書いてあること
- 主な読者:会社法の基礎として「機関」について知りたい人
- 課題:そもそも「機関」というもののイメージがわかない
- 解決策:会社の「機関」は、体の「器官」と同じ。株式会社の機関は11機関ある
1 会社の「機関」は、体の「器官」と同じ
会社の「機関」とは、
意思決定を行ったり、運営等が適切に行われているか監視したりするもの
です。具体的な機関には株主総会や取締役などがあり、機関が無ければ会社は適切に運営できません。まさに「体の器官」と同じです。
株式会社(以下「会社」)が設置できる機関には、
株主総会、取締役、取締役会、代表取締役、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、監査等委員会、指名委員会等、執行役
などがあります。株主総会と取締役は必ず設置しなければなりません。これらの機関について、ざっくり確認していきましょう。
2 株主総会
株主総会は、会社の「最高意思決定機関」です。株主を構成員として、組織、運営、管理など会社に関する一切の事項を決議します。株主総会には、事業年度の終了後に開催する「定時株主総会」と、定時株主総会以外で必要がある場合に開催する「臨時株主総会」とがあります。
3 取締役、取締役会、代表取締役
取締役は、株主から会社経営を任された、いわば「経営のスペシャリスト」であり、会社の業務執行をする機関です。そして、取締役会は取締役で構成される合議体の機関です。
取締役会設置会社の場合、取締役は3人以上を選任し、その中から代表取締役を取締役会の決議によって選びます。代表取締役は1人でも2人以上でも構いません。代表取締役が選ばれたら、それ以外の取締役は代表権を有しません。こうして、取締役会が会社の業務執行の決定などを行い、代表取締役が業務を執行します。なお、定款に基づく取締役の互選か、株主総会決議によって代表取締役を選ぶこともできます。また、業務執行権も代表取締役が有します。
取締役会非設置会社の場合、取締役は複数でも1人でも大丈夫です。複数いる場合、各取締役が業務執行権を有し、業務執行に関する意思決定は取締役の過半数で決めます。代表権も各取締役が有しますが、代表取締役を選んだ場合は、代表取締役だけが代表権を有します。
4 監査役、監査役会
監査役は、取締役(および会計参与)の職務執行を監査する機関です。そして、監査役会は監査役で構成される合議体である機関です。
監査役は1人でも大丈夫です。ただし、監査役会設置会社の場合は3人以上を選び、その半数以上は社外監査役でなければなりません。監査役は、監査の結果を株主などに報告するために、監査報告を作成します。ただし、非公開会社(監査役会設置会社と会計監査人設置会社を除く)の場合、定款に定めることで、監査の範囲を「会計監査」に限定することができます。なお、非公開会社とは、全ての株式について譲渡制限(会社の承認が必要)ある旨を定款に定めている会社です。
監査役会は全ての監査役で構成され、監査報告の作成、常勤監査役の選定および解職、監査の方針、監査役会設置会社の業務および財産の状況の調査の方法、その他の監査役の職務の執行に関する事項を決定します。
5 会計参与
会計参与は、取締役または執行役(委員会設置会社の場合)と共同で、「計算書類(損益計算書や貸借対照表など)」などを作成する機関です。会計参与になるのは、公認会計士・監査法人または税理士・税理士法人です。
会計参与は、中小企業の会計適正化などを目的に設けられた機関です。会社の規模などにかかわらず、定款に定めて任意に設置します。会計参与は1人(1法人)でも大丈夫です。
6 会計監査人
会計監査人は、計算書類などの監査をする機関です。会計監査人になるのは、公認会計士または監査法人です。
大会社および委員会設置会社は、必ず会計監査人を設置します。会社の計算書類とその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を監査し、会計監査報告を作成します。会計監査人の人数は1人(1法人)でも大丈夫です。
7 監査等委員会
監査等委員会は、2015年5月1日に施行された改正会社法によって新設されました。監査等委員会の権限は、指名委員会等設置会社(改正前の委員会設置会社)の監査委員会の権限に加え、指名委員会及び報酬員会の機能を一定程度代替する権限が与えられています。
具体的には、監査役および会計監査人の選任・解任・不再任に係る株主総会の議案内容の決定などをします。また、監査等委員以外の取締役の選任・解任・辞任および報酬について意見を決定し、株主総会で述べることができます。
監査等委員会の設置には、3人以上の非業務執行取締役(うち過半数は社外取締役)が必要です。監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とは、別々に選ぶ必要があります。
8 指名委員会等
指名委員会等は、次の3つからなる機関です。2015年5月1日に改正会社法が施行されるまでは「委員会」と呼ばれていましたが、前述した「監査等委員会」の新設によって指名委員会等に名称が変更されました。
- 指名委員会:株主総会に提出する取締役・会計参与の選任・解任の議案の決定
- 監査委員会:執行役・取締役・会計参与の職務執行の監査、監査報告書の作成
- 報酬委員会:執行役・取締役・会計参与の個人別の報酬等を決定
各委員会は、それぞれ3人以上(うち過半数は社外取締役)でなければなりません。また、監査委員は執行役を兼務することができません。
9 執行役
執行役は、指名委員会等設置会社において業務執行をする機関です。指名委員会等設置会社では、取締役は会社の業務執行ができず、取締役会または各委員会の一員として、専ら業務執行の監督に専念します。これに代わって、執行役は業務の決定・執行などをします。取締役と執行役を兼任することは可能です。
執行役の人数は1人でも大丈夫です。また、取締役会は執行役の中から代表執行役を選定しなければなりません。
以上(2022年6月)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 平田圭)
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画像:Mariko Mitsuda