書いてあること
- 主な読者:天然甘味料の製造・販売を検討する経営者
- 課題:羅漢果糖に代わる天然甘味料には何があるのか分からない
- 解決策:代表的な天然甘味料の特徴や用途を把握する
1 羅漢果糖とは
羅漢果(らかんか)は桂林(中国広西チワン族自治区にある都市)が原産のウリ科の多年生つる草本で、果実は直径4~6センチメートルの濃緑の球形です。抽出されるエキスは砂糖の約50倍といわれる強い甘味を持ち、主成分はブドウ糖と果糖、甘味度の強い「トリテルペン配糖体」(モグロシド)です。
羅漢果の高純度エキスと天然甘味成分「エリスリトール」(後述)から作られた天然甘味料「ラカント」を開発・販売するサラヤのウェブサイトによると、羅漢果は基本的に桂林でしか栽培できず、中国政府が重点保護植物に指定しているため、日本では茶褐色の乾燥果実かエキスしか手に入らないといわれます。
同社のウェブサイトによると、同社の特許技術により生成される「高純度 羅漢果エキス」は、砂糖の約300倍の甘さを持ちながら、血糖値やインスリンの分泌に影響がなく、肥満予防や糖尿病患者の食事療法などに適しているとのことです。
2 羅漢果糖に代わる主な天然甘味料
1)ステビア抽出物
南米原産のキク科ステビアの葉を粉砕または水で抽出したもので、さらにそれを精製したものがステビオサイドまたはレバウディオサイドといわれる配糖体です。ステビオサイドは砂糖の約300倍、レバウディオサイドは砂糖の約450倍の甘さを持つといわれます。
ステビア工業会のウェブサイトによると、次のような特徴を持つといわれます。
- 高甘味度のためごく少ない使用量で済むことから実質的にノンカロリー
- アミノ酸と反応して黄色く変色する「褐変現象」が起こらない
- 非う触性で虫歯になりにくいv
- 加工適性に優れる。調理範囲の温度でも、またpHが2.5~9の範囲でも安定
- 糖類と比較して焼き菓子などに使用した際、吸湿しにくい
このような特徴から、ダイエット食品、清涼飲料水、菓子などに広く使われています。
2)甘草抽出物(カンゾウエキス、グリチルリチン、リコリス抽出物)
東京都福祉保健局「食品衛生の窓」によると、マメ科カンゾウや同属植物の根や根茎を粉砕または水で抽出したもので、さらにそれを精製したものがグリチルリチンです。甘さは砂糖の約200倍で、後引きの強い甘味と特有の風味を有しています。
一般的に、次のような特徴を持つといわれます。
- 高甘味度のためごく少ない使用量で済むことから実質的にノンカロリー
- 高い塩なれ効果(塩味を和らげる)を持つ
- 他の糖類や調味料と併用した場合、相乗効果でうま味を増強する
このような特徴から、しょうゆ、味噌、漬物、つくだ煮、清涼飲料水、魚肉ねり製品、氷菓、乳製品など広範囲に使われています。
また、カンゾウは生薬として古くから用いられており、かぜ薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮痛鎮痙薬、鎮咳去痰薬、健胃消化薬、止瀉整腸薬などの漢方薬に配合されています。
3)エリスリトール
メロンや梨などの果実、キノコ、ワイン、清酒、しょうゆ、味噌などの発酵食品に含まれている糖質で、糖アルコールに分類される甘味料で、ぶどう糖を原料として酵母を用いた発酵により生産されます。
甘さは砂糖の約75%で、後を引かないすっきりとした甘味が特徴です。溶解するときに熱を奪うため、冷涼感が得られます。
エリスリトールなどの糖質を販売する三菱ケミカルフーズのウェブサイトによると、次のような特徴を持つといわれます。
- 糖質の中で唯一、厚生省のエネルギ-評価法によりエネルギ-値が0キロカロリー/gと認められている
- アミノ酸と反応して黄色く変色する「褐変現象」が起こらない
- 非う触性で虫歯になりにくい
- 血糖値やインスリンの分泌に影響がなく、肥満予防や糖尿病患者の食事療法などに適している
- 最も緩下作用(おなかが緩くなる作用)を起こしにくい
このような特徴から、清涼飲料、卓上甘味料、健康食品などに使われています。
以上(2019年8月)
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画像:pixabay