1 合併契約書に定めるべき内容

中小企業のM&Aで合併が利用されるケースは少ないですが、比較的よく見られるケースは、株式譲渡によって完全子会社にした後に、当該会社と親会社が合併して1つの会社になるケースです。

吸収合併を行うときには、存続会社と消滅会社との間で合併契約を締結し、次の事項(法定記載事項)を定めなければなりません(会社法第748条、第749条)。なお、新株予約権を発行している場合などには別途追加で定めるべき事項がありますが、この記事では省略します。

  • 分割会社及び承継会社の商号及び住所(第1条)
  • 承継会社が分割会社に対して交付する金銭等に関する事項(第2条)
  • 消滅会社の株主に対する金銭等の割当てに関する事項(第2条)
  • 効力発生日(第4条)

2 合併契約書のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際に就業規則を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【合併契約書のひな型】

株式会社○○(以下「甲」という。)と○○株式会社(以下「乙」という。)とは、両社の合併に関して次の契約を締結する。

第1条

1)甲と乙は、甲を吸収合併存続会社、乙を吸収合併消滅会社として合併(以下「本合併」という)し、甲は乙の権利義務の全部を承継する。

2)本合併に係る吸収合併存続会社及び吸収合併消滅会社の商号及び本店は、以下のとおりである。

1.吸収合併存続会社

 商号 株式会社○○

 本店 東京都千代田区○○

2.吸収合併消滅会社

 商号 ○○株式会社

 本店 東京都渋谷区○○

第2条

1)甲は、本合併に際し、普通株式○○株を発行し、本合併の効力発生日(以下「効力発生日」という)前日最終の乙の株主名簿に記載された各株主(甲及び乙を除く)に対して、その所有する乙の普通株式に代えて、当該普通株式1株につき甲の普通株式○○株の割合(以下「割当比率」という)をもって割当交付する。

2)甲が発行する株式数の合計に1株未満の端数株式が発生した場合には、これを切り上げることとし、乙の株主に対して交付する株式数に1株未満の端数が生じた場合には、これを一括売却又は買受けをし、その処分代金を、端数が生じた株主に対して、その端数に応じて分配する。

3)本合併に際して発行する甲の新株式に対する利益又は剰余金の配当は、効力発生日から起算する。

第3条

甲が合併により増加すべき資本金等の取扱いは、次のとおりとする。ただし、効力発生日前日における乙の資産及び負債の状態により、甲及び乙が、協議の上、これを変更することができる。

  • 増加する資本金の額   ○○円
  • 増加する資本準備金の額 ○○円
  • 増加するその他資本剰余金の額 会社計算規則第35条第1項の株主資本等変動額から上記1.及び2.の額を減じて得た額

第4条

効力発生日は、令和○年○月○日とする。ただし、前日までに合併に必要な手続が遂行できないときは、甲及び乙が、協議の上、会社法の規定に従い、これを変更することができる。

第5条

1)乙は、令和○年○月末日現在の貸借対照表その他同日現在の計算書を基礎とし、これに効力発生日前日までの増減を加除した一切の資産、負債及び権利義務を効力発生日において甲に引き継ぐ。

2)乙は、令和○年○月末日以降、効力発生日前日に至るまでの間に生じたその資産、負債の変動については、別に計算書を添付して、その内容を甲に明示しなければならない。

第6条

甲及び乙は、本契約締結後、効力発生日前日に至るまで、善良なる管理者の注意をもって各業務を遂行し、かつ、一切の財産の管理を行う。

第7条

1)甲は、効力発生日において、乙の従業員を甲の従業員として雇用する。

2)勤続年数は、乙の計算方式による年数を通算するものとし、その他の細目については甲及び乙が協議して決定する。

第8条

甲と乙は、本合併契約書につき承認を得るため、令和○年○月末日までに、それぞれ株主総会の承認を得るものとする。

第9条

この契約締結の日から効力発生日までの間において、天災地変その他の理由により、甲若しくは乙の資産状態又は経営状態に重大な変更が生じた場合又は隠れたる重大な瑕疵が発見された場合には、甲及び乙が協議の上、本契約を変更し又は解除することができる。

第10条

本契約に規定のない事項又は本契約書の解釈に疑義が生じた事項については、甲及び乙が誠意をもって協議のうえ解決する。

本契約の締結を証するため本書1通を作成し、甲が保有する。

○年○月末日

(甲)

東京都○○区○○

株式会社○○

代表取締役 ○○

(乙)

東京都○○区○○

○○株式会社

代表取締役 ○○

以上(2025年9月作成)
(執筆 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

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