書いてあること

  • 主な読者:福祉用具貸与の事業を手掛けたい経営者
  • 課題:需要や、参入に当たりハードルになること、規制が分からない
  • 解決策:課題の一つとして、å福祉用具貸与事業者は、福祉用具の手持ち在庫が必要なため、初期投資が比較的高額になる傾向がある。こうした場合、福祉用具レンタル卸を活用することで、手持ち在庫を持たず、管理や点検の手間も省くことができる

1 福祉用具貸与事業の概要

1)福祉用具貸与とは

福祉用具貸与とは、要介護の状態等になったときにも、その能力に応じて、できる限り居宅で自立した日常生活を行うことができるように、利用者の希望・状況・環境を踏まえて適切な福祉用具の選定の援助・取り付け・調整を行うサービスをいいます。

福祉用具貸与は「要支援」「要介護」によってそれぞれ次のように分類されます。事業者は同時に両方の指定を取得することも可能です。

  • 介護予防福祉用具貸与(要支援1~2)
  • 福祉用具貸与(要介護1~5)

介護保険制度を使って福祉用具のレンタルを検討する場合は、ケアマネジャーに相談することになります。福祉用具貸与の費用(レンタル料)は、福祉用具貸与事業者が自由に設定できます。ただし、介護保険の給付の対象になるためには、福祉用具の貸与がケアマネジャーの作成するケアプランに組み込まれていて、支給限度額の範囲内であることが必要です。

2)レンタル期間

福祉用具のレンタル期間は、利用者の状況や品目によって大きく異なります。例えば介護ベッドの場合、利用者の身体状況の変化により2~3カ月でレンタルを終了してしまうケースもあれば、2~3年という長い間レンタルが続くこともあります。

また、利用者の意向によってもレンタル期間は異なります。例えば、介護老人福祉施設などの施設に空きがないため、やむを得ず在宅介護を受けている状態にある利用者は、施設に空きが出たときにレンタルが終了します。一方、施設に空きがあるものの施設に入る意思がない利用者の場合、レンタル期間は長くなりがちといえます。

3)レンタル商品の仕入れ方法

福祉用具貸与事業者が介護ベッドなどのレンタル用品を調達する方法はさまざまです。介護ベッドなどの仕入れ先はメーカーあるいは卸売業者であり、比較的大規模な福祉用具貸与事業者はメーカーと取り引きしています。

また、介護ベッドなどの仕入れ方法には購入とレンタルの2つの方法がありますが、比較的大規模な福祉用具貸与事業者は購入によって調達することが多いようです。

4)福祉用具貸与の対象品目

福祉用具貸与の対象となる品目は、ベッド、車いす、つえなどさまざまです。福祉用具貸与の対象となる項目は次の通りです。

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2 介護保険制度の改正

1)利用者負担割合について

2018年4月に施行された「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(以下「改正介護保険法」)により、2018年8月以降、介護保険の利用者負担割合や、福祉用具貸与価格などが見直されました。

介護保険の利用者負担割合は、年金収入等が単身世帯で280万円未満(2人以上世帯は346万円未満)の場合は1割、280万円以上(2人以上世帯は346万円以上)の場合は2割、340万円以上(2人以上世帯は463万円以上)の場合は3割となりました。

2)福祉用具貸与価格について

現在の福祉用具貸与価格は、仕入価格、搬出入、保守点検などの経費の違いから、同じ商品を取り扱っていても福祉用具貸与事業者ごとに価格差があります。改正介護保険法により、適切な貸与価格を確保する観点から、厚生労働省が全国平均貸与価格および貸与価格の上限を公表しています。

また、福祉用具貸与事業者が福祉用具を貸与する際には、福祉用具の全国平均貸与価格と自社の貸与価格の両方を利用者に説明する必要があります。併せて、機能や価格帯の異なる複数の商品を提示する必要があります。

■厚生労働省「福祉用具」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html

3 福祉用具貸与事業の動向

1)福祉用具貸与の介護費の推移

国民健康保険中央会「介護費の推移」によると、福祉用具貸与事業者における介護費の推移は次の通りです。

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高齢者の増加により、福祉用具貸与事業者における介護費は増加を続けています。

2)福祉用具貸与の事業者数

厚生労働省「介護給付費等実態統計」によると、福祉用具貸与と介護予防福祉用具貸与サービス事業所数の推移は次の通りです。

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4 福祉用具貸与事業の動向

1)福祉用具レンタル卸

福祉用具貸与事業者は、福祉用具の保管および消毒のための設備や器材が必要で、事業運営には相応の広さの区画を必要とします。ただし、福祉用具の保管または消毒を他の事業者に行わせる場合にあっては、福祉用具の保管または消毒のために必要な設備または器材を有しないことができます(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(以下「基準」)第196条第1項)。

福祉用具貸与事業者は、福祉用具をメーカーから仕入れ、それを利用者に貸し出すことになるため、常にある程度の手持ち在庫を持たなければなりません。そのため、新規参入を図る事業者にとって、初期投資は比較的高額になる傾向があります。

そのような場合、福祉用具レンタル卸を活用すれば、利用者の利用期間終了後は福祉用具を返却すればよいため、手持ちの在庫を抱える必要はありません。福祉用具の在庫管理や使用後の消毒・点検などの手間も省くことができます。

福祉用具レンタル卸の大手としては、日本ケアサプライが挙げられます。同社のコア事業は、指定居宅介護事業者向けに福祉用具のレンタルおよび販売を行う「福祉用具サプライ事業」です。

■日本ケアサプライ■
https://www.caresupply.co.jp/

2)「福祉用具貸与計画」作成義務

福祉用具専門相談員は、利用者の希望、心身の状況およびその置かれている環境を踏まえ、指定福祉用具貸与の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した福祉用具貸与計画を作成しなければなりません(基準第199条の2第1項)。

以上(2020年6月)

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画像:pixabay

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