書いてあること

  • 主な読者:2023年5月以降のコロナ対策について知りたい経営者、労務担当者
  • 課題:就業制限などが緩和されるらしいが、あまり社員に自由に行動されるのも不安
  • 解決策:感染リスクはなくならないので、会社が自宅待機やマスク着用のルールを決める

1 制限が緩和されるからこそ明確なルールが必要

感染症法という法律では、新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)などの感染症を、脅威のレベルなどに応じて8つの感染症類型に分け、類型ごとに感染症をまん延させないためのルールを定めています。

コロナについては、2023年5月8日から感染症類型が「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から「5類」に引き下げられ、就業制限などのルールが次のように緩和されます。

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ただ、感染症類型が引き下げられても、コロナに感染するリスク自体がなくなるわけではないですし、社員としてもいきなり「会社を休むかなどはあなたの自由です。自分で判断してください」と言われても困ってしまいます。そうした意味では、会社が自宅待機やマスク着用のルールを決めてあげたほうが安心です。以降で、5類移行後の労務管理のポイントを紹介します。

なお、この記事で紹介する情報は、2023年4月14日時点の内容に基づいています。

2 社員への自宅待機の命令は有効?

従前は、社員がコロナに感染した場合は原則7日間、濃厚接触者になった場合は原則5日間の自宅待機が必要でしたが、5類移行後はこの自宅待機期間のルールが適用されなくなります(濃厚接触者については、一般に保健所から「濃厚接触者」として特定されることもなくなります)。

とはいえ、労働契約法上、会社には社員の安全を守る「安全配慮義務」があるので、健康保持や感染防止のために社員に自宅待機を命じても、違法にはなりません。

社員が感染者になった場合、自宅でリモートワークができる状況であれば、

  • 感染者(有症状)の場合、原則就業を禁止する(休ませる)
  • 感染者(無症状)の場合、リモートワークで就業させる

を基本として、一定期間自宅待機させるという対応が考えられます。

問題は自宅待機の期間をどのぐらいの長さに設定するかですが、これについては厚生労働省から5類変更後の対応についての情報が随時発表されていますので、参考にするとよいでしょう。厚生労働省「感染症法上の位置づけ変更後の療養について(2023年4月14日)」では、

「発症日を0日目として5日間、かつ症状が軽快してから24時間程度を経過するまで」を外出を控えることが推奨される期間

としていますので、これに倣い「発症後5日間経過し、かつ症状が軽快してから1日経過するまで」を自宅待機期間とするといった具合です。感染者(無症状)の場合は、「症状が軽快してから……」の部分は考慮せず、「検体採取日から5日」を自宅待機期間とするなどします。

3 社員を休ませる場合、欠勤扱い(無給)は適法?

社員がコロナで発熱したり、無症状だけど業務上リモートワークが難しかったりする場合、その社員は休んでもらうことになります。

一般的には就業できない日数分、労働基準法の年次有給休暇や会社独自の有給休暇などを取得するよう促すことになります。注意しなければいけないのが、

有給休暇が取得できない社員(新入社員など)や、有給休暇の取得を望まない社員が出勤を希望する場合

です。会社が社員に対して自宅待機を命じることは可能ですが、労働基準法に、

会社側の事情で社員を休ませる場合、社員に平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならない

というルールがあるからです。

従前は、感染症法により感染者の就業制限が求められていたため、これらに該当する社員を休ませても「会社側の事情」とはみなされなかったのですが、5類移行後のコロナは、こうした措置の対象外になるため、休業手当の支払いが必要になります。

4 社員へのマスク着用の命令は有効?

マスク着用については、2023年3月13日より「屋内・屋外を問わず、着用の判断を原則個人に委ねること」とされています。一方で、

感染対策上や事業上必要な理由等がある場合、会社が社員にマスクの着用を求めることは許される

とされています。

社員にマスクの着用を求める必要があるケースとしては、

  • 不特定多数の人間と接する受付業務など、マスクを着用しないことが顧客や他の社員に不安感を与える恐れがある
  • すでに感染者が出ていて、感染拡大の可能性がある
  • 体調が優れず、咳などの症状が見られる社員がいる
  • 高齢者など感染による重症化リスクの高い人と多く接する業務に従事する

などが考えられます。

逆にマスク着用を求める必要がないケースとしては、

  • 他者と十分な距離を取ることができる状態で仕事をする
  • 他者と十分な距離を取れない状態で仕事をするが、会話はほとんどしない

などが考えられます。

なお、マスク着用を拒む社員に対しては、まずは着用の必要性を理解してもらえるよう丁寧に説明することが望ましいでしょう。仮にマスク着用の命令に従わない社員などがいたとしても、懲戒処分などの対応は慎重に判断する必要があります。

以上(2023年4月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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画像:peopleimages.com-shutterstock

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