「会社として、何か社会に役立つことをしたい」と考えている経営者の方は多いと思います。今では、貧困問題を解決するプロジェクトにウェブサイト上で寄附できる、廃棄予定の食材をネットで購入できるなど、オンラインでできるさまざまな社会貢献サービスがあります。

これから先、SDGsが定着し、こうした手軽に参加できる社会貢献サービスは、より身近なものになるでしょう。本記事では、具体的な事例をいくつかご紹介していきます。今後、自社で社会貢献サービスをビジネスとして検討する際のヒントになるかもしれません。

1 オンライン型の社会貢献サービスを分類してみる

これからご紹介する社会貢献サービスは、インターネットやSNS、アプリなどを活用して、社会的に有意義な活動をしている人や団体を支援したり、自分たちのちょっとした社会貢献をシェアできたりするものです。

次の図表は、実際に存在する「オンラインでできる社会貢献サービス」の内容を、

  • オンラインで全て完結するか/リアルな場での参加もあるか
  • モノのやりとりが発生しないか/モノのやりとりが発生するか

という2軸で区分してまとめたものです。

オンラインでできる社会貢献サービスのポジショニングマップ

次章では、これらのサービスを行う団体(会社やNPO法人など)のうち6つを取り上げ、サービスの概要や、直接関係者にヒアリングした「利用者からの声」などをご紹介します。

2 サイト内のクリックボタンを押すだけで募金ができる

ハーティン(東京都渋谷区)は、クリック募金サイト「ハーティン」の運営をしている一般社団法人です。

ユーザーが、サイト内のボタンをクリックするだけで貧困問題支援や森づくり支援などのSDGsに関連するプロジェクトに寄附をすることができます。ユーザーがクリックをした回数に応じて、スポンサーの会社がクリックをしたユーザーに代わり、プロジェクトを実施するNPO法人などに支援金の寄附を行う仕組みです。スポンサーの会社が「クリックしたユーザーに代わって」寄附するため、ユーザー側には一円の負担もかからないのが特徴です。寄附金の一部はハーティンが手数料として受け取ります。ハーティンを通じたNPOやNGOへの寄附総額は1659万円を超えています(2024年2月末時点)。

ハーティンのサービス

同団体の佐藤氏にお話を伺ったところ、ハーティンは、クリックするサポーターの生きがいにもつながっているそうです。

「サポーターは、自分がクリックするという日々の取り組みが社会貢献につながっていることにやりがいを感じてくれます。そのため、寄附を受けるNPO法人には、月に1回の活動報告をサポーターに行うようにお願いしています」(佐藤氏)

■クリック募金 ハーティン■

https://heartin.com/

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3 ふるさと納税の仕組みを使い、楽器を学校などに寄附できる

パシュート(東京都台東区)は、さまざまな地域貢献を実施している会社です。取り組みの一つに、家に眠っている使わなくなった楽器を、ふるさと納税の制度を通じて学校や音楽団体に寄附できる「楽器寄附ふるさと納税」があります。

寄附を希望する人は、専用サイトで寄附したい楽器や寄附したい団体を選んで査定の申し込みを行い、査定を通るとその楽器が事業者・自治体経由で学校などに送られます。

楽器の査定額分は税額控除の対象で、通常のふるさと納税のような返礼品はない代わりに、感謝の手紙や演奏会の案内などをもらえます。同社は、本制度の発案者である「いなべ市(三重県)」及び査定を行う「マーケットエンタープライズ」と実行委員会を組み、「楽器寄附ふるさと納税」を行う自治体から年間利用料を受け取っています。寄附の申し込みは1600件以上あり、寄附楽器の累計査定額の総額は1750万円を超えています(2023年6月6日時点)。

パシュートのサービス

同社の伊藤氏にお話を伺ったところ、三重県いなべ市から中学校の楽器不足に悩んでいると相談があり、本サービスが立ち上がったそうです。実際に楽器寄附ふるさと納税を運営するなかで、楽器をもらった生徒だけでなく寄附をした人からも感謝の声が届くと言います。

「楽器は、学生時代に親が部活のために工面して買ってくれたり、長年の音楽活動の相棒として一緒に過ごしてきたものなので、今使ってなくても、なかなか売ったり処分したりできるものではありません。この制度を知って、『現役の音楽に親しむ子たちのためになら手放す決心ができた』、『楽器も眠らせたままより誰かに吹いてもらって喜んでいるでしょう』という声をいただいています。寄附する人にもされる人にも嬉しいサービスとなっています」(伊藤氏)

■楽器寄附ふるさと納税専用サイト■

https://www.gakki-kifu.jp/

4 不要になった家電などをホームレス状態の人に寄附できる

Homedoor(大阪府大阪市)は、家庭で使わなくなった家電などをホームレス状態から脱出を目指す人に寄附する専用サイト「モノギフト」を運営しているNPO法人です。

