書いてあること

  • 主な読者:6月病(≒適応障害)による社員の離職などが心配な経営者、管理職
  • 課題:6月病になりやすい社員のタイプや、6月病が疑われる場合の対応を知りたい
  • 解決策:真面目な社員、抱え込みやすい社員などが6月病になりやすい。いつもと様子が違ったら上司などが話を聞く。不調が1~2週間続くなら、医療機関での受診を勧める

1 6月病の社員にご用心

6月病(5月病ともいわれます)とは、

4月に入社や異動をした社員が、環境の変化に適応できずにストレスを抱え過ぎて心身の不調や体調不良を起こすこと

です。医学的には環境因によるストレスで引き起こされる「適応障害」と診断される状態の一部として考えられます。6月病(≒適応障害)の主な症状は次の通りです。最初は情緒面の症状が多く、やがて行動面、身体面でも症状が表れます。

  • 情緒面:抑うつ、不安、焦り、緊張、イライラ、突然泣き出すなど
  • 行動面:暴飲暴食、無断欠勤、危険運転、虚偽の発言、けんかや口論の頻発など
  • 身体面:疲労感、不眠、頭痛、胃痛、動悸(どうき)、めまい、手の震えなど

6月病が重症化すると業務に支障を来し、最悪の場合、離職につながることもあります。そうならないためには「早期の発見、早期の対処」が肝心です。この記事では、産業医監修のもと、6月病対応のポイントを次の3つにまとめました。

  1. 6月病になりやすい社員を早期に発見する
  2. 不調が1、2週間続くなら、医療機関での受診を勧める
  3. 医師の意見を参考に、休職や職場復帰について判断する

2 6月病になりやすい社員を早期に発見する

一般的に次のような性格の人は6月病になりやすいといわれます。

真面目、責任感が強い、心配性、完璧主義、頼まれると断れない、気が小さい、周りの意見を気にする、失敗や苦悩を引きずりやすい

特に若手の社員は、仕事上のストレスとまだうまく付き合うことができず、ささいなことでもストレスをためて6月病になってしまうことがあります。思い当たる社員がいる場合、試しに次の視点で観察してみると、何らかの変化が起きているかもしれません。

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該当項目が多い場合、上司のほうから、

「いつもと様子が違うようだけど、何かあった?」

などと声を掛け、話を聞いてみます。その際、上司が一方的にアドバイスをするだけでは、悩んでいる社員にそれを受け入れる余裕はありません。そのため、

「それは大変だね」「つらかったね」

など、社員の話に「共感を示す」ことがまずは大切です。「自分のことを分かってもらえる」という安心感があれば、社員は自分のことをもっと話してくれます。また、ストレスによって離職を考えていたとしても、こちらの対応によって離職を思いとどまるかもしれません。

社員が話しやすい環境を整えるポイントとしては、

  • 対面:個室など他人の目のない場所で話す、飲み物を飲みながらなど、緊張しない空気づくりを意識する
  • オンライン:個別のミーティングルームを設定する、「顔出し」を強要しない

などが考えられます。また、日ごろから「いつでも相談してほしい」など、次につながる声掛けをするのも大切です。

3 不調が1~2週間続くなら、医療機関での受診を勧める

6月病の場合、受診のタイミングは

症状が表れてから1、2週間以上続いている状態が目安

といわれています。社員に「いつごろからつらいの?」と症状が表れた時期を確かめ、1、2週間以上つらい状態が続いている様子であれば、医療機関での受診を勧めることを検討します。ただし、

  • 「君はきっと病気だよ! 受診してきなさい」などと決めつけるのはNG
  • 「最近遅刻やミスが多くて、どうも疲れているように見えるよ。だから一度体調を診てもらったほうがいいんじゃない?」など、理由を提示して受診を勧めることが大切

です。

それでも社員が受診を拒むなら、その家族に相談するのも1つの手です。ただし、社員を責めるような言い方をすると、家族が会社に反感を持ったり、逆に本人に詰め寄ったりしてトラブルになる恐れがあります。そうではなく、

「○○さんのご家庭での様子はどうですか? 会社としても心配しています」など、社員を気遣う伝え方

を心がけましょう。

4 医師の意見を参考に、休職や職場復帰について判断する

1)通院しながら働いてもらうか、休職させるか

社員が6月病(適応障害)と診断された場合、会社は通院しながら働いてもらうか、休職させるかを検討します。その際は、会社の産業医や社員の主治医の意見を参考にしつつ、就業規則の休職規定と照らし合わせて決めます。

通院しながら働いてもらう場合、今の業務が治療に影響を与えないかを十分検討し、場合によっては軽度な業務などに転換します。

2)職場復帰させるか

休職期間の終了後(または、休職期間途上で休職事由が解消した場合)、会社は産業医などの意見を参考に職場復帰させるか否かを判断します。職場復帰後に再び症状が出るケースもあるので、職場復帰の時期や復帰後の配置などについては慎重に検討します。

職場復帰の手続きや条件、復帰後の配置などについては、あらかじめ休職規定に定めておきます。また、「長い休職の後でいきなり通常勤務に戻すのは不安……」ということであれば、

同じく就業規則にリワーク規定やリハビリ勤務規定などを定めておく

ようにしましょう。そうすれば、社員は徐々に体を慣らしながら復職することができます。

職場復帰の具体的な手順は、厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が参考になります。職場復帰の可否を判断する基準の例は次の通りです。

  • 労働者が十分な意欲を示している
  • 通勤時間帯に1人で安全に通勤ができる
  • 決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である
  • 業務に必要な作業ができる
  • 作業による疲労が翌日までに十分回復する
  • 適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
  • 業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している など

診断上は職場復帰が可能でも、社員が離職の意思を固めていることもあります。その場合、面談などを通じて丁寧に話し合い、後にトラブルが生じないようにします。

■厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00005.html

5 6月病にならないためには?

6月病にならないために、日ごろからストレスをため過ぎないようにしましょう。趣味を楽しむ時間を確保したり、生活リズムを整えたりすることはストレス対策の基本ですから、そのことを積極的に社員に伝えしましょう。

また、真面目でミスを引きずる人が6月病になりやすいといわれますので、経営者が率先して

「失敗を許容する雰囲気」をつくることも大切です。甘やかすということではなく、失敗から学び、次にチャレンジする文化を育むという意味

です。

また、テレワークだとコミュニケーションが取りにくく、社員がストレスを抱え込みやすくなります。さじ加減が難しいところですが、個別チャットなどで上司がこまめに簡単な連絡を入れたり、定期的に社員と個別に面談する機会を設けたりして、通常よりも意識的にコミュニケーションを取るようにしましょう。

以上(2024年4月更新)
(監修 株式会社フェアワーク 吉田健一)

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画像:pixabay

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