書いてあること
- 主な読者:会社法に基づく株式会社の解散と清算の流れを把握したい人
- 課題:解散と清算の手続きは複雑で、難しそう
- 解決策:解散するだけでは法人格は消滅しない。解散後、残った資産や負債を処理する清算手続きが必要
1 解散と清算
株式会社(以下「会社」)にも始まりと終わりがあり、会社の始まりが設立だとすれば、終わりは解散と清算になります。設立と同様、解散と清算の手続きは会社法の定めに従う必要があります。
- 解散:法人格を消滅させる原因となる事実のこと。原則、会社が解散するだけでは法人格は消滅しない。清算の手続きが必要
- 清算:解散した会社の資産や負債の処理のための法的な手続きのこと。解散した会社が残った債務を全額支払うことができる場合は通常清算となり、解散した会社が債務超過で裁判所の監督のもと行われる清算の場合は特別清算となる
2 解散と清算の手続き
1)解散の理由の発生
会社は、理由なく解散することはできず、会社法で定められた次の理由が必要です。
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散の事由の発生
- 株主総会の特別決議
- 合併(合併によって消滅する会社の場合)
- 破産手続開始の決定
- 裁判所による解散命令・解散判決
- 休眠会社のみなし解散
以降では、3.株主総会の特別決議によって会社の解散と清算をする場合の手続きを紹介します。
2)株主総会の特別決議
会社は、株主総会を開催して、特別決議によって解散を決定します。
3)清算人の選任
清算人は、会社に必ず置かれる機関であり、清算手続きを遂行する役割を担います。清算人に就任するのは、通常、取締役であった者ですが、定款または株主総会の普通決議によって選任することもできます。
4)解散登記・清算人就任の登記
会社は、解散の日から2週間以内に、会社の本店所在地で解散登記をします。清算人についても、解散日から2週間以内に、本店所在地で清算人就任の登記をします。
5)財産目録・貸借対照表の作成
清算人は、就任後遅滞なく、会社の財産の現況を調査し、解散日現在の財産目録・貸借対照表を作成します。
清算人は、その後株主総会を開催して、作成した財産目録等・貸借対照表の承認を受けます。
6)債権者異議手続き
会社は、解散後遅滞なく、会社の債権者に対して、2カ月以上の期間を定めて、期間内に債権の申出を行うよう官報で公告し、かつ知れている債権者には個別に催告をします。
7)債権取り立て・財産換価処分・債務弁済
清算人は、会社を解散した際に未処理となっている契約の履行などの事務を終わらせ(現務の結了)、会社の債権を取り立てたり、財産を売却して換価したりするなどします。そして、前述した債権者異議手続きの期間後、全ての債権者に対して弁済を行って会社の債務を完済し、残余財産を確定させます。
8)清算事務年度の定時株主総会
清算人は、清算事務を行っている間、清算事務年度ごとに、貸借対照表、事務報告、附属明細書を作成します。清算事務年度とは、解散日の翌日から始まる各1年の期間のことです。例えば、2021年3月31日に解散した場合の清算事務年度は、2021年4月1日~2022年3月31日になります。
清算期間が長期化する場合、清算事務年度ごとに定時株主総会を開催します。清算人は、定時株主総会において、事務報告を行い、貸借対照表の承認を受けます。
9)残余財産の確定・分配
清算人は、7)の手続きで会社の債務を完済し、残余財産が確定した後、各株主の有する株式数に応じて残余財産を株主に分配します。
10)決算報告書の作成と株主総会の承認
会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、決算報告書を作成します。清算人は、株主総会を開催して、決算報告の承認を受けます。
株主総会による決算報告の承認によって、清算事務の全てが終わります(清算の結了)。
11)清算結了登記
会社は、清算が結了したときは、決算報告承認の日から2週間以内に、本店所在地で清算結了登記をします。
清算人は、この登記から10年間、清算会社の帳簿資料を保存します。
以上(2024年7月更新)
(監修 TMI総合法律事務所 弁護士 池田賢生)
(監修 TMI総合法律事務所 弁護士 梶原大暉)
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画像:Mariko Mitsuda