書いてあること
- 主な読者:話題の5Gについて、ポイントを知りたい経営者
- 課題:5Gの説明は専門用語が多く、分かりにくいものが多い
- 解決策:専門用語を使わない5Gの基本を素早く理解する
5Gとは「5th Generation」の略で、「第5世代移動通信システム」として大きな注目を集めています。本稿は、必ず押さえておきたい5Gの基本をまとめています。まずは、タイトル1~5をお読みください。15分で十分にお読みいただける文章量です。
1 5Gの通信速度は20倍
5Gの通信速度は4Gの20倍です。これにより、大きな容量のデータをより短時間で送れるようになります。例えば、映画やドラマといったコンテンツだけではなく、監視カメラやドライブレコーダー、遠隔地にいる取引先とのウェブ会議の映像など、さまざまなシーンで高品質な映像を届けることが可能になります。
2 5Gの同時接続数は10倍
5G用の基地局と従来の4G用の基地局が同時に接続できる端末数を比較すると、5Gは4Gの10倍です。これにより、IoTの普及によって通信機能を備える小型センサーなどが大量にインターネットに接続されるようになっても、基地局を増設することなく対応できる可能性があります。
3 5Gの遅延は10分の1
5Gの遅延は4Gの10分の1です。これにより、よりリアルタイムに近い動きや反応が実現します。例えば、自動車を遠隔から制御する自動運転に5Gを使ったとき、リアルタイムにブレーキを踏んだときとほぼ同じタイミングでブレーキが踏まれることになります。わずかな遅れが問題になりかねない遠隔医療の分野でも、5Gの低遅延という特性に期待が集まっています。
4 5Gによってビジネスはどう変わる?
特筆すべきはIoTの対象領域の拡大でしょう。自動運転や遠隔医療、警備・監視といった代表的なニーズに加え、電気の使用量などを可視化するスマートメーター、戸建て住宅などの防犯サービスを提供するホームセキュリティー、さらには工場や建設現場の安全管理、労働環境維持などの目的でも、通信機器を使ったビジネスが模索されています。
例えば、メンテナンス業の場合、現在は遠隔の顧客先まで足を運び、故障した機器などを点検、修理します。5Gを業務に利用した場合、故障した機器の状況を高品質な映像で詳細に確認できるようになります。機器の稼働状況を監視するセンサーを事前に設置しておけば、故障の原因を早期に特定できるかもしれません。もし、部品交換で済む故障だと分かれば、顧客先への交通費や移動時間を削減できる他、即時対応により顧客満足度も高められます。
同様に、在宅介護サービス業の場合、現在は利用者宅を一軒ずつ訪問し、健康状態を確認しています。5Gを業務に利用した場合、ウェブ会議システムの仕組みを使って必要なタイミングで利用者と対面で会話できるようになります。ウエアラブル端末を使えば心拍数などをほぼリアルタイムに計測できるので、異変の検知にも役立ちます。こうした情報を医療機関と連携しておけば、病院搬送後に迅速に治療を始めることも可能です。
5 自社の敷地限定で5Gが使える「ローカル5G」
5Gを利用できる地域は限られます。NTTドコモやKDDIなどの事業者が提供する5Gを使った通信サービスは、日本の全ての地域をカバーするわけではないからです。そこで登場するのがローカル5Gです。
ローカル5Gとは、特定の地域やエリア限定で5Gを利用できるようにする通信サービスで、NTTドコモなどの事業者が提供する5Gの通信サービスを使いません。自社が管理する工場や倉庫、建設現場、商業施設などの特定エリアに専用の基地局を設置し、プライベートな5G通信サービス網を構築します。これにより、「電波が届きにくい」「セキュリティーが不安」「震災などによる急激な通信機器の利用増加」などといった課題を解消します。ローカル5Gはこれから本格化が見込まれるサービスであり、注目したいところです。
6 5Gの関連用語:ご興味があればお読みください
1)bps(ビーピーエス)
インターネットやスマートフォンなどの通信回線の速度を表す単位です。「bits per second」の略で、1秒間に何ビットのデータを送れるのかを示します。1秒間に1ビットのデータを送信するなら「1bps」、1秒間に1000ビットのデータを送信するなら「1000bps」または「1kbps」と表されます。数値が大きいほど「高速」です。
一般的に、1000kbpsは「1Mbps」、1000Mbpsは「1Gbps」です。5Gの場合、通信速度は最大20Gbpsです。ちなみに、4Gの通信速度は最大1Gbpsです。
2)IoT(アイオーティー)
「Internet of Things」の略で、あらゆるものがインターネットに接続するという考えです。「モノのインターネット」などと呼ばれています。
PCやスマートフォンなどといった通信機器以外に、家電、製造機器、自動車、重機などもインターネットに接続し、さまざまなデータをやり取りできるようになります。例えば、自動車に最新の渋滞情報を知らせたり、重機で使用するモーターやファンベルトの摩耗状況を確認したりと、これまで分からなかった情報を手軽に入手できるようになります。
3)ms(ミリセカンド、ミリセック)
「millisecond」の略で、時間を表す単位です。1msは1000分の1秒を表し、「1ミリ秒」などとも表されます。
5Gなどの通信規格では、遅延の長さを表すときに主に使われます。送ったデータが届くまで、もしくは届いて戻ってくるまでの時間が短いほど低遅延といえます。5Gの場合、遅延は1msといわれています。
4)周波数帯(しゅうはすうたい)
電波の種類を区別するときに使われ、「バンド」とも呼ばれます。電波は波長ごとに種類が異なり、スマートフォンや携帯電話などで使われる通信規格は、そのうちの一部が割り当てられています。到達距離が長い、建物などの障害物を回り込んで届くなど、種類に応じて電波特性は異なります。5Gは新たに割り当てられた電波を使用しています。
5)基地局(きちきょく)
スマートフォンなどからの電波を受信する専用施設です。スマートフォンで電話をかけたとき、最寄りの基地局が電波を受信し、交換局を経由するなどして相手の電話につながります。
このときの電波の橋渡し役を担います。鉄塔の形の基地局から、ビルやマンションの屋上に設置される基地局まで、さまざまな種類があります。
1つの基地局で一度に接続できる通信機器やデータの容量には制限があります。5Gはこうした制限を解消する特徴を持っています。
以上(2020年6月)
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画像:日本情報マート