書いてあること

  • 主な読者:コインランドリーの開業を検討している人
  • 課題:業界の動向、法規制、開業にかかる費用が分からない
  • 解決策:開業にかかる費用を洗い出し、売上高などを予測できるようにする

1 コインランドリー業界の動向

1)コインランドリー市場を取り巻く動き

まずは、コインランドリー市場を取り巻く動きについてPEST分析を使って整理してみましょう。

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かつて、コインランドリーは1人暮らしで自宅に洗濯機がない場合や、出張先や旅行先で洗濯をしたい場合など、一時的な用途で利用されるイメージが強いものでした。また、銭湯に併設されている場合が多く、「薄暗くジメジメしているため入りにくい」というイメージがありました。

今ではコインランドリーのイメージが変わり、内装が明るく入りやすい店舗が増えたことや、「共働きで帰りが遅く、洗濯の時間が取れない」「家事の時短を図りたい」ファミリー層や共働きの世帯が利用するようになっています。

また、カフェやコンビニが併設され、洗濯や乾燥を待っている間も時間を有効に使うことができるようになったことや、布団などの大きい洗濯物専用の洗濯機、IoT化によって店内で待たなくても外から洗濯・乾燥にかかる時間が分かる洗濯機が登場し、より利便性が高まっているのも利用者が増加している背景といえます。

2)コインランドリーの市場規模について

業務用洗濯機の販売などを手掛けるアクア(東京都中央区)によると、日本の洗濯労働市場は約5.2兆円と推計され、うちコインランドリーは約1000億円(全体の約2%)を占めています。施設数も増加傾向にあり、2022年は2万4500店舗に達すると推計されています。

3)消費者ニーズについて

一般的に、コインランドリーの利用目的として次のようなものが挙げられます。

  • 布団や毛布など、家庭用洗濯機で洗えない大きい洗濯物を洗える
  • 数日分の洗濯物を短時間でまとめて洗濯・乾燥ができる
  • クリーニング店に依頼するよりも費用が安く、早く仕上がる
  • 雨天のときに乾燥機を使うことで生乾き臭が気にならなくなる
  • 除菌ができる洗濯機や高温の乾燥機を使うことでダニや花粉を除去し、アレルギー対策につながる

技術の発展によってスニーカー、布団、ペット用品、ウール、石などの飾りが付いた衣服など、自宅で洗濯が難しいものを洗うことができる洗濯機も登場しています。

2 コインランドリーの最新技術・店舗の事例

1)異業種との共同店舗にする

カフェやコンビニなど異業種の店舗を併設し、利用客が洗濯・乾燥中の待ち時間を有効活用できるようにしているコインランドリーがあります。

例えば、ファミリーマートが手掛ける「ファミマランドリー」では、利用客が待ち時間にイートインでくつろぐことができます。また、ファミリーマートの駐車場を利用できるので、カーテンや毛布などの大きな洗濯物や大量の洗濯物を車で持ち込む場合などに便利です。

コンビニ以外では、ガソリンスタンドとコインランドリーの併設、古着屋とコインランドリーを併設するなどの事例があります。

2)IoT・キャッシュレス化に対応する

かつてのコインランドリーは、次のように利用者にとって不便な側面がありました。

  • 紙幣が使えず硬貨がなければ洗濯・乾燥機を利用できない
  • 直接コインランドリーに行かないと、空き状態が分からない
  • 洗濯物の取り違えや盗難などを防止するために洗濯・乾燥が終わるまで店内で待たないといけない

こうした問題に対応すべく、IoT・キャッシュレス化を進めているコインランドリー業者もあります。

例えば、山本製作所(広島県尾道市)が手掛ける洗濯乾燥機システム「Smart Laundry」では、専用のスマートフォンアプリを使うことで、コインランドリーの空き状態や洗濯・乾燥時間の確認、キャッシュレス決済、領収書の発行などができます。また、洗濯機のドアロックや、窓を曇りガラスの状態にして、どのような衣類を洗っているのか外から見えなくできる機能もあるため、防犯面でも便利です。

3)布団を短い時間で洗濯したい利用客に対応する

前述の通り、もともとコインランドリーには「家庭用洗濯機で洗えない布団などを洗える」という特性がありますが、コロナ禍で衛生意識が高まる中、こうした布団丸洗いのニーズへの対応により注力しているコインランドリー業者もあります。

例えば、TOSEI(東京都品川区)は、敷布団専用の乾燥・リフレッシャー「FRDG-150C」を2022年夏ごろに発売するとしています。これは高温スチーム、高温乾燥により敷布団を除菌して花粉やダニなどによるアレルギー発症のリスクを抑えつつ、最短15分で持ち帰り可能にする、というものです。

4)ぺット用品を洗濯したい利用客に注目する

ペットの洋服や毛布などのペット用品は、自宅での洗濯が難しかったり、通常のコインランドリーでは衛生上の観点から洗濯が禁止されていたりするケースがあります。こうしたペット用品の洗濯に特化したコインランドリーもあります。

例えば、ハピネスが手掛ける「ワンダフロUSA24」(東京都昭島市)では、ペット用品専用の洗濯・乾燥機があります。ダニの除去剤やペット用品に付着した毛や固形物を取り除く特殊構造ドラムを備えており、ペット用品を清潔に洗うための工夫がされています。

