書いてあること
- 主な読者:認知症高齢者グループホームの開設を検討している人
- 課題:自社の所有地に認知症高齢者グループホームを2ユニット新築する
- 解決策:開業、運営に掛かる費用の目安を押さえ、収支計画をシミュレーションしてみる
1 認知症高齢者グループホームとは
認知症高齢者グループホームは、認知症の高齢者(利用者)が専門スタッフの支援を受けながら共同で生活する小規模の介護施設です。利用者は「ユニット」と呼ばれる5~9人のグループに分かれ、家庭的な雰囲気の中で、入浴、排せつ、食事などの介護、その他の日常生活上の世話、機能訓練を受けつつ、できる限り自立した生活を送ります。
認知症高齢者グループホームを開設するには、
- 法人格を取得する
- 厚生労働省が定める「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(第五章 認知症対応型共同生活介護)」の人員配置基準、設備基準、運営基準(基準)を満たす
- 施設の所在地の市区町村から介護保険法の「認知症対応型共同生活介護事業」に係る「地域密着型サービス事業者」の指定を受ける
必要があります。
なお、市区町村によって基準が異なる場合や、設置を計画していた施設の数を満たしているといった理由で申請を受け付けていない場合があるため、事前に市区町村の担当部署に確認しましょう。
また、市区町村によって施設整備費や設備整備費などに補助金を出していることもあるので、併せて確認するとよいでしょう。
2 開業収支を考える
1)前提条件
1.売上高
売上高は、施設定員18人(9人×2ユニット)として年間8831万円とします。算出式は次の通りです。
(介護サービス費29万400円+日常生活費等14万円)×定員18人×12カ月×稼働率95%≒8831万円
認知症高齢者グループホームの売上高は、介護サービス費と日常生活費等から成ります。
厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和3年4月審査分)第5表 介護サービス受給者1人当たり費用額,要介護状態区分・サービス種類別」によると、認知症対応型共同生活介護(短期利用以外)の介護サービス受給者1人当たり費用額は29万400円となっています。介護保険が適応されるので利用者の負担は1割(一定基準以上の所得がある場合は2割または3割)となります。
日常生活費等は、家賃、食材料費、光熱水費、共益費、その他(理美容代、おむつ代、日用品代など)で、利用者が実費を負担します。
2.原価率
原価率は、後掲の図表4(認知症対応型共同生活介護(予防を含む)の1施設1カ月当たり収支)の介護事業費用のうち(4)その他を参考に26.8%とします。
3.人件費
人件費は同じく後掲の図表4(認知症対応型共同生活介護(予防を含む)の1施設1カ月当たり収支)の介護事業費用のうち(1)給与費64.2%を参考に5569万円(8831万円×64.2%)とします。
4.施設整備・設備整備費用
建物(2ユニットを新築。延床面積700平方メートル。1平方メートル当たり工事単価30万円)で2億1000万円、建物附属設備(消火設備など)で1500万円とします。
その他の諸条件は次の通りとします。
2)収支シミュレーション
3 認知症対応型共同生活介護施設の1カ月当たり収支
厚生労働省「令和2年度介護事業経営実態調査」によると、認知症対応型共同生活介護(予防を含む)の1施設1カ月当たり収支は次の通りです。
以上(2021年12月)
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画像:Photographee.eu-shutterstock