書いてあること

  • 主な読者:「オンライン株主総会」に興味がある経営者、実務担当者
  • 課題:オンラインとはいうけれど、これまでの株主総会と何が違うのか分からない
  • 解決策:中小企業が開催できるのは「ハイブリッド型」。双方向性と即時性の確保が必須

1 中小企業が開催できるのは「ハイブリッド型」

コロナ禍以降、定時株主総会(以下「株主総会」)のオンライン化が普及するようになりました。現在認められているオンラインを利用した株主総会の開催方法は、

  1. ハイブリッド型バーチャル株主総会
  2. バーチャルオンリー株主総会

です。このうち、「2.バーチャルオンリー株主総会」の対象は上場企業などに限られるので、中小企業が開催できるのは、

「1.ハイブリッド型バーチャル株主総会」と呼ばれる、リアルの会場を準備した上でオンラインでも中継する形態

です。

また、ハイブリッド型バーチャル株主総会(以下「オンライン株主総会」)は、

  • 参加型:株主はオンラインで株主総会の審議等を「確認・傍聴」する
  • 出席型:株主はオンラインで株主総会の審議等に「出席」する

に大別されます。参加型は、リアル株主総会の中継を見るだけです。質問や議決権の行使はできません。一方、出席型は、リアル株主総会に出席している株主と同じように、質問や議決権の行使ができます。出席型のオンライン株主総会を開催するには、「双方向性と即時性」が必要です。具体的には、

リアル株主総会での発言がオンライン出席している株主にすぐに伝わり、反対にオンライン出席している株主の発言も、すぐにリアル株主総会に伝わること

です。

オンライン株主総会は制約が多いですが、遠方の株主などがいる場合は効率化につながる可能性もあります。この記事では、出席型を前提に説明していきます。

2 オンライン株主総会の注意点

1)議決権行使や質問などの方法

オンライン株主総会の利用システムは、一般的なテレビ会議システムやライブ配信ツールにするのが無難です。会社も株主も操作に慣れているからです。また、

株主の本人確認の方法として、システムにログインするためのIDやパスワードを設定し、招集通知などに記載すること

が考えられます。

オンライン出席の株主がどのように議決権行使、質問や動議をするのかについても決めておきましょう。

  • 議決権行使:テレビ会議システムの挙手機能を利用
  • 質問や動議:テレビ会議システムの挙手やコメント機能を利用

賛否が分かれそうな議案がある場合は、書面による事前の議決権行使を採用したほうが無難かもしれません。また、オンライン出席の株主からの質問や動議については、テレビ会議システムのコメント機能を利用することが考えられます。

動議の提出については、

オンライン出席の株主の動議は受け付けないこともできる

ことになっています。ただし、事前に招集通知などに、

バーチャル出席者の動議については、取り上げることが困難な場合があるため、動議を提出する可能性がある方は、リアル株主総会へご出席ください

といった案内を記載すべきでしょう。

2)利用ツールの使用や通信環境

基本として、オンライン株主総会で利用しようとしているシステムに外部から接続できるか、議決権行使などで使う挙手機能やコメント機能が使えるかを確認します。また、リハーサルにおいて、オンライン出席している株主の挙手や質問を見逃すことはないか、こちらからの回答となる音声やテキストがきちんと相手に届くかなども確認します。

さらに、オンライン株主総会で起こる問題として、配信遅延や通信障害があります。配信遅延については、事前にテストで確認できますが、通信障害はいつ発生するか分かりません。もし、株主総会の途中で通信障害が発生してしまった場合、オンライン出席の株主が中継を観ることができず、議決権行使などもできなくなる恐れがあります。

そのため、

  • 通信障害のリスクがあることを招集通知などに記載する
  • バックアップの通信手段を確保しておく
  • 通信障害が発生したときは、一度休憩を入れる

などの準備をし、リハーサルに組み込んでおく必要があります。

3)議事録の注意点

株主総会の議事録には、オンライン出席の株主についても記載する必要があります。この際、開催場所と株主との間で情報伝達の「双方向性と即時性」が確保されていることが分かるよう、利用したシステム等を記載することが望ましいです。

3 オンライン株主総会の招集通知の例

 

○年○月○日

株主各位

住所:○○○○○○○

社名:株式会社○○○

代表取締役 ○○○○

 

第○回 定時株主総会 招集ご通知

 

拝啓 ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

さて、当社第○回定時株主総会を下記の通り開催いたしますので、ご出席くださいますようご通知申し上げます。

(略)

本総会におきましては、当日会場にご来場いただけない株主様も、後記のインターネット等の手段を用いた「オンライン出席」の方法により本総会にご出席いただくことができます。

(注意事項)

オンライン出席の場合の議決権行使、質問、動議の方法につきましては……(略)

オンラインでご出席されている最中に通信障害などが起きた場合は……(略)

 

(オンライン出席のご案内)

1.オンライン出席に必要となる環境

オンライン出席を行うためには、株主の皆様におかれては、以下の環境を整えていただく必要があります。(略)

 

2.システムへのログイン方法

オンライン出席を希望される株主様は、以下に記載のIDおよびパスワードを用いて、以下のURLまたはQRコードによりアクセスいただき、当社所定のオンライン出席システムにログインいただきますようお願いいたします。

なお、オンライン出席の方法によるご出席は、株主様本人に限定しております。

 

<オンライン出席用の特設ページ>

https://……

<ID・パスワード>

ID:……

パスワード:……

 

(略)

●.お問い合わせ先

03-……

4 オンライン株主総会の議事録の例

 

開催場所:東京都○○区△△ 第××会議室

なお、当日出席の株主の一部は、当社所定の「○○」システムに所定のIDとパスワードを用いてログインし、会場の画像および音声の配信を受け、インターネットにより質問および議決権行使を行う方法により本総会に出席した。

(略)

 

議事の経過の要領およびその結果

定刻、取締役社長△△は、定款の規定に基づき議長となり、開会を宣した。

議長は、本総会においては、一部の株主がインターネットを用いて当社所定の「○○」システムにログインする方法で出席しているところ、当該出席者の発言が即時に本総会の会場の出席者に伝わり、一堂に会するのと同等の意見表明が、互いにできる状態であることが確認し、議事に入った。

(略)

 

以上(2024年4月更新)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:ryanking999-Adobe Stock

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