書いてあること
- 主な読者:減資の基本を知りたい人
- 課題:減資の方法の違いで手続きが変わるため、分かりにくい
- 解決策:方法により減資を決定する決議の種類などは異なるが、債権者異議手続きは必要
1 2つある減資の方法
株式会社(以下「会社」)は、資金調達の1つとして募集株式の発行等を行い、資本金の額を増加することがあります。その逆に、会社の業績が芳しくないなどの理由から、資本金の額を減少することもできます。これが「減資」です。
減資には次の2つの方法があります。
- 実質上の減資:事業縮小などで不要となった資本金の額を減少する。資本金を剰余金へ振り分けて株主に配当する
- 形式上の減資:赤字などを解消するために資本金で欠損を填補する。形式上、資本金の額を減少するだけで、株主に配当はしない
減資の基本的な流れは次の通りです。
- 株主総会の特別決議
- 債権者異議手続き
- 効力の発生
- 変更登記
以降では、減資の手続きの概要を紹介します。
2 減資の手続き
1)株主総会の特別決議
減資の際は、原則として株主総会の特別決議で次の内容を決定します。
- 減少する資本金の額
- 減少する資本金の額の全部または一部を準備金とするときは、その旨および準備金とする額
- 資本金の額の減少がその効力を生ずる日
減少する資本金の額は、資本金の額の減少がその効力を生ずる日の資本金の額を上回ることはできません。要するに、資本金が5000万円なら減少できるのは5000万円までで、資本金をマイナスにすることはできないということです。
なお、次の場合は、株主総会の特別決議によらずに資本金を減少することができます。
1.株式の発行と同時に資本金の額を減少させる場合に、効力発生日後の資本金の額が効力発生日前の資本金の額を下回らない場合(増資と減資を同時にする場合)
→取締役会設置会社では取締役会の決議、取締役会非設置会社では取締役の決定
2.減少する資本金の額が、定時株主総会の日における法務省令で定める欠損の額を超えない場合(定時株主総会で形式上の減資をする場合)
→株主総会の普通決議
2)債権者異議手続き
減資を決議した場合、会社は債権者に減資の内容などを知らせなければなりません。資本金の額が減少すれば、債権者が不利益を被る恐れがあるので、債権者が異議を述べる機会を設けるためです。
会社から債権者への通知方法は官報で公告し、かつ知れている債権者には個別に催告をする必要があります。ただし、定款の記載などにより、電子公告や日刊紙への掲載など法定の公告方法を定めている場合は、個別の催告は不要です。
公告・催告をする事項は、次の通りです。
- 資本金等の額の減少の内容
- 貸借対照表など計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
- 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
債権者が異議を述べることができる期間は、1カ月以上設けなければなりません。債権者が期間内に異議を述べなければ、減資を承認したものとみなすことができます。
また、債権者が異議を述べたときは、資本金の減少をしてもその債権者を害する恐れがない場合を除き、会社は弁済期を迎えた債務については弁済します。弁済期を迎えていない債務については相当の担保を提供するか、当該債権者に弁済を受けさせることを目的として、信託会社等に相当の財産を信託しなければなりません。
3)効力の発生
前述した株主総会の特別決議などで定めた日から減資の効力が発生します。ただし、債権者異議手続きが終了していない場合は、手続き終了時になります。
4)変更登記
会社は、資本金の額など変更すべき事項について変更登記をします。
3 資本金の額の減少の無効
資本金の額の減少の内容や、手続きに瑕疵(かし)がある場合、減資は無効となります。ただし、いったん効力が発生したものを無効にするのは大変で、一定のルールがあります。資本金の額の減少の無効を主張するためには会社を訴えなければなりません。訴えの提起は、資本金の額の減少の効力が生じた日から6カ月以内に限られます。また、訴えを提起できるのは株主、取締役、執行役、清算人、監査役、破産管財人、資本金の額の減少を承認しなかった債権者に限られます。
無効の主張が認められた場合、判決の効力は原告以外の第三者にも及びます。無効判決は、将来に向かって無効となります。
以上(2024年7月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)
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画像:Mariko Mitsuda