5)環境に配慮した店舗にする

環境に優しい洗剤を使用し、利用者にアピールしているコインランドリーもあります。

例えば、勝川ランドリー(愛知県春日井市)が手掛ける「森と海をまもるコインランドリー」では、「海をまもる洗剤」を使用しています。この洗剤は、植物由来の原料で肌に優しい、油を細かくして分散させる技術により、洗濯槽などを詰まりにくくする機能があり、悪臭の原因を断つ効果や浄化槽・処理場への負担を少なくし、川や海への環境負荷を軽減する効果があります。

6)災害発生時に避難拠点として活用できるようにする

災害発生時に緊急の避難場所として活用できるコインランドリーもあります。

例えば、ジーアイビー(愛知県名古屋市)が手掛けるコインランドリーでは、LPガスを貯槽できるLPガスタンクやポータブル発電機への接続が可能な設備を備えています。同社は2022年1月に愛知県尾張旭市と「災害時等における資機材等の提供に関する協定」を締結しており、災害時には炊き出しセット(ガスコンロ、鍋)や簡易発電機を貸し出し、防災活動を支援するとしています。

3 新規開業・運営に当たっての留意点

1)新規開業には「コインオペレーションクリーニング営業施設開設届」が必要

コインランドリーはクリーニング業法の規制を受ける施設ではありませんが、不特定多数の利用者が共同で洗濯・乾燥機を利用することから、衛生管理に関して各地方自治体で指導要綱が定められています。

開業に関する相談窓口は、管轄の保健所です。また、開業の際は、「コインオペレーションクリーニング営業施設開設届」を保健所に届け出る必要があります。

2)開業する地域の需要をあらかじめ見極める

開業に当たって、利用客のどのようなニーズがあるかを事前に見極めることが欠かせません。例えば、ファミリー層が多い地域であれば大量の洗濯物を一度で洗える、布団などの大きい洗濯物が洗える大型の洗濯・乾燥機が必要ですし、単身世帯が多い地域であれば、小型の洗濯・乾燥機を多く設置して回転率を上げるといった工夫が必要です。

また、ファミリー層の需要を見込むのであれば、大量の洗濯物や大きい洗濯物を車で持ち込むことが想定されるため、視認性が高く、駐車がしやすい立地を選ぶのも重要です。

3)24時間営業にする場合はコストに注意する

コインランドリーの場合、スタッフが常駐しなくても無人で運営できるという特性上、24時間営業にしている店舗が多いです。とはいえ、24時間営業にする場合、洗濯・乾燥機や照明機材などを常に稼働させることになるため、コストがかさみます。

開業予定地が繁華街の周辺や単身世帯が多い地域であれば、仕事帰りの夜から深夜帯にかけて利用する需要が見込め、24時間営業にするメリットがあります。逆にこうした利用客の集客が見込めない場合、コインランドリーの稼働率が高い時間(一般的には、朝と夕方の時間帯とされています)などを考慮し、営業時間を見直す必要があります。

4)無人で管理することのデメリットを解消する

利用者からの「洗濯機の操作方法が分からない」、「機械が故障して動かない」などの問い合わせ対応や、防犯カメラを設置して、両替機・洗濯物の盗難対策をするなど、無人で店舗を管理することのデメリットを解消する必要があります。

参考として、全国コインランドリー管理業協会では、利用者が安心して店舗を利用するための運営基準として、定期的な清掃をはじめ、店内への監視カメラの設置、洗剤・柔軟剤の成分表示、クレーム・トラブルに対する緊急連絡先の表示などを挙げています。

■全国コインランドリー管理業協会■
https://clma.jp/

5)店舗内の衛生管理には特に注意する

コインランドリーは、不特定多数の人間が出入りするため、特に小規模の店舗を開業する場合、新型コロナウイルス感染症などの感染防止対策に細心の注意を払う必要があります。コインランドリーに限った話ではありませんが、次のような対策が欠かせません。

  • 店舗の入り口に消毒液を設置する
  • ランドリーの取っ手、入り口ドアノブ、テーブル・椅子などを定期的に消毒する
  • 入り口以外にも開閉できる窓を設置し、定期的に換気を実施する
  • 「店内ではマスクをご着用ください」など利用客向けの注意書きを掲示する
  • 雑誌など不特定多数の人間が触れるものは置かない

4 開業シミュレーション

1)前提条件

ここでは、コインランドリー業を全国展開しているTOSEIのウェブサイトなどを基に、ビル、もしくはマンションの1階を借りて15坪程度の小規模店を運営する想定で前提条件を設定します。洗濯・乾燥機の数は7台(リース契約)とします。

1.売上高
年間の売上高は604万8000円とします。算出式は次の通りです。

客単価1000円×7台×1日24時間×月30日稼働×12カ月×稼働率10%=604万8000円

2.原価率
原価率は年間売上高の40%とします。内訳は水道光熱費、洗剤などの消耗品の仕入れ費用です。

3.営業費用
店舗の清掃などにかかる人件費は年間36万円とします。賃借料は、年間216万円とします。洗濯・乾燥機の保守費用は、年1回の定期メンテナンスを想定し、年間12万円とします。

4.施設整備・設備整備費用
店舗は15坪の小型店舗を想定し、洗濯・乾燥機は7台で1600万円、看板、電気、給排水などの内装工事費用は700万円とします。

開業費は、開業に当たっての立地調査や広告宣伝費などを想定し100万円とします。

その他の諸条件は次の通りです。

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2)収支シミュレーション

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以上(2022年4月)

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画像:tongpatong-Adobe Stock

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