先般、厚生労働省より「令和6年版 労働経済の分析」(労働経済白書)が公表されました。「人手不足への対応」をテーマにしており、中小企業にとっても興味深い内容となっています。
本稿では、「令和6年版 労働経済の分析」(労働経済白書)の中から、中小企業に役立ちそうな部分をお伝えします。
1 人手不足の現状
人手不足は、需要の増加、労働時間の短縮、サービス産業化の進展などが複合的に影響して生じます。日本では2010年代以降、人手不足が続いていますが、今後も人口減少や高齢化が続く見通しであるため、人手不足が「長期かつ粘着的」となっています。時間単位でみた労働力の需要と供給は、2017年以降、供給不足(需要過多)が目立っています。
※令和6年版 労働経済の分析(労働経済白書)より引用
産業・職業別に労働力の不足度合い(労働力需給ギャップ)を分析すると、2017年以降、全体的に労働力需要が労働力供給を上回り、2023年には人手不足が広範囲の産業・職業で生じています。とりわけ、次の産業・職業で人手不足が顕著です。
2 人手不足への対応
労働経済白書では、人手不足への対応として、女性、高齢者、障害者、外国人など、「誰もが活躍できる社会の実現」を強調しています。人口が減少していく日本では、これまで以上に一人ひとりの労働者が貴重な存在となることから、政府も引き続き、リスキリング支援など生産性向上に向けた必要なサポートを行っていく必要がある、と指摘しました。
また、人手不足への効果的な対応事例も紹介しています。その中から、中小企業の取り組みを以下に紹介します。
A社(岡山県岡山市、醸造機械・プラントメーカー、従業員数150名)
- 2019~2023年までに21のITツール・システムを導入。
- 基幹システム等の刷新にあたっては、各システムの連携やアップデートへの対応を容易にするため、カスタマイズは極力行わずパッケージに業務を合わせる。
- 仕入先への発注方法をFAX・郵送等からオンラインに切り替え、月400時間の工数削減やペーパーレスを実現。
- 2018年に1名だったデジタル人材が2023年には延べ21名に増加。
B社(三重県伊勢市、有料老人ホーム等運営、従業員数114人)
- 入浴、食事介助等の「直接業務」と、掃除、洗濯、シーツの交換等の「間接業務」を分離。介護職員は直接業務に専念し、間接業務をシルバー人材センターの高齢者等に任せることで、介護職員が働きやすくなり、介護の質も向上。
- 「週休3日・夜勤専従・10時間勤務」の導入。ライフスタイルに合った労働時間を選択できる。勤務時間も規則的になり、病欠も年間で8割近く減少。採用の増加へも結びついた。
- 独自の研修教育機関を設立。介護技術の水準に応じた社内検定制度(1~6級の段位)をつくり、段位取得は賞与へも反映される。
- ICTを活用した業務の効率化(スマートフォンを使った介護記録の電子化やインカムの活用)。
3 さいごに
「令和6年版 労働経済の分析」(労働経済白書)は、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/24/24-1.html)からダウンロードできます。概要版も載っているので、参考になさってください。
※本内容は2024年10月10日時点での内容です。
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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