1 重要顧客・重要取引先で特定
BCPでは、「中核事業」を特定します。中核事業とは、会社の存続に関わる最も重要性(または緊急性)の高い事業のことです。中小企業は単一事業のみを手掛けていることが少なくないため、「中核事業」を「重要顧客・重要取引先」と読み替えるとイメージしやすくなります。つまり、「そこからの収益や調達などが途絶えると、会社の存続が危ぶまれる顧客・取引先」を特定するのです。
重要顧客を特定する基準としては、「収益」が最も分かりやすいでしょう。最も収益が大きい顧客への商品・サービスの提供を止めないためにはどうすればよいかを検討し、BCPにまとめます。例えば、重要顧客の担当者を増やすなどの対策が考えられます。
また、重要取引先を特定する基準としては、「取引先への依存度」が最も分かりやすいでしょう。例えば、その取引先から部品が調達されないと商品の製造ができない場合、依存度が高いといえるでしょう。こうした場合、在庫量を見直したり、取引金額が高くなっても問題ないように代替先を確保したりする必要があります。
2 BCPの発動基準(誰が、いつ、発動するか)の決め方
誰が、いつ、BCPを発動するかというのは、BCPの意外な盲点です。「誰が」については、通常は経営者がBCPの責任者としてBCPを発動します。しかし、経営者自身が被災することもあるため、万が一に備えて代理も任命しておきます。
難しいのは「いつ」です。タイミングは、災害や感染症などの状況によって変わります。BCPの責任者の判断を尊重しますが、災害の場合、「防災気象情報」を確認しましょう。
また、BCPの発動後に素早く運用体制に入るために、日ごろから、単なる避難訓練ではなく、BCPの発動後の体制を想定した訓練をすることが重要です。例えば、重要顧客や重要取引先に対する緊急連絡のロールプレイング、業務担当者の交代、リモートワークなどの訓練をします。
3 BCPを「定着させ、運用する」ポイント
平常時、社員はBCPについて真剣に考えることはないでしょう。しかし、そうして油断しているときに災害などが発生すると、現場は大いに混乱してしまいます。
そうならないように、経営者は社員のBCPに対する意識を高め続けなければなりません。定期的な訓練を行う他、「万が一の際に会社が被る影響」を共有するとよいでしょう。例えば、「重要顧客を失うと、収益が10分の1になる」など、赤裸々な数字を示すことで社員の意識が高まるでしょう。BCPは、「策定する」ことはもちろん、「定着させ、運用する」ことも非常に重要です。
以上(2020年4月)
(監修 ひらきプランニング 代表取締役 平野喜久)
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