書いてあること

  • 主な読者:役員退職金規程が未整備、またはひな型をそのまま使っている経営者
  • 課題:役員退職金規程を整備するとしても、どこに注意すればよいのか分からない
  • 解決策:役員退職金規程の適用範囲、支給算定基準、支給時期などを見直す

1 役員退職金規程を整備する際の留意点

役員退職金の支給にはさまざまなルールがありますが、「役員退職金規程」を整備することで、客観的に計算方法などを示すことができます。とはいえ、インターネットで公開されているひな型をそのまま使うと、自社の実情に合わず、思わぬ問題が生じることがあります。

そこで、この記事では、ひな型で出てくる条文をどう見直せばよいのかについて、弁護士が解説します。紹介するのは、特に重要な定めである、

適用範囲、支給算定基準、支給時期

の3つです。

2 適用範囲

1)ひな型でよく見る条文

第●条(適用範囲)

本規程は役員の全員に適用する。

第●条(非常勤役員の取り扱い)

非常勤役員については、その功労実績に基づき本規程以外の取り扱いをすることができる。

2)見直しのご提案

第●条(適用範囲)

本規程は常勤役員(職員に準じて勤務する役員および1週間のうち決まった曜日に勤務する役員をいう)に適用する。

第●条(削除)

3)弁護士からのワンポイントアドバイス

全ての役員(取締役または監査役)が対象であることを前提とするひな型がありますが、社外役員に対する役員退職金などの取り扱いは、きちんと定める必要があります。

3 支給算定基準

1)ひな型でよく見る条文

第●条(支給算定基準)

退職金の支給は、退任時の最終報酬月額を基準として、退任する役員が歴任した役位ごとに次の計算式により得られる額を累計し、その総額とする。ただし、総支給額に1000円未満の端数が生じたときは1000円に切り上げるものとする。

退任時の最終報酬月額×役員在任期間(年数)×各役位別の功績倍率

2)見直しのご提案

第●条(支給算定基準)

退職金の支給算定基準は、歴任した役位ごとに次の計算式により得られる額を累計し、その総額を基準とする。同一の役位に在任中、報酬月額に変動がある場合は、そのうちの最高報酬月額を基準とする。ただし、役位ごとの支給基準額に1000円未満の端数が生じたときは1000円に切り上げるものとする。

役位別の報酬月額×各役位の役員在任期間(年数)×各役位別の功績倍率

3)弁護士からのワンポイントアドバイス

条文例は退任時の最終報酬月額を基準に退職金を計算していますが、役位ごとの報酬月額を基準とするように修正しています。役位ごとに基準額を算出しているので透明性が高まっています。また、役位在任中に報酬月額の変動がある場合は、各役位に係る最高額または最終額を用いる例が多いです。

4 支給時期

1)ひな型でよく見る条文

第●条(支給時期)

退職金は、役員が業務の引き継ぎを完全に終了させ、かつ、会社に対して返済すべき債務があるときは、その債務を返済した日から○カ月以内に一時金として支給する。

2)見直しのご提案

第●条(支給時期)

退職金は、役員が業務の引き継ぎを完全に終了させ、かつ、会社に対して返済すべき債務があるときは、その債務を返済した日から○カ月以内に一時金として支給する。ただし、経済界の景況、会社の業績いかん等により、当該役員またはその遺族と協議の上、支給の時期、回数、方法について別に定めることができる。

3)弁護士からのワンポイントアドバイス

ひな型でよく見る条文では、一時金として支給時期が記載されています。しかし、会社の状況によっては、一時金として支払うことが難しい場合もあるので、支払時期について協議の余地を残しておくと無難です。

以上(2024年2月更新)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)

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画像:ESB Professional-shutterstock

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