書いてあること

  • 主な読者:マネジメントに関して、上司と部下との板挟み状態で悩んでいる管理職
  • 課題:自分と同じ悩みは、他の管理職の人にも共通する悩みなのか、解決策はあるのか
  • 解決策:管理職の経験者へのアンケート結果から、どのように対応したのか参考にする

1 管理職としてのその悩み、あなただけではありません!

上司も部下も言いたいことを言うだけで、一番つらいのは管理職である自分だ!

マネジメントで悩んでいる管理職の皆さん。その悩みは、あなただけのものではないかもしれません。もし次の3つのうち、1つでも経験のある方は、ぜひこの記事をご覧ください。

  • 部下が自分を飛び越えて自分の上司と連絡を取り合っていた
  • 上司からの指示が急に変わり、部下への説明に困った
  • 部下同士の仲が悪くて必要な連携さえ取れていないと感じた

この記事では、198人の管理職経験者に、上記の3つの経験があるかどうかをアンケートしました。経験が「ある」と答えた人には、そのときにどのように対応したかも聞いていますので、皆さんがマネジメントの能力をもう一段高めるための参考にしてください。

なお、アンケートは2023年2月に、インターネットを通じて行いました。

2 部下が自分を飛び越えて自分の上司と連絡を取り合っていた

1)53.0%が経験あり

部下が自分を飛び越えて自分の上司と連絡を取り合っていたという経験がありますか?

部下が自分を飛び越えて自分の上司と連絡を取り合っていたという経験が「ある」と答えたのは、管理職経験者198人のうち105人、「ない」と答えたのは76人でした。

2)連絡の内容と理由は確認しておきたい

部下が自分を飛び越えて自分の上司と連絡を取り合っていたときの対応

部下が自分を飛び越えて自分の上司と連絡を取り合っていたときの対応(93人が回答)として最も多かったのは、「特に何もしなかった」の29人でした。理由は定かではありませんが、これとは別に「黙認、知らんぷり、無視、諦めた」(17人)、「気にしなかった、問題視しなかった」(4人)、「自己反省した」(2人)といった回答がヒントになるでしょう。

前後の状況を踏まえて問題視しなかった人もいるようで、

  • たまたま自分が在席しておらず、大した内容ではなかったので黙認した(40代男性)
  • 上司も後から私に報告してくれた(60代男性)

といった回答もありました。部下を預かる者として、部下が取り合っていた連絡の内容と、その理由は確認しておいたほうがよいかもしれません。

  • 後で部下に確認して、内容が正しいのかどうか判断した(40代男性)
  • どういった事情でそうなったかの説明を求めた(50代男性)

といった対応が無難といえそうです。波風を立てずに連絡の内容を確認するために、

  • 「上司に話してくれたんだ?」と、伝聞風に尋ねた(60代男性)

という対応も参考になるでしょう。また、その一件を機に自分のマネジメント手法を改め、

  • 「1on1などでコミュニケーション量を増やすようにした」(30代女性)

といった回答もありました。

3)再発防止のために部下に注意や指導をした人も

穏便な形での解決を図った人が多いものの、再発防止を徹底するために、17人が「(部下に)注意した、指導した」と回答しました。

  • 厳しく指導した(50代男性)、内容にもよるが基本的には部下を叱った(50代男性)
  • 内容を確認し、情報は共有するように指示した(60代男性)
  • 部下に報告の必要性と責任の所在を説明した(40代男性)
  • 上司に連絡してからで構わないので、連絡した旨話してほしいと伝えた(60代男性)
  • 「後で困ったからといって、助けを求めて来ても知らないよ」と注意した(60代男性)

といった回答もありました。

実行するのは難しいかもしれませんが、本来は「上司に抗議した」(4人)という対応が理想的かもしれません。

  • 上司に、組織を重んじるように直接抗議した(70代男性)
  • 連絡を取っていた上司の口から、部下の行為を諌めてもらった(60代男性)

といった回答もありました。

3 上司からの指示が急に変わり、部下への説明に困った

1)57.6%が経験あり

上司からの指示が急に変わり、部下への説明に困った経験はありますか?

上司からの指示が急に変わり、部下への説明に困ったという経験が「ある」と答えたのは、管理職経験者198人のうち114人、「ない」と答えたのは77人でした。

2)あえて“組織の歯車”に徹するのも一策

上司からの指示が急に変わり、部下への説明に困ったときの対応

上司からの指示が急に変わり、部下への説明に困ったときの対応(100人が回答)としては、約3分の1の人が「上司の指示をそのまま伝えた」(33人)と回答しました。「会社の方針だと割り切って説明した」(15人)と合わせると、「その他」(23人)を除いた回答者の6割以上を占めています。「上司の指示をそのまま伝えた」と答えた人の中には、

  • (上司の)方針が変わったと粛々と説明した(50代男性)、真実を話すのみ(50代男性)
  • 上からの指示だからと、そのまま伝えた(50代男性)

といった回答もありました。自分が上司と部下との板挟みになって苦労しそうな場合、あえて“組織の歯車”に徹することも一策かもしれません。

「会社の方針だと割り切って説明した」と答えた人は、部下にも“組織の歯車”に徹するようにアドバイスしたといえるかもしれません。

  • 会社の方向性は常に変わるものだと言った(40代男性)
  • いろいろ考えはあると思うが、指示の急な変更はあり得ることだと説明した(60代男性)

