書いてあること
- 主な読者:あくまでも話し合いによって債権回収の問題を解決したい経営者
- 課題:裁判所が関与する形で話し合い、できるだけ円満に解決したい
- 解決策:民事調停を申し立て、裁判所の関与の下で話し合って解決する。調停調書は判決と同様の効力がある
1 民事調停を利用する意義
民事調停とは、
簡易裁判所が間に入り、当事者間での話し合いを試みる手続
です。相手との関係性を維持しながら、あくまでも話し合いで解決したい場合に有効です。通常、調停は裁判官と一般市民から選ばれた調停委員とともに進められます。
調停が成立した場合、調停調書が作成されます。作成された調書は、判決等と同じく、債務名義となります。債務名義とは、「強制執行」をする根拠となる文書であり、「債権債務の存在を公に認めるもの」です。また、強制執行とは、「判決等によって債務の履行が決まっているのに相手がそれに応じない場合、国家の強制力によって判決等で命じられた内容を実現する」ことです。
民事調停のメリットとデメリットは次の通りです。
【民事調停のメリット】
- 手続が比較的簡単(厳密な法的構成や証拠が必ずしも求められない)
- 手続が簡単なため、弁護士等を入れずに申立てをしやすい
- 話し合いによる手続のため、円満な解決ができる
- 裁判所に納める費用が訴訟に比べて低額
- 手続が公開されないため、秘密が守られる
- 通常訴訟に比べれば短い期日で決着しやすい(目安はおおむね3カ月以内)
- 調停が成立すれば判決と同じ効力が認められる
【民事調停のデメリット】
- 相手との話し合いができなければ決着しない。裁判所が相手方を説得したとしても、相手方には説得に応じる義務はない
- 相手が期日に裁判所に出頭しなければ、そもそも話し合いができない
- 管轄は原則として相手の住所地となる
- 申立て時に厳密な法的構成や証拠は求められないが、相手方が争った場合は、法的な理屈の説明や証拠の提示を求められることがある
- 民事調停で話し合いができなかった場合、訴訟などの手続に移行しない。訴訟手続を一からやり直す必要がある
2 民事調停手続の流れ
民事調停手続の主な流れは次の通りです。
1)申立書の提出
債権者と債務者のどちらからでも申立てができます。申立人は、原則として相手の住所のある簡易裁判所に申立書を提出します。その際、収入印紙(手数料)と郵券(郵便切手)を一緒に納めます。申立書の書式は、裁判所の窓口にも備え付けられています。
2)調停期日の指定
裁判所は、調停期日を決めて双方を呼び出します。調停期日では、申立ての内容について、裁判所が双方の話を聞いた上で解決案を提示するなど、話し合いでの解決に向けた努力をします。なお、通常は裁判官とともに一般市民から選ばれた調停委員が手続に当たります。
この調停期日は1回で終了せず、通常、2~3回開かれます。
3)調停成立
話し合いによって合意に至った場合、調停が成立します。裁判所は調停の内容を「調停調書」にまとめます。その後、当事者は、調書の内容を争うことができなくなります。相手が調停調書の義務を履行しない場合、強制執行が行えます。
4)調停に代わる決定
相手が出頭しない場合や話し合いが合意に至らなかった場合、裁判所は「調停に代わる決定」を出すことがあります。調停に代わる決定とは、
裁判所が当事者の言い分を衡平に考慮した上で、解決条件などを決定して双方に提示するもの
です。当事者がこれを受け取った後、2週間以内に異議の申立てがなければ調停が成立したものと同じ効力があります。しかし、いずれか一方が異議を申し立てると効力は生じません。異議は、理由を問わず、任意に出すことができます。
5)費用
裁判所に納める費用(申立ての手数料)は、以下の通りです。調停を求める事項の価額が100万円までの部分は10万円ごとに500円ですので、例えば、目的の金額が100万円の場合は5000円です。
- 100万円までの部分:その価額10万円までごとに500円
- 100万円を超え500万円までの部分:その価額20万円までごとに500円
- 500万円を超え1000万円までの部分:その価額50万円までごとに1000円
- 1000万円を超え10億円までの部分:その価額100万円までごとに1200円
- 10億円を超え50億円までの部分:その価額500万円までごとに4000円
- 50億円を超える部分:その価額1000万円までごとに4000円
また、これに加えて郵便切手代(金額は、裁判所や相手方の人数などによって異なりますが、数千円)が必要となります。
以上(2023年9月更新)
(監修 みらい総合法律事務所 弁護士 田畠宏一)
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画像:Mariko Mitsuda