書いてあること
- 主な読者:取引先の与信管理について信用調査サービスを利用したい経営者
- 課題:信用調査会社のサービス内容や注意点を知りたい
- 解決策:多様な情報が収集できるが、うのみにするのは危険。自社の情報と合わせたり、複数の信用調査会社を利用したりして総合的に判断する
1 信用調査会社を利用するメリット
与信管理では情報収集が大切です。信用調査会社を利用するなどして情報を収集しましょう。信用調査会社は、調査対象となる会社について「相手と直接面談をして情報を収集する」「取引をしている金融機関や仕入れ先・取引先から評判を聞き取る」「登記簿謄本などを取り寄せる」などの方法で調査し、報告書にまとめます。報告書の記載事項はおおむね次の通りです。
商号、設立年月日、資本金、所在地、代表者氏名、株主構成(主要株主など)、代表者の評価(経歴など)、沿革、事業内容、取得認証、行政処分情報、設備や事業所などの不動産明細、従業員数、取扱商品と仕入れ先/取引先、金融機関との取引状況、業績および業況、財務分析、決算書、信用評点
また、信用調査会社に依頼して、こちらが知りたいことをヒアリングしてもらうこともできます。コストは掛かりますが、取引規模が大きい相手の場合、信用調査会社の活用を検討したいものです。
2 信用調査会社が提供するサービス
1)代表的な信用調査会社
代表的な信用調査会社には「帝国データバンク」「東京商工リサーチ」があります。この2社は全国規模のネットワークがあり、全国の企業を対象に信用調査を行っています。その他にも、「リスクモンスター」「東京経済」などがあります。また、「アラームボックス」のようにインターネット上のSNS、ブログや口コミなどの中から、対象企業の信用情報を収集し、サービスの利用者に通知するサービスもあります。
■帝国データバンク■
■東京商工リサーチ■
■リスクモンスター■
https://www.riskmonster.co.jp/
■東京経済■
https://www.tokyo-keizai.co.jp/
■アラームボックス■
2)データベースサービス
信用調査会社は、独自に調査した企業情報をデータベース化して、インターネットなどを通じて有料で提供しています(日経テレコンなどでも利用できます)。閲覧できる情報の価格は、簡易なものならば1件当たり1000~2000円程度、少し充実したものなら数千円~5万円程度です。
ただし、データベースサービスで公開されている情報は、最新の情報とは限りません。新しい情報が必要な場合は、信用調査会社に依頼して報告書を更新してもらいます。こうした依頼をするには、基本料金(数件分の無料閲覧ができる場合あり)と実費が掛かります。
3)継続的に情報を入手する
会社の経営状態は常に変化します。与信管理を行う際は対象となる会社について継続的に情報収集をする必要があります。信用調査会社では、こうしたニーズに応えるために、希望した会社の情報を、継続的に提供するサービスを用意しています。
例えば、帝国データバンクの「インターネット取引先管理サービス C-モニタリング」の場合、取引先の変化や動向などを電子メールで通知します。こうしたサービスを利用すれば、常に取引先の最新動向が把握できます。
■帝国データバンク「インターネット取引先管理サービス C-モニタリング」■
https://www.tdb.co.jp/lineup/c-moni/
4)その他のサービス
信用調査会社は、企業信用調査サービスやデータベースサービス以外にも取引先の信用状況の把握に役立つさまざまなサービスを提供しています。
例えば、与信管理に活用できるサービスとしては、独自の手法に基づいて算出した倒産確率に関するデータや、海外企業に関する企業信用情報などを提供しているケースがあるので、必要に応じて利用を検討してもよいでしょう。
3 信用調査の活用ポイント
1)信用評点を過信しない
一般的に信用評点は大企業に甘く、中小企業や業歴が浅い企業には厳しくなりがちです。また、調査に非協力的な態度を取る場合や、決算書を公表しない企業は、信用評点も厳しくなりがちです。総合的な評価を端的に示している信用評点は分かりやすい評価基準ですが、うのみにするのは避けましょう。
2)自社が保有している情報と合わせて読み解く
報告書を見る際、代表者の経歴、会社の沿革、株主構成などに不審な点や不自然さがないかなどを、自社との取引内容や窓口担当者(営業担当者や購買担当者など)からの情報と照らし合わせて読み取るようにしましょう。
そして、「おかしい、変だ」と感じたことがあったら、そのままにせず、営業担当者に確認させるなど徹底的に調査しましょう。また、手元にある信用調査書が古い場合は、信用調査会社に依頼して最新の情報を収集するようにします。
3)複数の信用調査会社の信用調査書の利用を検討する
信用調査会社の調査員の経験・資質・能力などによって、調査結果にばらつきが出てくるケースがあります。また、同じ会社の調査を複数の信用調査会社に依頼すると、調査結果に大きな違いがあることもあります。
そのため、取引額が大きな取引先など、特に重要な会社の信用調査では、複数の信用調査会社の利用を検討してみてもよいでしょう。
以上(2024年5月更新)
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画像:Mariko Mitsuda