチガチに緊張するし、どうすれば失敗しないか不安。せっかくの一緒の機会にうまくコミュニケーションも取れない
  • 解決策:とにかく準備をしっかりと。社長を大切なお客様と思って「相手のことを考える」ことを忘れずに。そして、社長の一言、一挙手一投足から学びましょう

1 社長と一緒に行動。そのときあなたはどうする?

社長と一緒に行動するのは、とても緊張するものです。忙しい社長に迷惑をかけたくない。失敗のないようにしたい。そんな気持ちが働くかもしれません。しかし、考えてみてください。普段と違って社長から直接学ぶチャンスでもあるのです。

本稿では、社長と一緒に行動するときに気をつけたいことに加え、どのようなことが学べるかもまとめてみました。現在は新型コロナウイルス感染症の影響で、社長と一緒に行動できる機会はないかもしれませんが、いつか来るその日のために、参考になれば幸いです。

2 「移動」はとにかく時間が大事

1)移動ルートを確認する

社長と一緒に移動するときは、電車などの公共交通機関やタクシーを使いますが、いずれの場合も目的地までの移動ルートと、それぞれの所要時間は確実に頭に入れておきましょう。

社長は移動中も仕事をするなど、時間を無駄にしません。また、時間の長さによってやることを決めるので、所要時間は特に大切です。事前に移動ルートと所要時間を伝えるのはもちろん、移動直前にも「今から〇分間乗車します」と伝えましょう。

タクシーを使うときには、早くタクシーをつかまえて、待ち時間を短くします。事前に手配しておくのが望ましいのですが、難しい場合は、タクシー乗り場など早くタクシーをつかまえられる場所を把握しておきます。

2)できるだけ下見する

可能な範囲で、事前に同じ移動ルートを下見・体験しておきましょう。駅の構造やタクシー乗り場の場所などを確認します。遠方であっても、「Google ストリートビュー」で道順を確認できます。

また、健康のために歩くことを好む社長もいます。当日、歩いて移動できる時間の余裕があれば、その旨を社長に伝えてもよいでしょう。もちろん、社長が徒歩を選択した場合に備えて、事前に徒歩ルートも確認しておきます。

3)新幹線の席はどこが良い?

新幹線で移動する場合、社長の席は、人の出入りが少なく、駅に到着したらすぐに降りやすい位置が望ましいでしょう。例えば、お手洗いに近い車両の、前から3列目くらいの窓側などが良いかもしれません。

また、新幹線は、上りと下りの列車がすれ違うとき、車両が大きく振動し、騒音が発生することがあります。それを避けるため、対向列車とすれ違う側とは反対側の窓際の席を取るなど、そこまで気を使うこともあるようです。

ただし、「パソコンを使うため、コンセントがある席が良い」「ゆったりした席で集中して仕事がしたいのでグリーン車が良い」といったように、社長によって好みの席があることがあります。こうした点は、上司や秘書などに事前に確認しておきましょう。

3 「食事」は心地よい雰囲気が大事

1)食事のときも重要なのは時間

社員がホストになり、少し改まった場(店)で社長と会食するときを想定して考えてみます。まずは社長の好みを確認することが大切です。好き嫌いや、「肉か魚か」「和食か洋食か」といった希望や、アレルギーも必ず確認します。

また、会食前後の予定も確認し、その上で、来店のしやすさ、次の予定先への移動のしやすさなども考慮して店を選びます。次の予定がある場合は、「次の予定に間に合うには、店を何時に出ればよいか」ということも確認しておきます。

社長に次の予定がある場合、当日は、店を出る時間を忘れないようにしておかなければなりません。時間が迫ってきたら「あと10分で時間です」などと、社長に伝えるようにしましょう。

2)店側とタッグを組むことも必要

店を選ぶときは、「実際に行ったら、全然違った」ということもあるので、必ず自分で下見をしてから決めましょう。料理の味を確認するのはもちろん、店の雰囲気、利用できる席(個室かどうかなど)、接客のレベルなどもチェックします。

店を決めたら、事前に店側に事情を話し、社長と食事をする当日に協力してもらえるようにしておくことも必要です。その場合、「気持ちのよい接客をしてくれた」「サービスが行き届いている」と思える店員に事情を話しておくことがポイントです。

その店員には、社長が店に入る時間と出る時間、社長の好みの他、会食の趣旨や大まかな流れを伝えておきましょう。例えば、「お祝いの席なので、乾杯前に社長が5分くらい話をする。話が終わる頃を見計らって料理を運んでほしい」といった具合です。

3)複数人で会食する場合はどこに座る?

