書いてあること
- 主な読者:「契約」という行為がいまひとつ分かっていない新入社員
- 課題:契約書は独特の言いまわしが多く、もはや日本語とは思えないレベルだ……
- 解決策:契約は相手との約束。約束の内容を整理することから始める
来週、訪問するA社。先輩から、事前にA社との契約書を読んでおくように言われたけど、聞き慣れない言葉や言いまわしばかりで難しい……本当に日本語か、コレ? はぁ〜、そもそも「契約」っていう言葉自体がよく分からないし、どこを、どのように読んでおけばいいのやら。せめて読むべきポイントが明らかになっていればいいのだけど……。
1 「契約」は相手との約束
仕事は、相手とさまざまな契約をしながら進めます。契約内容をまとめた契約書は難しい言葉ばかりですが、要するに契約とは相手との約束です。ですから、
自分たちがどのような約束をしているのか、つまり契約内容を知ること
が大事です。新入社員の段階で契約書を読みこなす必要はないので、まずは、
誰が、いつまでに、何を、どのような条件(料金など)で、どうするか
といった項目で整理すると分かりやすくなります。
また、契約には有効期間とペナルティーがあります。有効期間とは、その契約がいつまで有効なのかを示すものです。ペナルティーとは、契約を守らなかった場合の措置で、相手から商品を納品してもらえなかったり、損害賠償を請求されたりする危険性があります。
2 契約は自由に決めることができるけれど……
皆さんが気になるのは、契約内容がどのように決まるかでしょうが、これは当事者の交渉によります。一見、会社にとって不利に感じる内容があっても、別の狙いや事情があるかもしれませんので、先輩に確認してみてください。
別の視点で、少し法律の話に触れておきましょう。契約に関する基本は民法という法律で定められています。その中には「契約自由の原則」というものがあって、当事者は、
- 契約をするのか否か
- 誰と契約するのか
- 契約内容をどうするのか
- どのような方法で契約するのか
を自由に決めることができます。ただ、何でも自由に決めると、一方が不利になってしまうことがあるので、それを防ぐために「強行規定」が整備されています。強行規定とは、
当事者の意思に関係なく、強制的に適用されるルール
です。分かりやすく説明するために、会社と皆さんとが交わしている労働契約を例にしましょう。仮に、皆さんが「休憩は30分あれば十分です!」と言って、会社もそれに合意したとします。しかし、その合意は認められません。なぜなら、労働基準法という法律に「労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は、少なくとも45分の休憩時間を与えること」という強行規定があり、これが優先されるからです。つまり、会社と皆さんとの合意に関係なく、皆さんが8時間働いたら、少なくとも45分の休憩をとらないといけないのです。
なお、契約は、当事者が合意すれば、LINEのメッセージでも、口約束でも成立します。ただし、2つの例外があります。
- 保証契約等、一定の契約は、書面(契約書)でなければ成立しない
- 要物契約(たとえば、書面によらない消費貸借契約)は、借り手がお金などの対象物を受け取らなければ成立しない
3 契約を一方的に終わらせることはできない
一度、契約を交わしたら、一方的に契約内容を変更したり、解約などをしたりすることはできません。ただし、相手の同意がなくても契約を終わらせることができる例外が3つあります。
1つ目は、契約の無効です。契約内容が公序良俗に反するなどの場合、そもそも契約の効力が認められません。
2つ目は、契約の取消です。未成年者が締結した契約など、契約を締結時に遡って無かったことにすることができます。ただし、取消できる期間があり、その期間内に取消をしないと有効な契約として成立します。
3つ目は、契約の解除です。有効な契約であっても、法律や契約で定める規定によって、当事者の一方が契約関係を終了させるパターンです。クーリング・オフなどが該当します。
以上(2025年1月更新)
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画像:Mariko Mitsuda