書いてあること
- 主な読者:中小企業で多く採用されている「機関設計」について知りたい人
- 課題:自社がどのような機関設計を採用できるのか分からない
- 解決策:中小企業で多い機関設計は、シンプルな「株主総会+取締役」か、意思決定が早くけん制も効く「株主総会+取締役会+監査役」
1 機関設計とは
会社の「機関」とは、意思決定を行ったり、運営等が適切に行われているか監視したりするものです。具体的な機関には株主総会や取締役などがあり、機関が無ければ会社は適切に運営できません。まさに「体の器官」と同じです。
株式会社(以下「会社」)が設置できる機関は11種類で、その組み合わせを決めることが「機関設計」です。ただし、会社が自由に機関設計をできるわけではなく、会社法でルールが定められています。細かな取り決めは、次の2つのポイントで決まります。なお、
中小企業に多いのは、非公開会社と非大会社の組み合わせ
です。
1.非公開会社(株式譲渡制限会社)と公開会社
1つ目は、非公開会社と公開会社です。非公開会社とは、全ての株式について譲渡制限(株式の譲渡に会社の承認が必要)ある旨を定款に定めている会社です。これ以外の会社が公開会社となります。
2.大会社と非大会社
2つ目は、大会社と非大会社です。大会社とは、資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の会社です。これ以外の会社が非大会社です。会社が採用できる機関設計は2つのポイントの組み合わせで決まります。次章で確認してみましょう。
2 機関設計のパターン
機関設計のパターンは以下の通りです。「株主総会+取締役会+会計参与」を除く他のパターンでは、会計参与の設置は任意となります。
1)非公開会社で大会社の機関設計
非公開会社で大会社の機関設計のパターンは次の通りです。
- 株主総会+取締役+監査役+会計監査人
- 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
- 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
- 株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人
- 株主総会+執行役+取締役会+指名委員会等+会計監査人
2)非公開会社で非大会社の機関設計
非公開会社で非大会社の機関設計のパターンは次の通りです。
- 株主総会+取締役
- 株主総会+取締役+監査役
- 株主総会+取締役会+監査役
- 株主総会+取締役会+監査役会
- 株主総会+取締役会+会計参与
- 株主総会+取締役+監査役+会計監査人
- 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
- 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
- 株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人
- 株主総会+執行役+取締役会+指名委員会等+会計監査人
3)公開会社で大会社の機関設計
公開会社で大会社の機関設計のパターンは次の通りです。
- 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
- 株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人
- 株主総会+執行役+取締役会+指名委員会等+会計監査人
4)公開会社で非大会社の機関設計
公開会社で非大会社の機関設計のパターンは次の通りです。
- 株主総会+取締役会+監査役
- 株主総会+取締役会+監査役会
- 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
- 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人
- 株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人
- 株主総会+執行役+取締役会+指名委員会等+会計監査人
3 中小企業に多い機関設計のパターン
中小企業で多いのは、非公開会社と非大会社の組み合わせです。具体的な機関設計としては、
「株主総会+取締役」か「株主総会+取締役会+監査役」
を選択することが多いようです。
「株主総会+取締役」が選択されるのは、取締役が1人でも大丈夫なため、シンプルに会社が運営できるからです。
「株主総会+取締役会+監査役」が選択されるのは、株主総会の決議が必要な事項(多額の借財を実施する場合など)でも、取締役会で決められるというメリットがあるからです。また、3人以上の取締役による相互監督抑制機能、取締役の職務執行の監査を行う監査役を設置することで、対外的な信用力も向上します。
以上(2024年7月更新)
(監修 弁護士 八幡優里)
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画像:Mariko Mitsuda