1 「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数
都道府県労働局などの総合労働相談コーナーに寄せられる民事上の個別労働紛争の相談内容の中で、「いじめ・嫌がらせ」は9年連続で最多となりました。
大企業は、令和2年6月にハラスメント防止措置が法律上義務化されていることから、「いじめ・嫌がらせ」ではなく「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として別に計上されおり、過去の相談件数と単純比較はできないものの、件数は高止まりの様相を呈しています。また、相談全体に対する割合もおおむね4分の1を占める状況が続いており、職場におけるハラスメントの防止対策は各企業において喫緊の課題と言えそうです。
2 自主点検の実施
来年4月から中小企業にもパワーハラスメントの防止措置が義務化されることを受けて、東京労働局では、現時点における取り組み状況を確認するための「自主点検票」を作成し、一部の中小企業に対し点検を要請しました。その点検票には、以下の講ずべき措置を10個の項目に区分して記載しています。
「自主点検票」は、東京労働局のホームページ上でダウンロードが可能となっています。また、取り組みが未了の事項については、参考となる「自主点検解説動画」や資料なども合わせて公開されていますので、準備を始める企業は活用してみてはいかがでしょうか。
東京労働局「パワハラ防止対策(改正労推法)自主点検」ぺージ
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/kyoku_oshirase/_120743/jisyutennkenn.html
3 おわりに
パワーハラスメントの問題に関しては、過日、国内自動車メーカーの男性が自殺した事件で、高裁において、パワーハラスメントや過重労働が自殺の原因として、労災を認める判決を下したことがニュースになりました。同判決では、労災認定の基準として新設された「パワーハラスメント」の項目で審理され、名古屋高裁はその新基準に沿って労災と認定しました。これから何ら対策を講じない「パワーハラスメントの放置」は企業の責任問題にも発展することになります。経営上の重要課題として、職場のハラスメントの撲滅に取り組みましょう。
※本内容は2021年10月14日時点での内容です
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
sj09015
画像:photo-ac