モノギフトは、パソコンやタンス、缶詰、ジュエリー、お米などを送って、ホームレスの人を支援する仕組みです。送付した寄附品は、直接ホームレスの人に支給される他、提携しているリサイクルショップに買い取ってもらってホームレス支援のための活動資金となります。

Homedoorのサービス

同法人の松本氏にお話を伺ったところ、ホームレス支援をしていたHomedoorに物品の寄附の希望が多く寄せられる中で、家電などの保管場所に苦労しないようリサイクルショップに直接買い取ってもらう仕組みが作れないかを検討した結果、モノギフトの立ち上げにつながったそうです。

「ホームレス支援をしたいという声は多くあります。寄附する人からは、モノギフトを通じて使わなくなった家電を直接買い取りに来てもらえるため、一人では移動させるのが大変な大型家電などでも寄附しやすいと好評です。物品を無駄にしたくないと考える消費者の方は多いようで、問い合わせは毎日のようにあり、普及には苦労しなかった印象です」(松本氏)

■モノギフト■

https://monogift.homedoor.org/

5 不要になったランドセルや文房具を海外に寄附できる

ワールドギフト(大阪府大阪市)は、まだ使える不用品を世界支援に役立てる「ワールドギフト」を運営するNPO法人です。

使わなくなった古着やランドセル、ぬいぐるみ、おもちゃなどの物資の寄附を、ネットを通じて申し込み、海外の支援を必要とする人たちのために役立てる仕組みです。物資を支援する際は、同時に寄附金の振り込みも行います。支援先は、2024年3月現在、計96カ国です(アフリカ・中南米が中心)。

ワールドギフトのサービス

同法人の平井氏にお話を伺ったところ、日本から届く数々の贈り物は、物資が不足する世界中の人々に喜ばれているようです。

「他の誰からも支援を受ける事ができていない施設や地域を支援し続ける事で、世界中に信頼できる仲間たちが大勢できました。毎日現地の声や支援の感想、村人たちや子供たちがどんな事に困っているか、どんなものを喜んだか、次の支援のための反省などを話し合っています」(平井氏)

■ワールドギフト■

https://world–gift.com/

6 賞味期限が近い食品などをショッピングサイトで買える

クラダシ(東京都品川区)は、フードロス削減を目指すショッピングサイト「Kuradashi(クラダシ)」を運営する会社です。

このサイトでは、賞味期限が近いなど、さまざまな理由で廃棄される可能性が高い食品などをお得な価格で販売しています。また、売り上げの一部を環境保護・災害支援などに取り組む社会貢献団体などへの寄附や支援に充てています。「Kuradashi」の運営により、2万653トンを超えるフードロス削減、92億円を超える経済効果を生み出しています(2023年12月末時点)。

クラダシのサービス

同社の齊藤氏にお話を伺ったところ、本サービスは、代表の関藤氏が商社勤務時代に中国に派遣された際に食品の大量生産・大量廃棄を目の当たりにしたことなどがきっかけで創業し、Kuradashiのユーザー数は51万人、出品企業数は約1600社になります(2023年12月末時点)。

「自分のためのお得なお買い物がフードロス削減や社会貢献につながるという点などをユーザーさまに評価いただいております」(齊藤氏)

■Kuradashi■

https://kuradashi.jp/

7 エコバッグで買い物をして得たポイントを寄附に使える

MILKBOTTLE SHAKERS(大阪府大阪市) は、 “スマホで育成”できるエコバッグ「Loopach(ルーパック)」を提供している会社です。

加盟店でエコバッグ「Loopach」を使って買い物をすると、アプリ上で「Loopach Flower」という花束を獲得でき、この花束を非営利団体などに贈ると、花束を贈られた非営利団体などに対してLoopach基金を通して寄附が行われます。同社は、Loopachの加盟店から年会費やLoopachのタグをスキャンする端末費用などをもらっています。Loopachを購入しアプリを使っているユーザーも増えてきており、Loopachを使った買い物でポイントが貯まる加盟店が100店舗ほど(2023年8月時点)です。なお、エコバッグ自体の生産・販売は協業パートナーの「ヤギ」が担っています。

MILKBOTTLEのサービス

同社にお話を伺ったところ、Loopachのサービスを立ち上げたきっかけは、レジ袋の有料化にあるそうです。

「レジ袋有料化に伴いエコバッグの製作や施策に関連する相談が多く寄せられましたが、『大量に作ってはそもそもサステナブルではないのでは?』と疑問に思いました。大量生産ではなく、消費者と加盟店が共創し、普段の消費行動の中で社会のためになるアクションを起こしてもらうことで、『本当の意味でのエコバッグ』を作りたいというのが、Loopachを立ち上げたきっかけです」(MILKBOTTLE SHAKERS)

■Loopach■

https://loopach.com/

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2024年3月18日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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inquiry01@jim.jp

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