2019年に大きな話題となった老後2,000万円問題。これは「公的年金だけでは、老後の生活資金を十分に賄いきれないかもしれない」というものです。この老後2,000万円問題を背景に、福利厚生として企業が「従業員の資産形成をサポートする」ことの重要性が高まっています。
ただ、企業が支援金を拠出する福利厚生はコストと手間がかかります。経営者にとっての理想は、
できるだけコストや手間をかけずに従業員の資産形成をサポートする
ことでしょう。そうした中で注目されるのが、最近話題の「NISA(ニーサ。正式名称は「少額投資非課税制度」)です。国が整えたNISAを利用すれば、コストや手間をかけずに従業員の資産形成をサポートできます。なにより、NISAは2024年1月からパワーアップされ、使い勝手が良くなっています。
この記事では、NISAの概要と、NISAで資産形成を行う従業員のサポート方法を紹介していきます。
1 話題の「NISA」ってなに?
NISAとは、
株式投資などで得た利益が、一定の範囲内で非課税になる(税金がかからなくなる)制度で、正式名称は「少額投資非課税制度」
といいます。
通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかります。例えば、50万円で購入した株を80万円に値上がりしたタイミングで売却した場合、利益30万円(80万円-50万円)に対して約6万円(30万円×約20%)の税金がかかるイメージです。
しかし、専用のNISA口座で投資をすれば利益が非課税になるので、約6万円の税金が発生せずに、利益30万円を全て受け取れます。利益に税金がかからないので効率的に資産形成ができます。これこそが、NISAの最大のメリットです。
2 2024年の制度改正でNISAはどう変わるの?
NISAは2024年1月から制度が改正されます。便宜上、改正前のNISAを「従来NISA」、改正後のNISAを「新NISA」として説明を続けます。
従来NISAは、年間投資可能額や非課税期間、対象年齢などによって「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類に分かれます。新NISAで変わるのは一般NISA、つみたてNISAで、それぞれ「成長投資枠」と「つみたて投資枠」として整備されます。従来NISAと新NISAを比較すると図表のようになります。
(図表)【従来NISAと新NISAの比較】
従来NISA | 新NISA(2024年1月~) | |||
---|---|---|---|---|
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
併用 | できない | 可能 | ||
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 | ||
年間投資可能額 | 120万円 | 40万円 | 240万円 | 120万円 |
非課税保有期間 | 5年間 | 20年間 | 無期限 | |
生涯投資枠 | 600万円 | 800万円 | 1,800万円 (成長投資枠は1,200万円まで) |
|
投資対象商品 | 上場株式、ETF、投資信託、REIT等 | 金融庁が厳選した一定の投資信託 | 上場株式、ETF、投資信託、REIT等 | 金融庁が厳選した一定の投資信託 |
引き出し | いつでも可能 | いつでも可能 |
(出所:金融庁「NISAとは?」などを基に作成)
パッと見ただけで分かりますが、投資可能額が増え、非課税保有期間がのびています。これはNISAを利用する人にとって有利な改正です。では、新NISAのポイントを5つに絞って、もう少し詳しく見ていきましょう。
1)成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能
新NISAのポイント1つ目は、成長投資枠とつみたて投資枠を併用できることです。従来NISAでは、一般NISAとつみたてNISAのいずれかを選択しなければなりませんでしたが、2024年1月からは、
一般NISAは「成長投資枠」に、つみたてNISAは「つみたて投資枠」に名前を変え、これらは併用できる
ようになります。そのため、従来NISAのように、一般NISAかつみたてNISAのどちらにしようか迷うことはなくなりました。
2)年間投資可能額の拡大
新NISAのポイント2つ目は、年間投資可能額が拡大することです。具体的には以下の通りです。
- 従来NISA:一般NISAの年間120万円か、つみたてNISAの年間40万円のいずれか
- 新NISA:年間360万円。成長投資枠の240万円と、つみたて投資枠120万円の合計
新NISAでは、最大で年間360万円の投資を非課税で行えます。プロの投資家でもなければ、十分な投資額といえるのではないでしょうか。
3)非課税保有限度額(総枠)の拡大
新NISAのポイント3つ目は、非課税保有限度額の拡大です。具体的には以下の通りです。
- 従来NISA:一般NISAは600万円、つみたてNISAは800万円
- 新NISA:1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)
また、
新NISAでは非課税保有限度額が拡大するのに加え、その保有限度額の枠の再利用が可能
です。例えば、毎年360万円の商品を購入して保有し続ければ、5年間で非課税保有限度額1,800万円の購入残高(簿価残高)に達するので、原則として、それ以上の新規投資はできません。ただし、満額利用に達した場合、解約を行った購入残高(簿価残高)は翌年に再利用が可能です。
4)非課税保有期間の無期限化
新NISAのポイント4つ目は、非課税保有期間の無期限化です。具体的には以下の通りです。
- 従来NISA:一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間
- 新NISA:無期限
新NISAの場合は、30年間でも50年間でも、期間を気にせずに非課税で運用できます。そのため、より長期的な資産形成に向いています。
5)制度の恒久化
新NISAのポイント5つ目は、制度の恒久化です。一般NISAやつみたてNISAは2023年で新規投資が終了されます。しかし、新NISAは制度が恒久化されます。そのため、「NISAがいつか終わってしまうかもしれない……」という心配をせずに、安心して資産形成を続けられます。
3 情報提供で従業員の金融リテラシー向上!
ここまで紹介した通り、新NISAは従業員の資産形成をサポートする上でとても便利な制度です。企業が支援金を拠出する必要もありません。問題は、
投資に不慣れな従業員は新NISAのことを知らず、自分で勉強するのも難しいと考えているかもしれない
ということです。そこで企業の出番です。投資に不慣れな従業員のために、福利厚生として、企業が新NISAなどに関する情報提供をしてみるのはいかがでしょうか。従業員の金融リテラシーが向上し、資産形成を始めるきっかけを与えることができます。
企業で新NISAに詳しい人がいない場合もご安心ください。りそな銀行では、
従業員の皆さん向けに、NISA・資産形成について≪学ぶ≫ ≪使う≫さまざまなサービス
をご提供しています。新NISAを簡単に理解できる専用HPの用意やオンラインセミナーの配信を行っています。また、スマホで簡単に投資を始められる「りそなグループ」アプリも利用できます。
りそな銀行の各サービスをご利用いただければ、金融教育も含めて総合的に従業員の資産形成をサポートできます。各サービスの詳細は以下のURLから確認できますので、福利厚生の一環として、ぜひ検討してみてください。
以上
(監修 社会保険労務士法人AKJパートナーズ)
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年12月15日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
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