書いてあること
- 主な読者:介護老人保健施設の開設を検討している人
- 課題:自社の所有地に介護老人保健施設を新築する
- 解決策:開業、運営に掛かる費用の目安を押さえ、収支計画をシミュレーションしてみる
1 介護老人保健施設とは
介護老人保健施設とは
入院治療を必要としない要介護高齢者などを対象に、リハビリテーションや日常的な看護・介護を行うことで心身諸機能の改善や日常生活行動の向上を促し、最終的に家庭に復帰させることを目的とする施設
です。
介護老人保健施設では、入所サービス以外に、通所リハビリや短期入所(ショートステイ)などのサービスも提供しています。
介護老人保健施設を開設するには、
- 法人格を取得する(介護老人保健施設を開設できるのは、「地方公共団体」「医療法人」「社会福祉法人」「その他厚生労働大臣が定める者」に限られています)
- 厚生労働省令で定められた事項を都道府県知事に届け出る
- 厚生労働省が定める「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」を満たす
- 施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から介護保険法に基づく「介護保健施設」の指定を受ける
必要があります。
なお、市区町村によって基準が異なる場合や、設置を計画していた施設の数を満たしているといった理由で申請を受け付けていない場合があるため、事前に市区町村の担当部署に確認しましょう。
また、市区町村によって施設整備費や設備整備費などに補助金を出していることもあるので、併せて確認するとよいでしょう。
2 開業収支を考える
1)前提条件
1.売上高
売上高は、施設定員を70人として年間4億7000万円とします。算出式は次の通りです。
(介護サービス10万800円×12カ月+日常生活費等1万8330円×365日)×定員70人×稼働率85%≒4億7500万円
介護老人保健施設の売上高は、介護サービス費と日常生活費等から成ります。
厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和5年11月審査分)第5表 介護サービス受給者1人当たり費用額,要介護状態区分・サービス種類別」によると、短期入所療養介護(老健)の介護サービス受給者1人当たりの費用額は10万800円となっています。介護保険が適応されるので利用者の負担は1割(一定基準以上の所得がある場合は2割または3割)となります。
日常生活費等は、食材料費、教育娯楽費、日用品代などで、利用者が実費を負担します。
2.原価率
厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」の介護事業費用(4)その他を参考に売上高の32.0%とします。
3.人件費
厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」の介護事業費用(1)給与費64.2%を参考に3億180万円(4億7000万円×64.2%)とします。
4. 施設設備整備費
建物(延床面積3000平方メートル。1平方メートル当たり工事単価31万円)は9億3000万円。建物附属設備(電気・給排水・消火設備など)は1億3500万円とします。
その他の諸条件は図表1の通りです。
2)収支シミュレーション
3 介護老人保健施設の1施設1カ月当たり収支
厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査結果」によると、介護老人保健施設の1施設1カ月当たり収支は次の通りです。
以上(2024年3月更新)
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