書いてあること
- 主な読者:役員規程を整備していなかったり、ひな型をそのまま使ったりしている経営者
- 課題:自社に合った役員規程にするために、どこを見直せばよいのか分からない
- 解決策:役員の定義、役員規程の適用範囲、辞任、機密保持義務などを見直す
1 大きな権限を持つ役員にルールがないのは不自然です
「就業規則」はあるのに「役員規程」はない、そんな会社が少なくありません。労働基準法で10人以上の社員がいる会社には、就業規則の作成が義務付けられている一方、役員規程には、会社法などによる義務がないというのが背景にあるのでしょう。
しかし、役員は経営の中枢であり、権力や影響力が大きいわけですから、それを規定する役員規程がないのはガバナンスの面でまずいわけです。改めて整理すると、役員規程とは、
役員に共通して適用されるルール(役員の選任・就任、退任、執務条件、責務など)について定めた、いわば役員用の就業規則
です。特に、親族以外の役員がいるオーナー経営者にとって、役員規程は重宝するでしょう。
また、役員規程を作成する際に、インターネットや書籍のひな型をそのまま使うのはお勧めできません。役員構成などは会社によって異なるわけですから、役員規程も自社の実情に合ったものであることが必要なのです。
そこで、この記事では、
役員規程のひな型に通常盛り込まれている条項を「1)条文例」として紹介し、弁護士の視点から条文について「2)追記・修正案」と「3)解説」を記載
していますので、ご確認ください。なお、役員規程の作成・見直しをする際は、それと併せて、
役員と締結する委任契約に、役員規程が適用される旨の条項を盛り込んでおく
ようにしましょう。
2 「役員」の定義:自社の役員構成に合わせて修正する
1)条文例
第●条(役員の定義)
「役員」とは、株主総会で選任された取締役をいう。
2)追記・修正案
第●条(役員の定義)
「役員」とは、株主総会で選任された取締役および監査役をいう。
3)解説
役員構成は、会社によって異なるため、自社の役員がカバーされるように、適宜修正します。
3 役員規程の適用範囲:非常勤役員への準用について明記する
1)条文例
第●条(適用範囲)
本規程は、常勤の役員に適用する。ただし、必要があるときは、本規程の一部を非常勤役員に準用することがある。
2)追記・修正案
第●条(適用範囲)
本規程は、常勤の役員に適用する。ただし、本規程その他の書面で別途の定めがある場合には、本規程の一部を非常勤役員に準用することがある。
3)解説
役員規程の適用範囲については、特に決まったルールはないので、どのように定めても構いません。実務上は、「常勤役員のみ」を適用対象とするのが一般的です。
なお、非常勤役員への準用を定める場合、単に「必要があるとき」などとすると、どのような場合に準用が認められるのか分かりません。そのため、「本規程その他の書面で別途の定めがある場合」などとして、準用に明文の根拠を要求するように修正することが望ましいでしょう。
4 役員の辞任:辞任の事前通知期間を適切に定める
1)条文例
第●条(辞任)
役員が辞任する場合は、原則として2カ月前までに社長に届け出るものとする。
2)追記・修正案
第●条(辞任)
役員が辞任する場合は、原則として3カ月前までに社長に届け出るものとする。
3)解説
役員が辞任する場合、会社の業務運営に支障が出ないように、引き継ぎが確実に行える準備期間が必要です。準備期間としてどの程度の期間を確保すべきかについては、取締役の担当業務の内容や、後任者を確保できる見込みなどによって異なります。そのため、ひな型に記載された準備期間が短いと感じられる場合には、延長しておくとよいでしょう。
なお、会社の裁量により、所定の期間よりも短期間での辞任を認めることはできます。
5 役員の定年:退任時点を明記する
1)条文例
第●条(定年)
役員の定年は、原則として次に定める通りとする。
- 社長:70歳
- 取締役:65歳
- 監査役:65歳
2)追記・修正案
第●条(定年)
1)役員の定年は、原則として次に定める通りとする。
- 社長:70歳
- 取締役:65歳
- 監査役:65歳
2)事業年度の途中で定年に達した場合には、その日以降最初に到来する定時株主総会終了の日をもって退任するものとする。
3)解説
定年となる年齢を記載しているだけでは、いつ退任するのかがはっきりしないため、退任時期を明確にしておくべきです。退任時期については、取締役に欠員が生じないように、定時株主総会のタイミングに退任時期を合わせるとよいでしょう。
6 機密保持義務:別途NDAを締結して定める
1)条文例
第●条(機密保持)
役員は、職務上知り得た会社の機密情報を、正当な理由なく会社の内外に開示または漏洩してはならない。
2)追記・修正案
第●条(機密保持)
役員は、職務上知り得た会社の機密情報を、正当な理由なく会社の内外に開示または漏洩してはならない。また、役員は、会社との間で秘密保持契約書を締結し、その定めに従わなければならない。
3)解説
役員としての機密保持義務については、別途秘密保持契約書(NDA)を締結し、その中で詳細にルールを定めておきます。NDAで定めるべき事項は、次のようなものです。
- 機密情報の定義
- 例外的に開示を認める場合
- 退任後の機密情報の取り扱い
- 機密保持義務の存続期間など
以上(2024年2月更新)
(監修 弁護士 坂東利国)
pj60238
画像:ESB Professional-shutterstock