書いてあること

  • 主な読者:古物取扱業者、低コストで新規事業を始めたい経営者
  • 課題:中古車ビジネスが気になるが、市場動向や新規参入のポイントが分からない
  • 解決策:今、中古車を最も購入しているのは20、30歳代の若者。個人間取引のサポートなど、若者に支持されやすい分野への参入を検討する

1 「若者の車離れ」は時代遅れ!?

「若者の車離れ」がいわれて久しいですが、

中古車市場に関しては若者が市場をけん引している

ことをご存じでしょうか。「中古車購入実態調査2021」リクルート調べには、

  • 中古車市場で購入台数が最も多いのは20歳代(72.5万台、1万人当たり496.6台)
  • 購入単価が最も高いのは30歳代(181.4万円)で、次いで20歳代(162.9万円)
  • 買い替えまでの期間が最も短いのは20歳代(平均3.9年)

といったデータが示されています。また、中古車市場でも次々と新しい動きが出ており、若者を含め、消費者の新たなニーズを取り込もうとしています。

  • 個人間取引をサポートする事業の広がり
  • 中古車のバリューアップや事故車販売など「新市場」の開拓
  • AI査定など中古車取引の利便性を高める新サービスの提供

この記事では、若者が支持する中古車市場の新しい潮流を紹介します。

2 個人間取引をサポートする事業の広がり

1)出品の全作業をコンシェルジュが代行

アラカン(愛知県名古屋市)は、中古車の出品作業をコンシェルジュが代行する個人間取引サービス「カババ」を運営しています。中古車を売りたいユーザーがウェブサイト上で車の情報を登録すると、コンシェルジュがユーザーの自宅へ行き、車の写真撮影や売値決めなどの出品作業を代行する仕組みです。購入希望者からの質問への回答も同社が代行します。

また、同社では、特定の車種や仕様にこだわった中古車を購入したいユーザーと、その中古車を売りたいユーザーをマッチングするサービス「カババWanted」も手掛けています。

2)中古車販売業者が個人間取引のサポート事業を展開

「Gulliver」のブランドで中古車販売事業を手掛けるIDOM(東京都千代田区)は、中古車を売りたい出品者と購入者をマッチングさせる「Gulliverフリマ」を運営しています。このサービスでは、ユーザーが中古車を取引する際に、Gulliverフリマがサポートを行う「仲介取引」を選ぶことができます。仲介を必要としない「直接取引」も可能です。

中古車を出品する際は、Gulliverフリマのアプリで、車検証に付いているQRコードを読み込むと車両の情報が簡単に入力できたり、出品価格の参考となる相場価格が提示されたりするなど、出品が手軽にできるだけでなく、購入時にも、ガリバーの店舗以外での引き渡しが可能など、出品者と購入者の双方に負担がかかりにくい仕組みになっています。

3)新車の正規ディーラーも参入

トヨタ車の正規ディーラーである横浜トヨペット(神奈川県横浜市)も、中古車の個人間取引サービス「mobilico」を運営しています。同社は出品されている車両の定期点検を行っており、車両の整備履歴を確認することができるのが特徴です。また、車両購入後の故障が不安なユーザーに対しては、修理保証のオプションも案内しています。

取引は匿名で、入金などの事務手続きは同社が行っています。

3 中古車のバリューアップや事故車販売など「新市場」の開拓

1)顧客の希望に応じた車種をコーティングなど付加価値を付けて販売

カーコーティング施工業を手掛けるアドヴァンス(徳島県徳島市)は、高級車を取り扱う中古車販売に参入しました。1台1000万円前後の高級車が対象で、顧客の予算や希望に応じた車種を、オークションや業者間のネットワークを利用して仕入れます。仕入れた後にはボディーの表面を研磨して新車並みの輝きに復活させるとともに、コーティングや保護フィルムなどを貼った上で顧客に納車します。

2)中古の高級輸入車を独自にカスタマイズして販売

欧州の中古車をメインに取り扱うオンザスリー(大阪府大阪市)は、取り扱う車に「チープアップ」という独自のカスタマイズをして販売する店舗「ゼロカートラブル」を運営しています。日本に輸入される欧州車は高級なイメージがありますが、例えば、アルミホイールをあえて質素なスチールホイールに取り換える、キャンプ用品などを積むためのキャリアを取り付ける、ステッカーを車体に貼るなどのカスタマイズを施すことで、より気軽に高級車を楽しんでもらうことをコンセプトにしています。

