書いてあること
- 主な読者:サービス付き高齢者住宅の開設を検討している人
- 課題:自社の所有地でサービス付き高齢者住宅を新築する
- 解決策:開業、運営に掛かる費用の目安を押さえ、収支計画をシミュレーションしてみる
1 サービス付き高齢者向け住宅とは
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、
「高齢者の居住の安定確保に関する法律」で定義されている、高齢者単身・夫婦世帯が安心して居住できる賃貸等の住宅
です。
施設はバリアフリー構造となっており、利用者に対して安否確認サービスと生活相談サービスを提供します。また、施設によっては、食事の提供、清掃・洗濯などの家事の援助を行うところもあります。
サ高住には、一般型と介護型の2種類があります。
- 一般型:自立から要介護者まで入居可能。利用者は介護が必要な場合には、外部の介護サービスを別途契約する
- 介護型:要介護度が高い人向け。ケアスタッフが24時間常駐して、必要に応じた介護サービスを利用者に提供する
サ高住を開設するには、
- 法人格を取得する
- 厚生労働省令で定められた事項を都道府県知事に届け出る
- 厚生労働省が定める「高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則」を満たす
- 施設の所在地の都道府県・政令市・中核市の登録窓口で、サービス付き高齢者向け住宅事業の登録申請を行う
- 介護型のサ高住は、施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から介護保険法に基づく「特定施設入居者生活介護」の指定を受ける
必要があります。
なお、市区町村によって基準が異なる場合や、設置を計画していた施設の数を満たしているといった理由で申請を受け付けていない場合があるため、事前に市区町村の担当部署に確認しましょう。
また、市区町村によって施設整備費や設備整備費などに補助金を出していることもあるので、併せて確認するとよいでしょう。
2 開業収支を考える
1)前提条件
ここでは、前述の「介護型サ高住」を開設する想定でシミュレーションをします。
1.売上高
売上高は、施設定員を25人として年間9900万円とします。算出式は次の通りです。
(介護サービス費22万9800円×12カ月+月額利用料金12万2500円×12カ月+入居一時金13万6000円)×定員25人×稼働率90%≒9900万円
サ高住の売上高は、介護サービス費と月額利用料、入居一時金等(注)から成ります。
厚生労働省「介護給付費実態調査月報(2024年2月審査分)第5表、介護サービス受給者1人当たり費用額、要介護状態区分・サービス種類別」によると、特定施設入居者生活介護(短期利用以外)受給者1人当たり費用の平均月額は22万9800円となっています。
介護保険が適応されるので利用者の負担は1割(一定基準以上の所得がある場合は2割または3割)となります。
月額利用料には、生活支援などの基本サービス費や、光熱水費などを含みます。
(注)シミュレーション上の売上高(2年度目以降)は、入居一時金306万円(=13万6000円×定員25人×稼働率90%)を除きます。
2.原価率
原価率は、後掲の図表4 厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」の「特定施設入居者生活介護(予防を含む)」の1施設1カ月当たり収支の介護事業費用のうち(4)その他を参考に42.6%とします。
3.人件費
人件費は同じく後掲の図表4「特定施設入居者生活介護(予防を含む)」の1施設1カ月当たり収支)の介護事業費用のうち(1)給与費42.6%を参考に4217万円(9900万円×42.6%)とします。
4.施設設備整備費
施設整備費は全体で2億4817万円(木造299坪、1坪当たり工事単価83万円)とします。
内訳は、建築工事が1億8613万円、建物附属設備工事(電気・給排水・消火設備など)が6204万円となります。
その他の諸条件は図表1の通りです。
2)開業収支シミュレーション
3 サービス付き高齢者向け住宅の1カ月当たり収支
厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」によると、サービス付き高齢者向け住宅(特定施設入居者生活介護(予防を含む))の1施設1カ月当たり収支は次の通りです。
以上(2024年6月更新)
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