書いてあること

  • 主な読者:取締役会を円滑に進めたい経営者
  • 課題:取締役会の機能と、取締役会における主な決議事項などについて確認したい
  • 解決策:取締役会規程および付議事項を一覧にし、取締役会運営時の参考にする

1 取締役会の職務

1)取締役会の概要

取締役会は全ての取締役で組織され、次の職務を行います。

  • 取締役会設置会社の業務執行の決定
  • 取締役の職務の執行の監督
  • 代表取締役の選定及び解職

株式会社(以下「会社」)の最高意思決定機関は株主総会ですが、

取締役会設置会社の場合、株主総会は会社法に規定する事項と定款で定めた事項しか決められない

ことになっています。つまり、

取締役会設置会社では、株主総会で決定すべき基本的事項を除き、取締役会が会社の業務執行に関することを決める

体制になっています。そして、代表取締役や取締役会で業務を執行する取締役として選定された「選定業務執行取締役」が、会社の業務執行機関として定められています(指名委員会等設置会社の執行役を除く)。

なお、多くの会社では、取締役会とは別に「経営会議」などで重要事項を議論しますが、

これは会社法上の機関ではないので、当然ながら、会社法で定められている重要事項は決められない

というのが実情です。

2)会社法における重要事項

次に掲げる事項、その他の重要な業務執行の決定は、会社法の定めによって、取締役会の委任があっても、取締役で決定できないものと規定されています。なお、経営会議での決定に委ねることもできません。

  • 重要な財産の処分及び譲受け
  • 多額の借財
  • 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  • 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  • 募集社債の総額、その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
  • 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
  • 定款の定めに基づく、役員等が任務を怠ったときの損害賠償責任の免除の決定

2 付議事項の基本的な考え方

取締役会規程に定める付議事項は、原則として、次の3つに整理されます。

  • 法令などに定めのある事項
  • 定款に定めのある事項
  • 業務執行に関する重要事項

法令などに定めのある事項とは、法令や最高裁判所判例で取締役会が当該事項の決議・決定機関とすることが指定または許されている事項です。

また、定款に取締役会決議が必要であると定めた事項についても、取締役会における決議が必要となります。ちなみに、定款の記載事項は、次の3つに大別できます。

  • 絶対的記載事項:必ず記載が必要で、記載を欠くと定款全体が無効となる事項
  • 相対的記載事項:必要に応じて記載が必要で、記載を欠くとその部分が無効となる事項
  • 任意的記載事項:絶対的記載事項と相対的記載事項ではない会社が任意に記載する事項

定款の記載事項のうち、相対的記載事項および任意的記載事項は、定款の定めの有無および記載されている内容が会社ごとに違うので、付議事項との整合性に注意する必要があります。

これらに加えて、業務執行における重要事項であり、取締役会の決議が必要な事項を付議事項として定めます。内容は会社ごとに異なりますが、一般的には、「事業計画や予算計画の承認」、取締役会規程をはじめとした「重要規則(規程)の改廃」などとなります。

3 取締役会規程および付議事項の例

1)取締役会規程の例

取締役会で決議する事項を明確にするために、付議事項を書面で明示するのが好ましいです。その際、予期せぬ重要事項の発生を想定し、付議事項には「その他法令・定款などに定めのある事項、並びに業務執行に関する重要事項」といった条項を設けるのが一般的です。

これを踏まえた取締役会規程(付議事項に関する定め)の例は次の通りです。

【取締役会規程(付議事項に関する定め)の例】
第○条(決議事項)
1)取締役会は、「別紙:付議事項」に定める事項について決議する。
2)第○条第1項にかかわらず、取締役会が必要と認める事項については、取締役会への付議、および取締役会における決議をしなければならない。
3)代表取締役は、急を要する事項などやむを得ない事情がある場合には、法令および定款に反しない限り、取締役会の決議を経ないで第○条第1項に定める事項に関する業務を執行することができる。ただし、代表取締役は、直後の取締役会においてその承認を得なければならない。

2)付議事項の例

付議事項の例は次の通りです。また、取締役会への報告事項も参考として紹介します。

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以上(2023年4月)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)

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画像:pexels

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