といった回答もありました。

3)部下の気持ちに配慮しながら説明する

これに対し、部下の気持ちに配慮しながら説明した人も少なくありません。部下がまず感じる「なぜ?」に答えるように、

  • なぜその方針変更があったのか、理由を自分の中で腹落ちさせ、納得いく説明ができるように準備した。納得できない状態では伝えなかった(30代女性)
  • 原因を丁寧に説明し、理解を得るまできちんとコミュニケートした(60代男性)
  • 部下のモチベーションが落ちないように、できるだけその背景や理由を添えて説明した(70代男性)
  • 自分なりの理由をつけて説明をし、納得してもらえるように努めた(40代男性)
  • 聞いたまま事実を伝え、自分なりに考え理解したその理由も伝え、理解を図った。自分なりに持っている疑問点も伝えた(70代男性)

といった回答もありました。

また、上司の指示だけでなく、それに対する自分の考えも織り交ぜて伝えることで、部下の理解を得ようとした人もいました。

  • 会社の方向性に対しての私自身の考えを示し、その思いを共有してもらった(40代男性)
  • 上司の指示には逆らえないが、言わなくてはいけないことは私が言うから、何かあったら言ってと伝えた(60代男性)
  • 私たちの考えは十分に伝えたが、上司の判断が変わったので、そのように対応したいと説明した(60代男性)
  • 納得いかない点もあるだろうが、方針として従ってもらいたいと懇切丁寧に説明した(50代男性)、部下に詫びを言いながら伝えた(60代男性)

といった回答もありました。中には、やや上司を非難するような口調も織り交ぜることで、部下の理解を得ようとした人もいるようです。

  • 朝令暮改かもしれないが、臨機に方向修正した(結果だ)と言って説明した(60代男性)
  • 会社の方針であることと上司の愚痴を織り交ぜて説明した(50代男性)
  • (上司に)朝令暮改の癖がある旨説明し、(部下に)納得させた(70代男性)
  • 愚痴りながら説明した(30代女性)

といった回答もありました。

4 部下同士の仲が悪くて必要な連携さえ取れていないと感じた

1)52.5%が経験あり

部下同士の仲が悪くて必要な連携さえ取れていないと感じたことがありますか?

部下同士の仲が悪くて必要な連携さえ取れていないと感じたことが「ある」と答えたのは、管理職経験者198人のうち104人、「ない」と答えたのは85人でした。

2)まずは話し合いで解決を図り、ダメなら異動?

部下同士の仲が悪くて必要な連携さえ取れていないと感じたときの対応

部下同士の仲が悪くて必要な連携され取れていないと感じたときの対応(92人が回答)として、最も多かったのは「個別に話をした」の25人でした。「(3人で)話し合った」の10人、「2人で話し合いをさせた」の3人を加えると、「その他」(13人)を除いた回答者の半数近くを占めています。「異動、配置転換させた」と回答した人の中にも、まずは話し合いから始めたという回答がありますので、まずは話し合いから解決を図ることが基本といえるでしょう。

  • 双方の意見を個別に聞き、最後に両者を会わせて穏便に解決した(50代男性)
  • 個別に聞き取りをして、お互いの考えを聞いた。その上で相容れないものは何か、容認できるものは何か整理して、個々に伝えた(60代男性)
  • 個別ではなく、何が原因なのかお互いの話し合いを取り持った(60代男性)
  • 2人を同時に呼んで事情を説明させた(60代男性)
  • 部下たちと飲みに行った(60代男性)
  • 業務に支障が出るので、勤務中だけでも連携して仕事をするよう、それぞれ指導した(50代男性)
  • しばらく間に入り連携するようにし、徐々に関係を取り戻すようにした(50代男性)

といった回答もありました。

とはいえ、話し合いだけでは解決に至らず、やむなく異動や配置転換という形で決着を図った人もいたようです。

  • 個別に話し合い、修復の可能性がないと判断された場合、配置換えもしくは転勤命令を出した(70代男性)
  • 個別に話し合い、互いの言い分を聞いた上で、必要があれば部署を異動してもらった(40代男性)
  • 個別に話しつつ、可能な範囲で実務に影響がないよう配置換えを検討した(30代女性)

といった回答もありました。

3)若い世代の管理職は、関係修復への関与を避ける傾向も

回答で特徴的だったのは、若い管理職ほど、自らは2人の関係修復になるべく関わらない形で解決を図る傾向が見られたことです。世代によってマネジメント手法に違いが出てきている可能性もありそうです。

  • (2人に)挨拶をさせた(40代男性)
  • 間に入って業務を進めた(40代男性)
  • 部下同士が関わらないようにした(40代男性)
  • 上司に相談し解決してもらった(40代男性)
  • その人の特性と強み・弱みを分析して、得意とする業務に当てはめて対応した。お互いに力が発揮できる業務を探るということ(40代男性)
  • 他の職員に仲裁してもらった(40代男性)

といった回答もありました。

この他に、

  • 優秀な部下の味方をした(50代男性)
  • 自分では何もできなかったが、有能な部下がこまめに動いて調整してくれた(60代男性)
  • 子どもじゃないから放置した(50代男性)

といった回答もありました。

以上(2023年3月)

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画像:ニワトコ-Adobe Stock

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