書いてあること
- 主な読者:最新法令に対応し、運営上で無理のない会社規程のひな型が欲しい経営者、実務担当者
- 課題:法令改正へのキャッチアップが難しい。また、内規として運用してきたが法的に適切か判断が難しい
- 解決策:弁護士や社会保険労務士、公認会計士などの専門家が監修したひな型を利用する
1 携帯電話(スマートフォン)のルールを定めていますか?
現在、携帯電話は多くの人々の生活にとって不可欠なものとなっており、ビジネスシーンにおいても営業活動などに役立てられています。
従業員が業務上で利用する携帯電話の形態は「1.会社が所有する携帯電話を従業員に貸与する」「2.従業員個人が所有する携帯電話を業務用として利用し、業務に関する通話料を会社が負担する」の2つに大別されます。
「1.会社が所有する携帯電話を従業員に貸与する」場合、会社名義で契約するため、電話会社や契約プランによっては、基本利用料や、従業員間の通話料が割引される法人向けの特典などが受けられるメリットがあります。
また、「2.従業員個人が所有する携帯電話を業務用として利用し、業務に関する通話料を会社が負担する」場合、会社で携帯電話を用意する必要がなく、従業員は使い慣れた携帯電話を業務でも利用することができます。
いずれの形態にせよ、業務で利用する携帯電話について、利用・管理などのルールを定めておく必要があります。その根拠となるのが、携帯電話の利用管理規程です。
また、利用が拡大しているスマートフォンは、従来型の携帯電話に比べて、ウイルス感染などのリスクが高いなどの点に留意が必要です。スマートフォンのセキュリティー対策を講じる場合は、日本スマートフォンセキュリティ協会発行のガイドラインが参考になります。
以降では、携帯電話の利用管理規程のひな型について紹介します。
2 携帯電話の利用管理規程のひな型
以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
【携帯電話の利用管理規程のひな型】
第1条(目的)
本規程は、携帯電話およびスマートフォン(以下「携帯電話」)を効率的かつ安全に業務に利用するため、その適正な管理について定めることを目的とする。
第2条(適用)
本規程は、役員および従業員(以下「従業員等」)に適用されるものとする。
第3条(用語の定義)
本規程における各用語の定義は、次に定めるところによる。
1.携帯電話
業務上の連絡に用いる携帯電話とし、第2号の社用携帯電話と第3号の私用携帯電話のことをいう。
2.社用携帯電話
会社が契約し、従業員等に貸与する携帯電話をいう。
3.私用携帯電話
従業員等が個人的に所有する携帯電話であって、業務に利用する通話料を会社が負担するものをいう。
第4条(管理者)
携帯電話の利用・管理に関する事項は総務部門が掌握する。
第5条(利用対象者)
携帯電話の利用対象者は、次に該当する者とする。
1.顧客との電話連絡が業務上必要不可欠と会社が認めた従業員等。
2.電話連絡が業務上の重要な位置を占めると会社が認めた従業員等。
3.その他会社が特に認めた従業員等。
第6条(申請)
携帯電話の利用のために必要な申請は次の通りとする。
1.申請内容
新規利用、携帯電話の盗難・紛失、社用携帯電話の破損・返還。
2.申請者
携帯電話を利用する従業員等(以下「利用者」)が行うものとする。
3.申請方法等
所定の「申請用紙」(省略)に記入の上、部門長に提出する。部門長が申請内容を確認した後、部門長から総務部門に提出する。
4.提出時期
申請は、その事由が発生後、速やかに行うこととする。
第7条(審査)
1)総務部門は、利用者の部門長から提出された申請内容を審査する。
2)申請が妥当と認められる場合には、総務部門の長が携帯電話の利用を許可する。
第8条(遵守事項)
携帯電話の利用に当たっては、次の事項を遵守すること。
1.社用携帯電話の私用は厳禁とする。
2.自動車の運転中、病院内、航空機内での携帯電話の利用は厳禁とする。
3.電車、バス等公共の場所においては、状況に配慮して携帯電話を利用すること。
4.申請なく社用携帯電話の電話番号、機種、付加サービス等の変更をしないこと。
5.社用携帯電話を無断で他人に貸与しないこと。
第9条(社用携帯電話の利用状況の確認)
1)会社は必要に応じて、貸与した社用携帯電話の利用状況および通話記録を、加入電話会社に照会する。
2)前項において明らかに私用であると会社が認めた場合は、当該私用通話料金部分を利用者から徴収する。
第10条(私用携帯電話の利用状況の確認)
1)私用携帯電話の利用者は、業務利用部分の通話状況、通話料金を明確にした請求書を作成し、部門長、総務部門を経由して経理部門に届け出るものとする。
2)請求書には、加入電話会社より送付された、通話記録の明細書を添付しなければならない。
3)請求分は毎賃金計算期間の末日に締め切り、別途「賃金規程」(省略)に定める賃金支払日に支給する。
第11条(返還)
社用携帯電話を利用すべき事由がなくなった場合は、直ちに会社に返還しなければならない。
第12条(利用の中止)
本規程に反する携帯電話の利用が認められる場合、その他会社が利用の中止を必要と認めた場合には、利用者は携帯電話の利用を中止しなければならない。
第13条(賠償)
第9条および第10条並びに第11条について、不正や重大な過失が認められる場合は、会社は利用者に対して相当分の賠償を求めることがある。
第14条(罰則)
従業員等が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。
第15条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。
附則
本規程は、○年○月○日より実施する。
以上(2018年10月)
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画像:ESB Professional-shutterstock