書いてあること
- 主な読者:地域商社との取引がある、あるいは取引開始を検討中の経営者
- 課題:地域商社との取引を、成果が上がるものにしたい
- 解決策:商品開発や販路開拓など、自社の取引目的に強みを持っている地域商社と協働する
1 増加を続ける地域商社との取引で成果を上げる!
地域商社とは、
地域密着の存在で、地域の事業者の活動をサポートしつつ、地域の商品(特産品等)を全国や海外に売り込み、地域や地域資源の価値を高めていく組織
です。日本商工会議所の調査では、2021年に84社となりました。
地域の特産品に関わっている経営者や、地域の発展に寄与したい経営者にとって、地域商社は有力な取引先となります。この記事では、取引で成果を上げるために、自社の目的に強みを持っている地域商社選びの参考になるよう、地域商社を事業領域や設立母体などで分類します。
なお、以下のコンテンツでは、地域の発展に貢献している地域商社の事例を紹介しますので、併せてご一読ください。
2 地域商社の多様な事業領域と設立母体
地域商社の業務内容と事業領域は、それぞれおおむね6つに分類することができます。
地域商社は同じような業務内容であっても、農林水産業、食品加工・販売業、観光事業など、得意とする業種が異なります。また、それぞれの地域商社が持っているノウハウやコネクションも異なります。地域商社と取引をする場合は、その地域商社の過去の実績を調べて、強みとしている業種や業務内容を押さえましょう。
また、地域商社の強みを知る上で、設立母体を把握しておくこともポイントになります。設立母体には、自治体や商工会議所、第3セクター、地域金融機関などがあり、複数の団体が共同出資しているケースもあります。
一般的に、設立母体に自治体が関わっている場合は、地域課題の発見や地域連携の拡大に有利といえます。自治体が中心となったアンテナショップや催事場での商品展開により、大都市圏などへ販路を開拓する機会を得られる可能性もあるでしょう。
また、地域金融機関や商工会議所が関わっている場合は、ビジネスマッチングのノウハウやコネクションが豊富だと考えられます。この他、DMO(観光地域づくり法人)は、観光客をターゲットにした商品開発を含めた観光事業に、業界団体や組合・個別事業者は、それぞれ従事する業種に特化した強みを持っているといえるでしょう。
3 地域商社の増加と設立母体の多様化の背景
1)政府による地方自治体への支援
政府は2014年からの「まち・ひと・しごと創生総合戦略」、2022年からの「デジタル田園都市国家構想」に基づき、自治体による地域商社の設立・拡大を支援しています。
2022年以降は、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局と、内閣府地方創生推進事務局が地域商社の推進を担当しています。地域商社事業の設立・拡大や地域商社が活用する先導的な施設整備に取り組む自治体に対して、「デジタル田園都市国家構想交付金」を交付するなどして支援しています。
2)法改正で地域金融機関による設立が加速
2017年4月の銀行法改正により、銀行は金融庁からの認可取得を条件として、地域商社を含む「銀行業の高度化または利用者利便の向上に資する業務を営む会社」(銀行業高度化等会社)に対して、100%出資(従来は5%まで)することが可能となりました。
2019年10月には、金融庁が「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」を改正し、地域商社が銀行業高度化等会社であることを明確化するとともに、地域商社に出資する際の留意点(在庫の保有・製造・商品加工に携わることの制限など)を追記しました。また、銀行法で規定している内閣府令の改正により、投資専門子会社を通じた地域商社への議決権保有制限を40%未満にまで緩和(2021年11月に100%まで緩和)しました。
さらに、2021年11月の銀行法改正により、銀行が出資する地域商社も金融庁の認可を得れば、在庫の保有・製造・加工に携わることが可能になりました。また、信用金庫なども、銀行法の改正に準じる形での法改正が行われました。このため、2022年から信用金庫による地域商社の設立も始まっています。
以上(2023年8月更新)
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画像:pixabay