3)保険会社などが引き取った事故車などをオークションで販売

SOMPOホールディングス(東京都新宿区)は、子会社のSOMPOオークスを通じて、自動車保険の加入者が事故を起こした際などに引き取った事故車両を、リユース、リサイクル事業者に売却するBtoBオークションを手掛けています。

これまでの自動車オークションは、運営事業者ごとに独立しており、1台の車両に入札するバイヤーの数に限りがありました。これを解決するため、同社では、複数の自動車オークションに同時出品ができる案件管理システム「AUX Board」(オークスボード)を開発しました。これにより、車両1台に対して、より多くの購入希望者の目に留まる機会が増え、高額での売却や取引の円滑化が期待されています。

4)買い取りが難しい中古車の売却を支援

求人情報サイトや住宅リフォームサイトなどを展開するじげん(東京都港区)は、中古車買い取り店や輸出事業者特化型の買い取り一括査定メディアの「セルトレ」を運営しています。一般的に買い取りが難しいとされている水没車、事故車、走行距離が10万キロ以上の車でも、査定・買い取りが可能としています。

中古車の買い取りを依頼したいユーザーが、ウェブサイト上で車種や走行距離などの情報を入力すると、独自のフィルタリング機能を用いて、「国内小売向け」「海外輸出向け」「廃車」の自動判定を行い、買い取りが可能な中古車の買い取り会社や輸出事業者を紹介する仕組みとなっています。

4 AI査定など中古車取引の利便性を高める新サービスの提供

1)AI画像認識を使った中古車の簡易査定

AIによる画像認識を使ったサービスを手掛けるエーエヌラボ(東京都渋谷区)は、中古車販売事業者向けの簡易査定サービス「かいとりロボ@車」を手掛けています。

このサービスは、店舗の入り口にあらかじめカメラを設置しておき、店舗の駐車場に進入してきた車をカメラが読み込むことで、その車を買い取りした場合の想定金額や似ている車を提示する仕組みです。これにより、買い取り担当者の知識に依存しない査定ができるだけでなく、顧客が車を買い替える際の提案がより手早くできるようになります。

2)「非対面WEBローンシステム」で購入プロセスの効率化

中古車情報サイト「カーセンサー」などを手掛けるリクルート(東京都千代田区)は、アルファ・ゴリラ(兵庫県神戸市)が開発し、リクルートが中古車販売店向けに提供している「インスタントLIVE」(販売店と顧客がオンラインで相談をしたり、商談情報を管理したりするシステム)と連携した「非対面WEBローンシステム」を提供しています。

中古車を購入する際のオートローンの審査申し込み、審査結果確認、契約締結までをオンラインでできるので、顧客の契約書記入・なつ印のための来店が不要になるだけでなく、店舗側の業務効率化にもつながります。

5 中古車に関するデータ

1)中古車登録台数について

日本自動車販売協会連合会「中古車年別登録台数」によると、中古車登録台数の推移は次の通りです。

中古車登録台数の推移

2021年度の普通乗用車と小型乗用車の合計台数は前年度比5.8%減の316万9492台で、2019年度以来の前年度割れとなっています。その背景には、中古車需要が高まる一方で、半導体や部品不足により新車の販売が停滞し、中古車流通が減ったことが挙げられます。

2)軽乗用車の中古車販売台数について

全国軽自動車協会連合会「軽四輪車 中古車販売台数の年別推移」によると、軽四輪車のうち、軽乗用車の中古車販売台数の年別推移は次の通りです。

軽乗用車の中古車販売台数の年別推移

3)中古車の購入台数と市場規模について

「中古車購入実態調査2021」リクルート調べによると、中古車の購入台数、市場規模は次の通りです。

中古車の購入台数、市場規模(推計値)

4)中古車の買い替えまでの期間について

「中古車購入実態調査2021」リクルート調べによると、中古車の買い替えまでの期間(年齢別)は次の通りです。

中古車の買い替えまでの期間(年齢別)

以上(2022年9月)

pj50518
画像:kebox-Adobe Stock

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です