書いてあること
- 主な読者:デイケア施設の開設を検討している人
- 課題:自社の所有地に通所リハビリテーション施設を新築する
- 解決策:開業、運営に掛かる費用の目安を押さえ、収支計画をシミュレーションしてみる
1 通所リハビリテーションとは
1)通所リハビリテーション
通所リハビリテーションとは、
居宅の要介護者を介護老人保健施設、病院、診療所、その他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーション
をいいます。また、通所リハビリテーションは一般にデイケアとも呼ばれています。
通所リハビリテーションは、介護保険法の居宅サービス事業に該当します。居宅サービス事業者となるには、都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)の指定を受ける必要があります。
2)介護予防通所リハビリテーション
介護予防通所リハビリテーションとは、
居宅の要支援者(要介護に至っていない状態の人)を介護老人保健施設、病院、診療所、その他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、その介護予防(要介護状態になることの予防)を目的として、厚生労働省令で定める期間にわたり行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーション
をいいます。
介護予防通所リハビリテーションは、介護保険法の介護予防サービスに該当します。介護予防サービス事業者になるには、都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)の指定を受ける必要があります。
3)通所リハビリテーション施設の開設
通所リハビリテーション施設を開設するには
- 法人格を取得する
- 厚生労働省令で定められた事項を都道府県知事に届け出る
- 厚生労働省が定める「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」を満たす
- 施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から介護保険法の「通所介護」に係る「指定居宅サービス事業者」の指定を受ける
なお、市区町村によって基準が異なる場合や、設置を計画していた施設の数を満たしているといった理由で申請を受け付けていない場合があるため、事前に市区町村の担当部署に確認しましょう。
また、市区町村によって施設整備費や設備整備費などに補助金を出していることもあるので、併せて確認するとよいでしょう。
2 開業収支を考える
1)前提条件
1.売上高
売上高は、施設定員を90人として年間5870万円とします。算出式は次の通りです。
(介護サービス費8万3800円+日常生活費等6800円)×定員90人×12カ月×稼働率60%≒5870万円
通所リハビリテーションの売上高は、介護サービス費と日常生活費等から成ります。
厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和3年4月審査分)第5表 介護サービス受給者1人当たり費用額,要介護状態区分・サービス種類別」によると、通所リハビリテーションの介護サービス受給者1人当たり費用額は8万3800円となっています。介護保険が適用されるので利用者の負担は1割(一定基準以上の所得がある場合は2割または3割)となります。
日常生活費等は、食材料費、教育娯楽費、日用品代などで、利用者が実費を負担します。
2.原価率
厚生労働省「令和2年度介護事業経営実態調査」の介護事業費用(3)その他を参考に、売上高の27.7%とします。
3.人件費
厚生労働省「令和2年度介護事業経営実態調査」の介護事業費用(1)給与費66.7%を参考に、3915万円(5870万円×66.7%)とします。
4.施設設備整備費用
一般的に、通所リハビリテーション施設は、病院や診療所、他の介護サービス施設と併設されるケースが多いようです。そこで、このシミュレーションでは、リハビリテーションを行う専用の部屋を既存の施設に増築するものと仮定し、建物(延床面積120平方メートル。1平方メートル当たり工事単価30万円)は3600万円。建物附属設備(電気・給排水・消火設備など)は540万円とします。
その他の諸条件は次の通りとします。
2)収支シミュレーション
3 通所リハビリテーション施設(予防を含む)の収支
厚生労働省「令和2年度介護事業経営実態調査結果」によると、通所リハビリテーション(予防を含む)の1施設1カ月当たり収支は次の通りです。
以上(2022年12月)
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画像:Robert Kneschke-shutterstock