食事をするときは、座る場所にも気を配りましょう。上座・下座の他、眺めが一番良い席、空調が一番心地よい席はどこなのか。あるいは、店員を呼んで話をしやすい席(ホストの自分が座る席)はどこがよいかを事前に確認しておくことが大切です。

社長も交えて複数人での会食であれば、一番出入りしやすい末席で、すぐに動けるようにしておきましょう。そうした席だと、店員と話をしやすく、注文などで大きな声を出さずに済むので、場の雰囲気を壊すこともありません。

なお、ホストとはいえ、段取りばかりに気を取られてはいけません。出席者の顔ぶれや会食の趣旨などにもよりますが、社長との会話を楽しんだり、社長の話を聞いたりして、社長と一緒の時間を楽しむようにしましょう。

4 「会話」は話して聞くのが大事

1)“現場感”のある話

社長は、社員のことをもっと知りたいと思っています。特に日ごろなかなか接する機会のない社員と一緒に行動できるときにこそ、いろいろな話をしたいと考えているものです。

そこで、社長と一緒に行動するときは、できるだけ現場感のある話を心掛けてみましょう。この機会に、日ごろ温めている企画があれば、「こんなことがしたいです!」と社長に直接ぶつけてみるのも一策です。

良い話ばかりでなくてもかまいません。例えば、今、職場で困っていることを話したり、思い切って、自分自身の仕事上の悩みを話したりしてみるのもよいでしょう。社長は、真剣に相談に乗ってくれるはずです。

2)パーソナルな引き出しを準備

社長が知りたいのは仕事の話だけではありません。社員はどのような趣味を持っているか、家族とはうまくいっているか、心身の健康状態は問題ないか。社長は、できるだけ社員のことを知りたいものです。

そこで、趣味や家族、出身地、学生時代の部活、最近読んだ本など、少し仕事から離れた話題で、自分のことを話せる引き出しを準備しておくとよいでしょう。格好つけて話をつくる必要はありません。ありのままの自分を話すことが大切です。

ただし、社長も交えて複数人で会食しているときは、自分ばかりでなく他の人にも話を振ることを忘れてはなりません。「△△さんはこの間、大きな魚を釣ったと言っていましたよね」など、他の人の趣味に関する話題を振るのもよいでしょう。

3)やっぱり聞きたい社長の話

自分が話すばかりではなく、社長に、少し仕事から離れた話を聞いてみるのも勉強になります。事前に、社長の趣味や愛読書、好きな偉人(歴史上の人物)などを調べておき、そのことを質問していろいろと教えてもらってもよいでしょう。

社長は、さまざまなことを知っていて、人生経験も豊富です。また、自分なりの哲学を持っていたり、何事にも“一家言”持っていたりするものです。こうした社長の話は普段はなかなか聞けない宝物です。

社長の話を聞くと「勉強になった」と感謝することがたくさんあるはずです。後日、「先日聞いた話にとても感動したので実践してみました(あるいは、もっと深く勉強してみました)」ということを社長に伝えれば、感謝の気持ちがきっと伝わります。

5 社長と一緒に行動して学べること

1)社長の行動は“教科書”

社長と一緒に行動することは、社員にとって大きな“学び”のチャンスです。社内の誰よりも働き、多くの経験を積んできた社長の一挙手一投足はまさに、ビジネスパーソンとしての“教科書”です。

仕事のことだけではありません。多くの社長は、恐らくどのような場所に行ってもそこになじんで見えるでしょう。どの場の空気にも溶け込み、気張らず自然な立ち居振る舞いをするのは、簡単に見えて、とても難しいことなのです。

日ごろ社長と一緒に行動する機会の少ない若手社員や中堅社員は、社長と一緒に行動することで、普段の仕事では得られない気付きを得られるはずです。例えば、次の3つの点は、社長と一緒に行動した経験のある人の多くが実感できるものです。

2)社長の時間の使い方

社長と一緒に行動すると、その時間の使い方に驚くはずです。社長は移動中も時間を無駄にしません。資料を読む、メールを送る、顧客に連絡を入れる……。そうした姿から、隙間時間の使い方を学ぶことができるでしょう。

社長が時間を無駄にしないのは仕事が忙しいからというだけではありません。時間をやりくりして本を読み、勉強会に出かけ、そして社員を育てています。つまり、会社の未来に投資する時間をつくるため、社長は少しの時間も無駄にできないのです。

3)社長のお金の使い方

社長は、「お金を使うべきところには使い、使う必要のないところには使わない」ということを徹底しています。例えば、大切に思う社員のためになることであれば、お金を使うことを惜しみません。

こんな話があります。社員旅行に行ったある会社では社員が大いに飲んだため、予算オーバーしそうになりました。それを見た社長が一言。「会社で全部持つから好きなだけ飲んでください。これは社員のための旅行です」。その社長の、社員への感謝の気持ちだったのでしょう。

4)社長の社員を思う気持ち

もしかすると、最初に社長と一緒に行動したときに、一番驚くのは、社長の社員を思う強い気持ちかもしれません。一緒に行動していると、その言動の端々に社員に対する思いや愛情を感じることができるでしょう。

社長は社員の想像以上に社員のことを思っています。社長の時間の使い方もお金の使い方も、社員に感謝し、社員の未来を思っている証しです。一緒に行動した社長の姿からそのことが少しでも社員に伝わってほしい。それが、社長の本音なのかもしれません。

以上(2020年7月)

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画像:unsplash

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