書いてあること

  • 主な読者:取引が開始された後は油断してしまい、きちんと債権管理をしていない経営者
  • 課題:請求業務が整備されておらず、未払いのチェック機能が弱い
  • 解決策:「請求、入金確認、催促」のサイクルを確実に回す。未入金の場合の対応に違和感を覚えたら、モードを変えて対応を検討する

1 皆さんの会社は「債権管理」をしていますか?

皆さんの会社では、取引を開始した後も定期的に取引先の経営状態をチェックしていますか。もし、取引開始時の与信情報から何もアップデートしていないとしたら、危険なことです。請求業務も経理担当者任せにしたままだと、ある日突然、「未払いが回収できません!」と報告を受けることになるかもしれません。その取引先が大口だと事態は深刻です。中小企業の場合、

一部の大口との取引で収益の多くを賄っていることが多く、そうした取引先に対する売掛金が未回収だと、自社の資金繰りに大きな影響を及ぼし、最悪の場合は資金ショートを起こしてしまうからです。

そうならないためにも、日ごろから「債権管理」を徹底しましょう。債権管理とは、

滞りなく売掛金を回収するための業務全般

のことで、具体的には「請求書の発行や入金チェック、未入金の場合は催促」などの一連の流れとなります。

この記事では、債権管理の一般的な内容を紹介します。業務フローはさまざまなので、会社の状況に合わせて債権管理を徹底してください。

2 一般的な債権管理の流れ

1)請求書を発行する

取引先に請求書を発行します。継続取引の場合は、毎月、決まった日に請求書を発行します。スポットの場合は、納品(検収)後、速やかに発行するようにします。開発案件では、半年分の開発を期末にまとめて請求することもありますが、売掛金をきちんと把握していないと請求漏れが生じます。また、

取引先と共通の認識を持つために、面倒でも、その都度「注文書」と「注文請書」でやり取りすること

が大切です。

2)入金の確認と催促

請求書を発行したら、期日までに入金があるかをチェックします。インターネットバンキングを利用していれば、いつでも入出金明細を確認することができます。

また、たまにあるのが入金された金額の間違い(請求金額と違っている)です。取引先が悪意なく間違えているケースがほとんどで、継続取引の場合、実務負担を減らすために次回請求で調整することがあります。ただし、

実態と異なる会計上の処理は、「粉飾決算」となり得ます。自社としては効率的に処理したいだけかもしれませんが、問題行為であることを認識しなければなりません(特に決算月をまたぐ場合)。

3)未入金の場合の催促

もし、支払期日になっても入金がない場合は、速やかに取引先に催促の連絡をします。手違いのケースが多く、通常は即座に処理してもらえるのですが、最悪の事態は、こうしたありがちなシーンから始まるのも事実です。そのため、

  • 具体的な支払期日を明示せずに支払猶予を求められる
  • 催促メールを送ったが返信がなかなか来ない
  • 電話をしたが、いつもと様子が違った

といったように、違和感を覚えることがあれば要注意です。具体的にどのような対応を取るかは状況次第ですが、少しモードを変える必要があり、

状況によっては取引継続の有無を判断したり、債権債務(売掛債権と仕入債務)を相殺したりすること

になるかもしれません。

3 取引状況を把握する

取引の規模を確認します。例えば複数の部門と取引している取引先がある場合は、全体だけではなく部門ごとにも把握するのが理想的です。また、継続取引をしている場合は、足元の状況だけではなく、将来発生する可能性のある債権債務についても把握します。その上で、以下の情報をまとめておきます。

  • 取引先との間で発生している債権債務の額
  • 取引先との間で発生している債権債務の弁済期
  • 担保を設定しているか

取引先との間で債権債務が発生していれば、いざというときに相殺して、事実上債権を回収することができます。また、契約において「期限の利益喪失条項」を定めておけば、支払期日前でも債権回収ができることがあります。期限の利益喪失条項とは、支払遅延等が生じた場合に、

債務者に本来の支払期日よりも前に債務を弁済させる義務を生じさせる条項

です。

この他、取引先が有する不動産や動産などの資産、取引のある金融機関、取引先がどういった会社と取引をしているのかについて把握します。これにより取引先の体力等が推測できるので、取引を継続するか否かの重要な判断材料となります。

以上(2024年5月更新)
(監修 弁護士 八幡優里)

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画像:Mariko Mitsuda

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