1 自転車による交通事故は増加している~ヘルメット着用が努力義務化される背景(令和5年4月1日)~
令和4年中の交通事故の発生状況(警察庁交通局)によれば、交通事故全体の発生件数は前年より減少しているにも係わらず、自転車乗用中の交通事故は69,985件、前年より291件増加しています。また、交通事故全体の発生件数300,839件に占める自転車乗用中の交通事故の割合は約23%と高止まり、その構成比は平成28年以降ずっと増加傾向にあります。
また、自転車乗用中の死傷者数は68,140人と交通事故全体の死傷者数359,211人に占める割合は約19%であり、歩行中の死傷者数38,195人に比べ約1.7倍と高い数値を示しています。
同統計の自転車乗用中のヘルメット着用有無別死傷者数によれば、自転車乗用中の死傷者数68,140人の内、60,274人がヘルメットを非着用、非着用死傷者率は88.5%でした。
こうした状況を踏まえ、改正道路交通法の施行により、令和5年4月1日から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されることになりました。
これまでも、児童や幼児が自転車に乗る際、ヘルメットの着用は努力義務とされていたのですが、4月の法改正では、年齢にかかわらず自転車利用者全員に適用されるようになったのです。
このように、自転車による交通事故が増加しているということを、まず知っておきましょう。
2 自転車による交通事故と会社の責任
社員の自転車乗用中の交通事故が業務中の事由または業務の一部と捉えられる通勤途上で起こった場合、加害者たる社員を雇用する会社は、報償責任の原理(利益あるところに損失を帰せしめるのを公平とする考え方)により、(1)民事的責任、(2)刑罰的責任、(3)社会的(道徳的)責任を問われます。
業務用自転車による事故はもちろんですが、私用自転車であっても業務中や通勤途上で事故が発生すれば、会社の責任が問われ得ることに注意が必要です。
●表1 私用自転車事故の会社責任
業務使用実態 |
事故発生時の状況 |
|||
業務中 |
通勤途上 |
私用中 |
||
日常的業務使用 |
私用自転車を業務使用するように会社が命令、業務遂行のために私用自転車が必要で日常業務的に継続的使用をしている場合 |
◎ |
◎ |
△ |
便宜的業務使用 |
業務遂行のために私用自転車を使う必要はないが、使った方が便利・効率的であり、かつ会社が黙認・許可している場合 |
◎ |
○ |
△ |
業務使用なし(通勤のみ使用) |
業務使用を厳禁しており、実態としても業務使用が一切ない場合 |
- |
△ |
× |
◎:会社責任を問われ得る
○:一般的には会社責任を問われ得る
△:場合によっては会社責任を問われ得る
×:会社責任を問われない
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