書いてあること
- 主な読者:特別養護老人ホームの開設を検討している人
- 課題:自社の所有地に特別養護老人ホームを新築する
- 解決策:開業、運営に掛かる費用の目安を押さえ、収支計画をシミュレーションしてみる
1 特別養護老人ホームとは
特別養護老人ホームとは、
65歳以上で常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者(原則要介護3以上)に対して、生活全般の介護を提供する施設
です。
特別養護老人ホームでは、入浴、排泄、食事などの介護をはじめ、日常生活、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行います。
特別養護老人ホームを開設するには、
- 社会福祉法人を設立する
- 厚生労働省令で定められた事項を都道府県知事に届け出る
- 厚生労働省が定める「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」の人員配置基準、設備基準、運営基準を満たす
- 施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から老人福祉法における「特別養護老人ホーム」の指定を受ける
- 入所定員が30人以上の施設は、施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から介護保険法における「介護老人福祉施設」の指定を受ける
- 入所定員が29人以下の施設は、施設の所在地の区市町村から介護保険法における「地域密着型介護老人福祉施設」の指定を受ける
必要があります。
なお、市区町村によって基準が異なる場合や、設置を計画していた施設の数を満たしているといった理由で申請を受け付けていない場合があるため、事前に市区町村の担当部署に確認しましょう。
また、市区町村によって施設整備費や設備整備費などに補助金を出していることもあるので、併せて確認するとよいでしょう。
2 開業収支を考える
1)前提条件
1.売上高
売上高は、施設定員80人(10人×8ユニット)として年間3億5129万円とします。算出式は次の通りです。
(介護サービス費30万4700円×12カ月+ホテルコスト(1970円+1380円)×365日)×定員80人×稼働率90%≒3億5129万円
特別養護老人ホームの売上高は、介護サービス費とホテルコストから成ります。
厚生労働省「介護給付費実態統計月報(2023年11月審査分)第5表、介護サービス受給者1人当たり費用額、要介護状態区分・サービス種類別」によると、介護福祉施設サービスの介護サービス受給者1人当たり費用の平均月額は30万4700円となっています。
また、ここでは日常生活費を1日当たり1970円、食費を1日当たり1380円とします。
2.原価率
原価率は、後掲の図表4(介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支)の介護事業費用のうち(4)その他を参考に29.4%とします。
3.人件費
また、人件費は同じく後掲の図表4(介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支)の介護事業費用のうち(1)給与費65.2%を参考に2億2904万円(3億5129万円×65.2%)とします。
4.施設整備費
建物(延床面積4000平方メートル。1平方メートル当たり工事単価33万円)は13億2000万円。建物附属設備(電気・給排水・消火設備など)は1億8000万円とします。
その他の諸条件は図表1の通りです。
2)収支シミュレーション
3 介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支
厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」によると、介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支は次の通りです。
以上(2024年3月更新)
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