Q.災害でリース物件が損壊したら、賠償しなければなりませんか?
A.リース物件については規定損害金の支払義務が発生します。
また、顧客などからの預かり品などについても損害賠償義務を負う恐れがあります。
1 リース物件が損壊した場合
自動車・コピー機・オフィス内装などを対象とした一般的なリース契約では、災害によってリース物件が損壊した場合、物件利用者が修理費用を負担した上でリース料を支払わなければならないものとされています。
また、リース物件が災害によって滅失し修復不能となった場合でも、物件利用者は規定損害金を支払わなければならないものとされています。
こうした事情を背景に、災害時のリース業者の対応としては、新たに代替品のリース契約を締結して、そのリース料を低額に抑えたり、規定損害金の支払いを長期分割にしたりするなど、物件利用者の実質的負担を軽くすることもあるようです。
もっとも、通常はリース物件に動産保険が掛けられています。念のため、保険の適用の有無を、リース業者に確認してみましょう。
2 顧客などからの預かり品などが損傷した場合
倉庫業者である自社が顧客から物品を預かっている最中、あるいは加工業者である自社が商品の仕掛品を預かっている最中に被災し、預かり品が損傷・滅失してしまったとします。こうした場合、自社は損害賠償義務を負うのでしょうか。
自社が預かり品を保管・管理するに当たって、どの程度注意を払わなければいけないのかは、物品を預かった原因によって異なりますが、多くの場合、自社は「善管注意義務」を負います。善管注意義務とは、自社の業務内容などを踏まえて、取引上一般的に要求される程度の義務をいいます。倉庫業者の例でいえば、「一般的な倉庫業者であれば、このくらいの保管・管理はすべき」というものです。
従って、預かり品を不用意に荷崩れや落下が起きやすい状態で保管していたところ、地震が発生して預かり品が落下し損傷してしまったような場合、たとえ損傷の原因が災害であったとしても、善管注意義務違反として、自社が損害賠償義務を負う恐れがあります。
一方、預かり品を保管していた倉庫が津波で流されて預かり品も一緒に流出してしまったというような場合、どれほど注意を尽くしてもその結果は避けられなかったといえるケースが多いと思われます。よって、通常は損害賠償義務を負うことはありません。
ただし、倉庫の立地などによっては、こうした場合でも損害賠償義務を負う恐れがあります。例えば、他の保管手段もあったのに、津波の危険のある海岸近くの倉庫に預かり品を保管していた場合などが考えられます。
以上(2020年4月)
(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 佐藤文行)
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