書いてあること
- 主な読者:ケアハウスの開設を検討している人
- 課題:自社の所有地でケアハウスを新築する
- 解決策:開業、運営に掛かる費用の目安を押さえ、収支計画をシミュレーションしてみる
1 軽費老人ホーム(ケアハウス)とは
軽費老人ホームとは、
老人福祉法で定義されている、無料または低額な料金で老人を入所させ、食事の提供、その他の日常生活上必要な便宜を供与することを目的とする施設
です。
軽費老人ホームはA型・B型・C型・都市型の4種類に分けられており、C型が「ケアハウス」に当たります。
また、ケアハウスは、60歳以上の高齢者が対象の「一般(自立)型ケアハウス」と、65歳以上で要介護度1以上の高齢者が対象で、生活支援サービスと併せて介助サービスを受けることができる「介護型ケアハウス」の2種類があります。
なお、2008年6月1日以降は、軽費老人ホームとして開設できるのはケアハウスだけとなりました。従来からの軽費老人ホームのうちA型・B型は経過的軽費老人ホームと位置づけられています。
ケアハウスを開設するには、
- 法人格を取得する
- 厚生労働省令で定められた事項を都道府県知事に届け出る
- 厚生労働省が定める「軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準」を満たす
- 施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から社会福祉法に基づく「軽費老人ホーム」の指定を受ける
- 介護型ケアハウスは、施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から介護保険法に基づく「特定施設入居者生活介護」の指定を受ける
必要があります。
なお、市区町村によって基準が異なる場合や、設置を計画していた施設の数を満たしているといった理由で申請を受け付けていない場合があるため、事前に市区町村の担当部署に確認しましょう。
また、市区町村によって施設整備費や設備整備費などに補助金を出していることもあるので、併せて確認するとよいでしょう。
2 開業収支を考える
1)前提条件
ここでは、前述の「介護型ケアハウス」を開設する想定でシミュレーションをします。
1.売上高
売上高は、施設定員を38人として年間1億3300万円とします。算出式は次の通りです。
(介護サービス費23万200円×12カ月+月額利用料金10万円×12カ月+入居一時金30万円)×定員38人×稼働率90%≒1億4578万円
ケアハウスの売上高は、介護サービス費と月額利用料、入居一時金等(注)から成ります。
厚生労働省「介護給付費実態調査月報(2024年1月審査分)第5表、介護サービス受給者1人当たり費用額、要介護状態区分・サービス種類別」によると、特定施設入居者生活介護(短期利用以外)受給者1人当たり費用の平均月額は23万200円となっています。
介護保険が適応されるので利用者の負担は1割(一定基準以上の所得がある場合は2割または3割)となります。
(注)シミュレーション上の売上高(2年度目以降)は、入居一時金1026万円(=30万円×定員38人×稼働率90%)を除きます。
2.原価率
原価率は、後掲の図表4 厚生労働省「特定施設入居者生活介護(予防を含む)の1施設1カ月当たり収支)」の介護事業費用のうち(4)その他を参考に42.6%とします。
3.人件費
人件費は同じく後掲の図表4「特定施設入居者生活介護(予防を含む)」の1施設1カ月当たり収支)の介護事業費用のうち(1)給与費43.3%を参考に5629万円(1億3300万円×43.3%)とします。
4.施設設備整備費
施設整備費は6億7200万円(延床面積2100平方メートル。1平方メートル当たり工事単価32万円)、建物附属設備(電気・給排水・消火設備など)は9450万円とします。
その他の諸条件は図表1の通りです。
2)開業収支シミュレーション
3 ケアハウスの1カ月当たり収支
厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」によると、ケアハウス(特定施設入居者生活介護(予防を含む))の1施設1カ月当たり収支は次の通りです。
以上(2024年5月更新)
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画像:ケイーゴ・K-Adobe Stock