1 押さえるべきは「在留資格」
日本で働く外国人の数は2016年に100万人を超え、2023年には初めて200万人を超えました(厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況」)。外国人雇用を検討する会社は今後ますます増えるでしょうが、注意が必要なのが「在留資格」です。
在留資格とは、
外国人の住所地を管轄する地方出入国在留管理局(出入国在留管理庁の地方支分部局、以下「入管」)に申請すると取得できる資格で、日本で行える活動と在留期間を示したもの
です。在留資格ごとに就労できる職種や在留期間が違うので、これを正しく押さえておかないと不法就労などのトラブルになりかねません。大切なのは、
- 職種の制限:制限があるかないか
- 在留期間の期限:制限があるかないか(一部は無期限)
- 労働時間の上限:日本人と同じか否か
を確認することです。
まずは、日本で就労する外国人の区分を見てみましょう。
ざっくりとまとめると、多くの外国人は、
- 職種の制限:あり
- 在留期間の期限:あり
- 労働時間の上限:日本人と同じ
となります。ただし、就労できる職種や在留期間の細かいルールは在留資格ごとに異なります。以降で、図表1の区分ごとに、在留資格の概要を紹介するので、確認していきましょう。
2 身分に基づき在留する者
活動内容に関係なく日本に滞在する外国人が該当します。
就労に関する特徴は次の通りです。
- 職種の制限:なし。単純労働なども可
- 在留期間の期限:永住者は無期限。その他の者は期限あり
- 労働時間の上限:日本人と同じ
どの在留資格も職種の制限がなく、労働時間の上限も日本人と同じなので、在留期間にさえ注意しておけば問題ありません。永住者の場合は在留期間も無期限なので、基本的に日本人と同じように雇用できます。
3 就労目的で在留が認められる者
特定の知識・スキルを活かした職業に就く外国人が該当します。
就労に関する特徴は次の通りです。
- 職種の制限:それぞれの在留資格で認められた範囲内でしか活動できない
- 在留期間の期限:高度専門職2号は無期限。それ以外の者は期限あり
- 労働時間の上限:日本人と同じ
基本的にどの在留資格も在留期間に期限がありますが、例外は高度専門職2号です。高度専門職とは、高度な知識・スキルによって日本経済に貢献することなどを期待され、ポイント制による一定の評価を受けた外国人のための在留資格で、研究者やプロ経営者が該当します。
- 最初は高度専門職1号(在留期間の上限は5年)からスタート
- 高度専門職1号として3年以上の活動など一定の要件を踏まえ、ポイント制による評価を満たすことで高度専門職2号になり、在留期間が無期限になる
という仕組みになっています。
4 技能実習
技能実習制度の技能実習生が該当します。技能実習制度とは、技能実習生が日本で実習を行う会社(実習実施者)の下で働き、母国では得がたい技能の修得などを図るための制度です。
就労に関する特徴は次の通りです。
- 職種の制限:技能実習2号、3号に移行が可能な職種・作業は省令で定められている
- 在留期間の期限:あり
- 労働時間の上限:日本人と同じ
技能実習制度は、まず技能実習1号からスタートし、所定の試験を受けることで2号、3号へと移行していくシステムです。ただし、2号、3号に移行が可能な「職種」と各職種にひもづく「作業」が、省令で細かく定められています。例えば、
「耕種農業」という職種には、「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」という作業がひもづくといった具合に、2024年9月30日時点で91の職種と167の作業(下記URL参照)
が定められています。1号には職種・作業の制限はありませんが、技能の修得などに関係ない業務(単純労働など)に従事させることはできません。
■厚生労働省「技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験試験基準」■
なお、技能実習制度については、技能の習得という本来の制度趣旨に反して、「会社が技能実習生に、技能の習得に関係ない単純労働をさせる」などの問題が頻発していることに加え、日本の労働環境においても、団塊世代の大量離職などによる将来的な人材不足が深刻さを増している状況を鑑み、
2024年6月21日から3年以内に技能実習制度に代わり、新たに「育成就労制度」が開始
されることになりました(具体的な施行日については、現時点では未定)。
育成就労制度は、「育成就労」という在留資格を設け、外国人を原則3年間で一定以上の技能を持つ「特定技能」に育成する制度です。技能実習制度と似ていますが、
- 技能実習制度は、外国人が日本で習得した技能を、将来母国に持ち帰ることを想定した「国際協力」のための制度(特定技能への移行も可能だが、制度上は「帰国」が原則)
- 育成就労制度は、外国人が技能の習得後も、日本企業の戦力として活躍することを想定した「人材確保」のための制度(帰国せず、日本に「在留」することが原則)
であり、目的が異なります。また、その他にも「技能実習制度とは、対象としている産業分野・職種が違う」「就労開始前の日本語教育が必須」といった特徴があります。
育成就労について詳しく知りたい場合、次のコンテンツも併せてご確認ください。
5 資格外活動
就労するための在留資格を持っていないものの、法務大臣から資格外活動(在留資格の範囲外の活動)の許可を与えられた外国人が該当します。
就労に関する特徴は次の通りです。
- 職種の制限:本来の在留資格に属する活動を阻害しない範囲であれば、基本的になし。ただし、風俗営業等への就労は不可
- 在留期間の期限:あり
- 労働時間の上限:日本人より短い(原則1週28時間まで)
労働時間については、日本人の場合、原則1日8時間、1週40時間が上限ですが、資格外活動を行う外国人の場合、原則1週28時間までとされています。
1日当たりの上限は特に定められていませんが、どの曜日から起算しても1週28時間以内になるようにしなければならない
ので、注意が必要です。ただし、
例外として、在留資格の本来の活動に影響がない期間に限り、労働時間の上限が1日8時間、1週40時間まで延長
されます。留学生のアルバイトを例にして考えるならば、勉強の妨げになりにくい大学の夏休み期間などがそれに該当します。
6 特定活動
特定活動(法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動)を行う外国人が該当します。
就労に関する特徴は次の通りです。
- 職種の制限:在留資格に該当しない活動を行う場合、法務大臣から個々の指定を受ける必要がある。なお、ワーキング・ホリデーの場合は、風俗営業等以外であれば制限なし
- 在留期間の期限:あり
- 労働時間の上限:日本人と同じ
特定活動の場合、外国人のパスポートに添付される「指定書」という書類に、「活動類型」(ワーキング・ホリデー、EPAなど)が記載されており、その内容に応じて就労できる職種が変わってきます。
以上(2025年1月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)
pj00297
画像:pexels