書いてあること

  • 主な読者:害虫・害獣防除サービス業界への参入を検討する経営者
  • 課題:関連する法律や業界団体の取り組みなど、業界の動きが分からない
  • 解決策:業界の概要とともに、防除などの取り組み事例にも目を向ける

1 害虫・害獣防除サービス業界の現状

1)害虫・害獣防除サービスとは

害虫・害獣防除サービスとは、建築物の衛生環境を守るために、ゴキブリ・シロアリなどの害虫やネズミなどの害獣の駆除および防除を行う業者で、ペストコントロール業者ともいわれます。

ペストコントロール業者に関する公的な統計は把握されていません。ペストコントロール業者の業界団体である日本ペストコントロール協会によると、2018年度末の所属会員数は875社となっています。なお、同協会は、近年、社会問題になっている特定外来生物であるヒアリや、26年ぶりに国内での発生が確認された豚コレラに関する調査および対策も行っています。

2)建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録

建築物の衛生的な環境を確保するため、建築物の環境衛生上の維持管理を行う事業者(ペストコントロール業者も含む)について、一定の物的・人的基準を満たしている事業者は、都道府県知事の登録を受けることができる制度(以下「事業登録制度」)(注)があります。ただし、事業登録制度の登録は義務ではなく、登録を受けない事業者が建築物の維持管理に関する業務を行うことについて、制限を加えるものではありません。

(注)事業登録制度とは「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に基づくもので、「建築物ねずみ昆虫等防除業」を含むビルメンテナンス業務8業種について、一定の要件を満たす事業者は都道府県知事の登録を受けることができる制度です。

事業登録制度を受けるために必要な物的・人的基準(ペストコントロール業者に係るもの)は次の通りです。

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3)外来生物法の影響

特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(通称「外来生物法」)は、特定外来生物(注1)による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展を目的とし、特定外来生物の飼育・栽培・保管・運搬・輸入などを原則的に禁止(注2)するものです。

また、特定外来生物による被害が既に生じている場合、または生じる恐れがあり、かつ必要であると判断された場合は、国や地方自治体、NPO団体などが特定外来生物の防除を行います。

同法の施行により、現在、アライグマ、カニクイアライグマ、アメリカミンクなどの特定外来生物が防除の対象となっていますが、防除に際して「広大な範囲に多数生息している」「防除に専門的な技術を要する」といった場合、国や地方自治体、NPO団体などだけでは対応が困難となるケースが想定されます。このような状況を勘案し、近年では、社会貢献活動の一環として、特定外来生物の防除を行っている企業も現れています。

(注1)海外起源の外来生物・植物であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、または及ぼす恐れがあるものの中から指定されます。生きているものに限られ、個体だけではなく、卵、種子、器官なども含まれます。

(注2)学術研究、展示、教育、生業の維持などの目的で行う場合には、主務大臣の許可を得ることで飼育などをすることができます。

4)業界団体の対応

近年の異常気象や交通網の発達により懸念されている各種の感染症の拡大被害防止や、台風や地震などの自然災害発生時における防疫活動を行うため、都道府県のペストコントロール協会は、感染症予防衛生隊を編成するなどの対策を取っています。

感染症予防衛生隊は、同協会に加入しているペストコントロール業者が協同で緊急時の感染症対策に対応するものです。鳥インフルエンザやデング熱などの何らかの感染症が発生した場合、感染症予防衛生隊は現場に急行し、現場施設の消毒や出入り車両の殺菌消毒などを24時間で行う体制を整えています。

■日本ペストコントロール協会■
https://www.pestcontrol.or.jp

2 防除などの取り組み事例

1)ベイト工法

シロアリ防除を専門に行っている新栄アリックスは、普通施工やMC(マイクロカプセル)施工の他にベイト工法を利用しています。ベイト工法とは、「シロアリの防除剤を混入した餌(ベイト剤)をシロアリに摂食させて、シロアリを巣ごと防除するシステム」であり、シロアリの習性を活かした防除方法として注目を集めています。

ベイト工法では、ペストコントロール業者が当該エリアのシロアリの生息状況や行動範囲を調査し、シロアリの通り道と推測される場所などに、「ステーション」と呼ばれる防除剤を混入した餌入りケースを土中に埋め込んで設置します。「ステーション」の中の防除剤入りの餌を食べたシロアリは餌を巣に運び、巣に残っている仲間にこの餌を与えます。このため、防除剤入りの餌は巣全体に行き渡り、シロアリを巣ごと防除することができます。

薬剤の散布に比べて、ベイト工法では、わずかな量の薬剤を「ステーション」の中に設置するだけでシロアリを防除することができます。このため、アレルギー体質の人や、薬剤に対する抵抗力が弱い子供やペットがいる家庭でも、安全にシロアリの防除を行うことが可能とされています。

2)薬剤による散布処理と予防

ゴキブリやネズミなどの害虫・害獣、有害鳥獣駆除、防除を手掛けるミヤコ消毒は、ダニ駆除、予防を行っています。ダニを駆除する際、床や畳の面上に散布処理し、その後、空間噴霧処理を行い、ダニ駆除を実施しています。

一方、同社によると、ダニを発生させないためには、高温多湿の環境を作らない、餌となるハウスダスト(ほこり)などをこまめに掃除して取り除くことなどが重要だとしています。

3)増加しているトコジラミに対する独自の駆除方法

トコジラミ(南京虫)は、訪日外国人の増加などを背景に、近年被害が急増しています。東京都福祉保健局「東京都におけるねずみ・衛生害虫等相談状況調査結果」によると、トコジラミの相談件数は、2017年は255件と、2007年からの10年間で、約4倍に増加しています。

ダスキンは、ドライアイスを噴射して駆除する「ダスキンターミニックス」で特許を取得し、サービスを提供しています。この方法は、専用の容器にドライアイスを噴射し、密封することで二酸化炭素によりトコジラミを駆除するため、熱処理などでダメージを与えたくない美術品や、人体に触れるために薬品が散布できない革製品などにも効果的です。

3 経営指標

日本政策金融公庫「小企業の経営指標2018」によると、害虫駆除業の経営指標は次の通りです。

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以上(2019年8月)

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画像:pixabay

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