書いてあること

  • 主な読者:相性の悪い部下がいて、うまくコミュニケーションが取れない上司
  • 課題:仕事なのは分かっているが、「好き嫌い」の問題を突破できない
  • 解決策:自分のやり方にはまらないから「嫌い」という考え方は改める。部下と協力して新しい方法を模索する姿勢を示す

1 上司の「枠」は絶対的な評価基準ではない!

「仕事ができない」と思っていた部下が転職先で活躍している……。割とよくある話ですが、実際に転職先で活躍している人に話を聞いてみると、転職先の雰囲気や仕事内容もそうですが、

転職先の上司との相性が良かったことが大きい

ようです。上司との相性がビジネスパーソンの成長と活躍に大きな影響を及ぼすことに疑いの余地はありませんが、問題は「なぜ、自社ではダメで転職先ではうまくいったのか」です。

相性の問題は「好き嫌い」の問題でもあります。もう少し分解して、

  • 人としての好き嫌い
  • 仕事の進め方の好き嫌い

に整理してみます。人間ですから「人としての好き嫌い」はどうにもならない部分もありますが、文字通り多様性が当たり前になりつつある今、上司にはさまざまな部下を受け入れる器の大きさが求められています。

もう一方の「仕事の進め方の好き嫌い」は、上司の「やり方」にはまるか否かに言い換えられます。かつては、上司のやり方が優れていて、部下のゴールは「上司と同じやり方で仕事を進められるようになること」でした。しかし、今の時代は違い、異質なものを束ねる能力が上司に求められます。にもかかわらず、上司が自分のやり方にはまらない部下を低く評価しているとしたら、その部下が転職先で活躍するのは当然のことです。なぜなら、その部下は、

一般的に能力が足りないわけではなく、上司のやり方と合わなかっただけ

だからです。

上司は、部下への指導の在り方をいま一度、見直す時期に来ています。ここでは、部下をフラットに評価する際に役立つ2つの視点を紹介するので参考にしてください。

2 虫の目・鳥の目・魚の目をバランス良く

ビジネスを進める上で重要な視点を、次のように「虫の目」「鳥の目」「魚の目」に例えることがあります。

  • 虫の目:目の前にある業務を、複眼的に注意深く確認する視点
  • 鳥の目:上から見下ろすように、全体像を俯瞰(ふかん)する視点
  • 魚の目:川や海を泳ぐように、将来のビジネスの方向を予想する視点

自分のやり方にこだわる上司は、何かにつけて「虫の目」の指示を出すことが多いです。しかし、ビジネスにはさまざまな手順があり、上司のやり方だけが正しいわけではありません。例えば、ITを使った業務では、部下のほうが詳しいといったケースもあります。経験に勝る上司と、新しい発想を持つ部下が意見を出し合って、より良い方法を模索する姿勢が求められます。

ただし、これは部下に迎合するということではありません。部下の考え方が正しくないと感じたら、そこはしっかりと指導しましょう。

3 部下の状況把握シートを活用する

部下は日々成長しており、担当する業務の難易度や処理スピードも変わります。上司が部下の状況を把握して、それに応じた指示を伝えれば、部下のレベルアップを図ることができるでしょう。部下の状況を客観的に把握するために役立つのが次の「部下の状況把握シート」です。

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1)横軸は部下の行動レベル

「部下の状況把握シート」の横軸は、部下の行動レベルを示しています。例えば、ある業務内容に対する部下のレベルを「知っている」から「理解している」に引き上げるには、視点の大小や高低、業務の流れを意識した知識をインプットさせます。

また、レベルを「理解している」から「実践している」に引き上げるには、アウトプットの機会をたくさん与えます。例えば、営業担当であれば、顧客訪問に同行させるなどします。

レベルを「実践している」から「応用している」に引き上げるには、上司と部下が成功体験と失敗体験について話し合い、良かった点、悪かった点を整理した上で、次のアウトプットにつなげるようにします。

2)縦軸は部下の状態

「部下の状況把握シート」の縦軸は、部下の状態を示しています。

例えば、部下の行動レベル(横軸)を、「知っている」から「理解している」に引き上げる場合で考えてみましょう。当該業務の経験があったり、それが得意であったりする部下は知識の吸収が速く、少し難しい話をしてもついてくるでしょう。ただ、そうでない部下には、通常よりも丁寧に伝えます。

やる気はどうでしょうか。今、その部下にやる気がありそうなら、新しいことを教えるチャンスです。理解しているレベルから、実践しているレベルに部下を引き上げるための指示を出すのもよいです。

部下の性格を客観的に把握することは難しいですが、「緻密である」や「大ざっぱである」といった傾向は分かります。これに応じて指導のしかたを見直し、指示の伝え方やコミュニケーションの密度を変えてみるとよいでしょう。

以上(2024年6月更新)

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画像:pexels

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