書いてあること
- 主な読者:社有車の事故防止に力を入れたい経営者や運行管理責任者ならびに運転者
- 課題:交通事故の基本的な責任割合や未然防止策を知りたい
- 解決策:過去の裁判例に基づく基本的な責任割合と場所や状況に応じた事故防止策を理解する
1 事故事例と状況を把握します。
今回の事故状況はこちらです。A(自社の青い車)が、一般道でB(相手方の赤い車)に追突してしまいました。Bが突然急ブレーキをかけて車間距離が一気に詰まってしまったため、Aの停止が間に合わなかったそうです。
【A車:自社車両 B車:相手方車両】
安全な場所に停止している自動車への追突事故や、法定速度の範囲内で通常の走行をしている自動車への追突事故の場合は、追突された側に過失(不注意やミス)がないため、責任割合はA100%:B0%となることが一般的です。
これは「車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。」(道路交通法26条1項)と定められているためです。
今回のケースでは「後ろから煽られている感じがして、イライラしてブレーキを踏んだ」とBが言っていたそうです。
2 今回の責任割合を、見てみましょう。
1)責任割合の決まり方は?
双方に責任が生じる事故の場合、それぞれの保険会社を窓口として交渉することが一般的です。過去の裁判例の責任割合を参考に、実際の事故状況を踏まえて話し合い、決定していきます。
2)今回の責任割合は?
過去の裁判例より、A(自社の青い車)70%:B(相手方の赤い車)30%が基本の責任割合となります。
Bの急ブレーキの事実に争いがなく、かつ正当な理由もなくブレーキをかけたことが明らかになっている場合の基本の割合です。
前述のとおり、追突された側に過失がない場合の責任割合はA100%:B0% ですが、今回の事故状況における基本の責任割合には、道路交通法で「車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない」(同法24条)と定められていることに基づいて、Bの過失を認めています。
※実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容とは異なる結果になる場合もあります。
3 今回の事故事例を未然に防ぐポイントとは。
今回は追突事故において、追突をされた側にも責任が問われるケースをご紹介しましたが、追突事故の発生を予防するには、
- 安全な車間距離を維持する(一般道での安全な車間距離の目安は、例えば時速40キロで走行の場合は25メートル、時速60キロで走行の場合は45メートルと言われています)
- 渋滞時には前方車だけではなく、2台前の車の動きや横からの車の割り込みなども注視して前方車の動きを予測する
ことが重要です。
その他、ドライブレコーダーを活用した安全運転指導や教育サービス、無料の安全運転セミナーを提供している機関もありますので、それらを利用して自動車事故防止活動をしていくのも良いでしょう。
以上(2021年12月)
sj09023
本記事で紹介している責任割合は、過去の裁判例を参考にした基本的な割合です。実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容と異なる結果になる場合もあります。