書いてあること
- 主な読者:部下に合わせてレベルを落とすことに違和感を覚えている上司
- 課題:「指示を理解できない部下の勉強不足!」というのは本当か?
- 解決策:部下のレベルに合わせ、5W2Hで情報を整理して伝える
1 指示のポイントは上司が部下に合わせること
「何でこんなことも分からないの?」。意図した通りに部下に指示が伝わらず、イライラすることはありませんか? 上司と部下でありがちなこの問題。解決のコツは、
部下が求める内容を、部下が理解できるレベルに合わせて伝えること
にあります。こう言うと、
上司が部下に合わせたらレベルが下がるだけ
と指摘されそうですが、これは勘違いです。上司の皆さんは長い経験を積み、勉強もしてきたわけですから、その時点で部下とはビジネスパーソンとしての実力が大きく違います。実力が離れた上司の指示を受け入れている部下は、よほど優秀なのか、部分的に理解しているのか、分かったふりをしているのかのどれかでしょう。
上司が上司の言葉で伝えても伝わらないのは、ある意味で当たり前のことです。ですから、上司は、部下にとって分かりやすい指示とは何かを考え、実践する必要があるのです。
2 「自分基準」の減点主義をやめる
部下が求める内容を、部下が理解できるレベルに合わせて伝えるために、上司は「自分ならこう考えるのに、何で部下は……」「自分ならこう動くのに、何で部下は……」という、自分基準で部下を減点していくのをやめましょう。その上で部下を認めます。具体的には、
部下は部下なりに上司の指示を解釈し、工夫した結果、上司の指示と異なる進め方になったのかもしれない
というようにです。そして、穏やかに、部下の言動で改善すべきところを伝えていきましょう。
たったこれだけのことで、見違えるほど上司と部下のコミュニケーションが良くなることを実感できると思います。ただ、こうしたコミュニケーションを取るためには、上司にも相応の時間がかかります。改善前は、
自分の考えを示す
という、いわば一方通行のコミュニケーションでしたが、改善後は、
自分の考えを示し、相手の言動を理解し、差分を整理して伝える
ということになるからです。ですから、ある程度、部下の性格や成長に応じて接し方を変えていく必要があるでしょう。
3 伝えるためのテックニック
上司は、部下に5W2Hの報連相を要求しますが、同様に上司も5W2Hで指示を出しましょう。5W2Hとは、次のことを指します。
- When:いつ。◯月◯日◯時まで落とし込む
- Where:どこで。具体的な場所を示す。最近はオンラインもある
- Who:誰が。中小企業の場合、部署よりも担当する「個人」を示す
- What:何を。何に向き合っているのかを明確にする
- Why:なぜ。その取り組みをする理由を明確にする
- How:どうやって。方法論を明確にする
- How much:いくらで。コストを明確にする。社内コストは軽視されがちなので注意
その上で、部下の理解度を確認するために、部下に指示の内容をメモ帳やホワイトボードに書き出し、説明してもらいます。書き出して説明してもらうことで、誤解や、理解が不十分な部分が明らかになります。
また、業務の内容によっては言葉で表現するのが難しかったり、伝わりにくかったりするものがあります。そこで、見本や参考になる資料を用意して、「資料Aに掲載されているデータを最新版に更新してほしい。グラフの体裁は資料Bと同じにしてほしい」などのように、部下とイメージを共有します。
以上(2024年2月更新)
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画像:Nuthawut-Adobe Stock