1 建設業における現状

建設業は、大きな建築物はもちろんのこと、住宅、道路、電気・ガス・水道などのライフラインに至るまで、私たちの生活に欠かせない地域を支える産業です。しかも工事は危険を伴う重労働であり、安全の観点からも細かな管理が求められる業種です。

建設業の中にもいろいろな業種がありますが、それらに共通していることは数次の請負関係の元で一つの工事が行われることが非常に多く、そのため業者間の調整がとても重要だということです。

建設業は様々な場面で緻密さが求められる産業ですが、重労働であるという側面が注目されて、昔から3K(きつい・危険・汚い)と呼ばれていた職種であることも事実です。現在は、高齢化が進み全体の36%以上が55歳以上となっており、若者の担い手をいかに確保するかが大きな課題となっています。

今の時代、SNSなどで容易に他の世界を覗き見ることができるようになり、若者の視野も広がり、更には若者の親世代にも3K職種についての固定観念が根強く残っているため、建設業は若い世代から選ばれにくい業種となっていました。

そこで国交省では、新3K(希望・休暇・給料)を掲げ、このイメージを一新して建設業が魅力のある業界になるための様々な施策を打ち出しています。

社会保険の適用に関する下請け指導ガイドラインもその一つです。これは厚生労働省のガイドラインだという誤解もあるようですが、建設業界の未来を考えた国交省のガイドラインです。

2 近年の改正

国交省は、建設業界の存続、発展のため、担い手3法(建設業法、公共工事の品質確保の促進に関る法律(品確法)、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)の改正により、以下のように様々な改正を行ってきました。

(2014年) 適正な利潤確保(ダンピング対策)と担い手育成・確保のための基本理念や具体的措置の規定等
(2019年) 働き方改革の促進と生産性向上への取組、持続可能な事業環境の確保等
(2024年) 働き方改革、処遇改善の徹底と持続可能な事業環境の確保等

特に、2019年改正では、社会保険加入率の向上、工期に関する基準作成、週休2日制の導入、DX化による生産性向上や、技術者が一定の条件のもと複数現場を担当できるようにするなど技術者不足解消に効果的な改正をし、働き方改革が大きく前進しました。

さらに2024年改正では、標準労務費の導入と建設Gメン機能の強化による著しく低い労務費での見積もり禁止や労務費のしわ寄せ禁止を行い、受注側に対しては短い工期での受注禁止や休日確保の配慮義務化を、発注者側に対しては適切な工期設定を求めるなど、建設業界の存続のため、本気で取り組む姿勢が感じられます。

また、2024年4月からは労働基準法の改正により災害復興などの一定の事由を除き、一般の業種と同様の時間外労働の上限規制が適用されました。

時間外労働・休日労働に関する協定(いわゆる三六協定)を締結して届け出た範囲でしか時間外労働をさせることができないことは、これまでの建設業も同様でしたが、特別条項に関する協定の締結および手続きをせずとも基本の協定の中で青天井に時間外労働時間数を協定することができていましたので、協定の上限時間を意識することなく時間外労働をさせていたのが実情だと思われます。

この改正により、建設業には時間外労働を原則月45時間以内とするための方策が求められています。

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