書いてあること

  • 主な読者:債権債務について相手とある程度の合意に至っている経営者
  • 課題:当事者だけでは不安なので、裁判所が関与する形で和解したい。裁判は避けたい
  • 解決策:即決和解で裁判所の関与の下で和解する。和解調書は判決と同様の効力がある

1 即決和解を利用する意義

即決和解とは、「裁判上の和解」の一種で、

当事者が民事上の争いについてある程度の合意がある場合に、裁判所へ申立てをして裁判上での和解を行う制度

です。訴訟の提起前に行われるので「裁判前の和解」とも呼ばれます。ちなみに、示談など裁判所が関与しないものを「裁判外の和解」といいます。

即決和解の場合、裁判所が作成する和解調書は「債務名義」として、判決などと同様の強い効力があります。債務名義とは、「強制執行」をする根拠となる文書であり、「債権債務の存在を公に認めるもの」です。強制執行とは、「判決等によって債務の履行が決まっているのに相手がそれに応じない場合、国家の強制力によって判決等で定められた内容を実現する」ことです。

これに対して、示談(=裁判外の和解)の場合、それだけで強制執行はできません。相手が、考えを変えて、任意に債務を履行しない場合、訴訟を提起する等して債務名義を取らなければなりません。即決和解の方が一段効力が強い、といえます。

即決和解のメリットとデメリットは次の通りです。

【即決和解のメリット】

  • 判決と同じ効力が認められる
  • 裁判所に支払う費用は低額で済む
  • 金銭請求に限られない

【即決和解のデメリット】

  • 当事者間で合意があることが必要
  • 和解条項(案)の作成や書類の提出、各種目録の作成などの手間がかかる
  • 申立てから和解期日指定まで平均1カ月程度を要する

メリットで紹介した「金銭請求に限られない」について補足をします。当事者の合意を債務名義にする方法の1つに、「強制執行受諾文言付きの公正証書を作成する」がありますが、この金銭債権に関する合意でしか使えません。これに対して、即決和解は金銭債権に限らず、建物の明渡しなどについても使うことができます。

2 即決和解手続の流れ

即決和解の流れは次の通りです。

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1)当事者間での事前の話し合い

即決和解を申し立てる前提は、「民事上の争いがあり、これを当事者間で話し合って、和解条件に折り合っていること」です。この条件を満たせば、債権者と債務者のどちらからでも申立てができます。

2)即決和解の申立書の提出

即決和解の申立ては、相手の住所か主たる営業所の所在地を管轄する簡易裁判所に対して行います。申立書には、紛争の内容を記載する他、合意に至った内容を和解条項(案)として添付します。その他の書類や、和解調書に添付するための目録(当事者目録や物件目録など)の提出が必要になることもあります。

3)和解期日までの準備

申立てがあると、裁判所において申立内容の審査を行う他、書類の追完を申立人に求めたり、和解条項の修正を依頼したりします。

その後、裁判所は当事者の希望を聞いて和解期日を指定します。その際、相手方が裁判所に出頭できる日は、申立人において確認することが求められます。

4)和解期日

和解期日では、当事者双方が和解条項について合意し、かつ、裁判所が相当と認めれば、和解が成立します。裁判所は「和解調書」を作成して当事者に交付します。

5)和解調書の効力

即決和解の手続により作成された和解調書は、確定判決と同一の効力を有します(債務名義になります)。従って、和解調書に基づいて強制執行が行えます。

6)費用

裁判所に納める費用(申立ての手数料)は、原則1件につき収入印紙2000円です。

その他、送付手数料として、郵便切手が必要になりますが、管轄裁判所や当事者の人数などによって納める金額が異なりますので、事前に裁判所に確認しましょう。

なお、東京簡易裁判所では、郵便切手645円(相手方1名につき(内訳:500円切手1枚,50円切手2枚,20円切手2枚,5円切手1枚)とされています。

7)速やかに即決和解を得たい場合

即決和解は、簡易裁判所でしか扱わない簡易裁判所の専属管轄となります。一般的には上記2)に記載した通り、相手の住所等を管轄する簡易裁判所に申し立てます。しかし、実務上、簡易裁判所の事件継続が多く、先の期日でなければ裁判期日が入らないこともあります(東京簡易裁判所などは、2~3カ月先になる場合もあります)。速やかに即決和解を得たい場合、相手方と協議して、別の簡易裁判所を探し、そこで即決和解をする管轄の合意を取って申立てをすれば、2~3週間で期日が入り、速やかに即決和解を得ることができます。

以上(2023年9月更新)
(監修 弁護士 田島直明)

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画像:Mariko Mitsuda

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