書いてあること
- 主な読者:手軽な形でアップサイクルし、環境問題の解決に貢献したい経営者
- 課題:オフィスで簡単にできそうな取り組みを始めたい
- 解決策:クリアファイル、ペットボトルなど、身近なごみのリサイクルからやってみる
1 ごみを資源化して処理コストを抑えよう
事業活動に伴って発生する「事業系ごみ」は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」で大きく次のように分けられています。
- 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物含む):燃え殻、汚泥など業種を問わず発生する12種類の廃棄物と、建設業で発生する木くずなど、特定の業種で発生する8種類の廃棄物
- 事業系一般廃棄物:産業廃棄物以外のごみ。燃えるごみ、粗大ごみ、資源化できる古紙類
オフィスで発生する事業系一般廃棄物は、たとえ家庭ごみと同じ種類のものでも、原則として地域のごみ集積所に袋詰めにして出すことはできず、自治体の処理施設へ自社で持ち込むか、一般廃棄物収集運搬業者に委託して処理しなければなりません。
そこで検討したいのが、ごみをそのまま捨てるのではなく、資源化することで処理コストを抑えることです。
この記事では、
身近なごみを資源化してリサイクルしたり、環境負荷の低いものに置き換えたりすることで、ごみの削減につなげる事例
を紹介します。
ごみの削減はSDGsにも関連しますので、オフィスで手軽にSDGsに貢献できることがしたいと考えている方も参考にしてみてください。
2 オフィスでできる資源化の実践例
1)不要なOA用紙を名刺や封筒にアップサイクルする
古紙の中でも、オフィスで使われるコピーやファックス用のOA用紙は再生率が特に低いといいます。そこで、不要なコピー用紙を裏紙やメモに使うだけでなく、新しい製品にアップサイクルするのはいかがでしょうか。
例えば、山陽製紙(大阪府泉南市)が提供している「PELP!(ペルプ)」は、会員企業から不要になったコピー用紙を回収して、名刺や封筒、年賀状などの事務用品にアップサイクルするサービスです。
ウェブサイトでは、会員企業によるPELP!の活用事例や、コピー用紙を回収して作られた商品の事例も見ることができます。
■PELP!■
https://pelp.jp/
2)使用済みのクリアファイルを再利用する
事務用品で広く使われているクリアファイルは本来、繰り返し使えるものの、少し折り目やキズが付くと社外に出しづらく、使用済みのものがどんどんたまってしまった経験はないでしょうか?
こうしたときにはステッカーを貼るなどして、再利用していることをアピールするとよいかもしれません。例えば、GOMITAIJI(東京都世田谷区)では、「REクリアファイル」 プロジェクトとして、クリアファイル用のステッカーを販売しています。ステッカーには再利用によって環境保全を訴えるだけでなく、同社のプロジェクトページにリンクするQRコードも掲載されているので、クリアファイルを受け取った企業へ賛同を呼びかけることもできます。
また、オフィス用品の通販サイトを手掛けるアスクル(東京都江東区)では、「アスクル資源循環プラットフォーム」として、使用済みのクリアファイルの回収を受け付けています。自社のみで処理が難しければ、こうした外部のサービスを活用するのも一つの手段です。
■GOMITAIJI■
https://www.gomitaiji.or.jp/
■アスクル資源循環プラットフォーム■
https://www.askul.co.jp/kaisya/shigen/
3)会議用や来客用の飲料を紙製容器のものに変える
オフィスでの会議用や来客用の飲料をペットボトル製品で備えている会社も多いと思いますが、これを紙製容器のものに変えることで、脱プラスチックや森林育成につなげることができます。
例えば、ポッカサッポロフード&ビバレッジ(愛知県名古屋市)では、オフィスでの会議用や来客用飲料として、紙製飲料容器「カートカン」に入った水やお茶を販売しています。
カートカンは缶の形をした紙製の容器で、元々はヨーロッパで生まれたものをTOPPANが日本国内向けに改良し、取り扱っているものです。素材にアルミなどの金属類を使わず、国産材を30%以上、間伐材も積極的に活用しているため、紙パックとしてリサイクルがしやすくなっています。また、カートカンの売り上げの一部は緑の募金に寄付されるだけでなく、消費が増えることで、森林育成に欠かせない作業となる間伐が進むことにもなるため、企業のサステナビリティ向上に貢献できます。
■ポッカサッポロフード&ビバレッジ「カートカン」■
https://www.pokkasapporo-fb.jp/cartocan/
4)ペットボトルなどのプラスチックごみを製品にアップサイクルする
オフィスで出るペットボトルなどのプラスチックごみは、外部の企業と提携して新たな商品を作るのも一つの方法です。
例えば、REMARE(三重県鳥羽市)では、企業から出るプラスチックごみを回収し、新しい商品に作り替えています。
これまでの実績として、オフィスで出たペットボトルのキャップを回収し、マガジンラック、バインダーなどの文房具やコースターを製作したり、コロナ禍が過ぎて不要となったアクリル板を回収し、時計、ボールペン、テーブルや什器(じゅうき)の天板、棚などに利用できる板材を製作したりしています。
■REMARE■
https://www.remarematerial.com/
5)不要になったアクリル板のリサイクルを図る
新型コロナウイルス感染症対策として使われていたパーティションなどのアクリル板は感染対策上不要となり、そのまま保管しているところもあるのではないでしょうか。
アクリル板は、産業廃棄物(廃プラスチック類)扱いになるので、一般ごみではなく、適切な産業廃棄物処理業者に収集や処分を委託する必要があります。
一方で、環境省では、プラスチック使用製品廃棄物などの排出抑制や、再資源化(リサイクル)できるものは再資源化を実施することを求めています。そこで、ただアクリル板を処分するだけでなく、アップサイクルに取り組む企業に回収を委託して再資源化することを検討してみましょう。
例えば、緑川化成工業(東京都台東区)では、アクリル製品のマテリアルリサイクルに取り組んでいます。同社では、アクリル板を回収し、国内で初めてエコマークを取得した再生アクリル板「リアライトRE」に製品化するだけでなく、回収したパーティションなどのアクリル板を、ノベルティーなどの新しい製品にアップサイクルする提案も行っています。
■緑川化成工業■
https://www.midorikawa.co.jp/
3 リサイクル促進の鍵は「ごみの分別」
オフィスで出るごみを適切にリサイクルするためには、ごみの分別が適切にできていることが大切です。ごみの分別がうまくいかない背景には、「ごみの分別ルールが自宅と異なる」「オフィスでのごみの分別方法が周知されていない」「オフィスだと、自宅よりもリサイクルに意識が向きにくい」などの理由もあるようです。
ごみの分別がうまくいっている会社では、「駅や町のごみ箱と同じように、分別する種類ごとにごみ箱を用意する」「分別に迷いそうなごみは、写真を付けて例示する」といった工夫をしているところもあります。
ごみの分別は社員全員で取り組む必要があるため、継続して呼びかけていくことが肝心です。
以上
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