書いてあること
- 主な読者:社長交代の就任披露式典などの担当者となった人
- 課題:社長交代はそうそうあるものではなく、就任披露式典の進め方の情報も少ない……
- 解決策:リアルかオンラインかを決め、やるべきことをリストアップすることから始める
1 「就任披露」の準備で参考になる情報は少ない?
事業承継などで社長が交代する場合、株主総会の普通決議や登記が必要です。この他にも税務や社会保障に関係した手続きもあります。こうした手続きは、やり方は決まっていて、抜け漏れなく行うことが大事ですが、専門家や行政などいろいろと教えてくれる人がいます。
一方、社長の交代では、社内外に社長交代のお知らせをしたり、就任披露を行ったりします。就任披露では、新社長の所信表明を通じて会社の新たな方針を内外に伝える大切な場なので、ミスなくスムーズに進めたいものです。ただ、
就任披露のやり方は会社ごとに異なるので、就任披露の準備を担当することになった人は、参考にできる何らかの資料が欲しい
ことでしょう。そうした期待にお応えするのが、この記事です。就任披露式典を開催するケースを想定し、準備すべきことをまとめています。確認してみてください。
2 感染症に配慮してオンラインで開催する場合
新社長の就任披露は重要な行事になるので、総務部などを中心に明確な担当者を決めて進めることが大切です。最初に決めることは、
就任披露式典をリアルとオンラインのどちらで開催するか?
です。新型コロナウイルス感染症への配慮は欠かすことができず、その際の政府の方針にも従う必要があります。
仮にオンラインで行うことにした場合、ホテルの会場などの代わりにオンラインツールを準備する必要があります。ここでは詳細を割愛しますが、少なくとも以下のことは決めておく必要があります。
- 利用するオンラインツールの決定
- 万一に備え、サブのオンラインツールの確保
- 参加者への通知(パスワードなどを分かりやすく通知する)
- スピーチを依頼する人との事前打ち合わせとリハーサル
- オンラインツールを操作する人の決定(社員、業務委託)
- リハーサルと当日の接続テスト
- 必要に応じた代替ツールの確保
オンラインではリアルと雰囲気が大きく異なります。進行がダラダラすると参加者が飽きてしまいますし、新社長の所信表明も響かなくなるので、短時間でテキパキと終えられるようにしましょう。また、この手のイベントでは、主催者側の担当者が不要な場面でビデオオンのまま画面に映り続け、しかも「しかめっ面」というハプニングがありますので、こうした点にも注意してください。
3 当日の式次第と開催決定の判断
リアルで開催するケースに話を戻していきます。一般的に、就任披露式典などの式次第は次のようになるので、この流れを意識するとよいでしょう。
- 開会の辞
- 前社長のあいさつ
- 新社長のあいさつ
- 来賓祝辞
- 乾杯
- パーティー、懇談、歓談
- 祝電披露
- 閉会の辞
また、感染症の状況をみて、
オンラインへの切り替えや中止・延期の判断基準と決定時期
についても明確にしておく必要があります。これは重要な決定事項なので、新社長などと確実に協議しておきましょう。
4 担当者が事前に決めておくべきこと
1)開催日時、場所の決定
就任披露式典などは、社長交代を決める株主総会終了後のできるだけ早い時期に開催します。また、新社長の就任あいさつ状を作成・印刷・郵送する作業も並行して進めます。
就任披露式典などは、新社長にとって最初の対外的な行事となるので、ホテルを利用するのが一般的です。就任披露式典などの実績が豊富なホテルなら、催し物や進行方法などについてアドバイスも受けられます。なお、会場によっては自社が幕などを用意しなければならないこともあるので、会場側と自社の役割分担をしっかりと確認しましょう。
2)出席者と祝辞を依頼する来賓の決定
社内の出席者や招待客を決定します。社内からは、一定以上の役職者(部長以上など)は全員が出席します。また、招待客の対応をするための社員も出席します。
招待客には、大株主、金融機関、主要取引先、関連会社、マスコミなどもいます。この中から祝辞を依頼する来賓を決定し、事前に連絡します。
3)招待状の発送時期の決定
招待客は多忙な人が多い上、就任披露式典なども一定期間に集中しやすいものです。招待状は、就任披露式典などの30日前に届くように投函します。
4)記念品の決定
記念品は企業イメージに合ったものがよく、かさばるものは避けましょう。自社で記念品になるような商品を取り扱っている場合は、なるべく自社扱い商品から選ぶようにすれば、PR効果も期待できます。
5)マスコミなどへの連絡
必要に応じて、マスコミなどにも連絡しておきます。また、自社の広報と連携し、ホームページやSNSなどでPRするのもよいでしょう。
5 当日の運営:係別のポイント
1)担当者
担当者は開式の2時間前には集合します。来賓などの欠席がないかを確認し、必要な対応をとります。また、役割分担を最終確認した上でリハーサルをします。
2)設備・設営係
自社で設営が必要な会場の場合、設備・設営係が手配します。事前に、前日からの設営ができないところを確認し、可能であれば事前に済ませておくとスムーズです。
3)受付係
受付係は、少なくとも30分前には招待客を迎えられるように準備します。受付係の主な仕事は、招待状のチェック・記帳、リボン付け、名刺や金品の受領、会場までの案内などです。招待客と面識のある社員が担当するとスムーズです。
4)手荷物係
ホテルの場合はクロークに一任できます。自社などで開催する場合は、あらかじめ番号を付した預かり札を用意しておき、これと引き換えに手荷物を預かり、番号順に保管します。帰りの際は混雑するので、人数を多めに配置しておきます。
5)迎賓
会場の入り口に金屏風を立て、その前で自社の役員が招待客を迎えます。
6)司会・進行係
全般の進行管理と雰囲気づくりを担当します。進行係は司会役と密接に連絡を取り合いながらスムーズな進行を心掛けます。具体的には、「片仮名の祝電は、読みやすいように漢字仮名交じり文にしておく」「祝辞を依頼した来賓の到着時間を確認し、スタンバイしてもらった上で、誘導する」などの細かい配慮が必要です。
また、スケジュール通りに進めるには機転を利かせた判断が必要で、特に高齢の招待客に対しては専属のスタッフを配置することも検討します。
7)記念品係
閉会後、出口付近で記念品を手渡します。あるいは、事前に出席者の座席の近くに用意しておきます。
8)車両係
ホテルの場合は、必要に応じて無料駐車券を配布します。会場付近の混雑が予想されるときは、交通整理や警察への連絡もしておきます。
9)広報・記録係
必要に応じて、会場にはカメラマン席を設けます。会社の役員と来賓との懇談風景などはスナップを撮り、マスコミ各社にリリースします。ビデオはホテル側でも撮影してくれます。
10)会計係
会場費、記念品代、その他諸経費など全ての予算と実行予算を管理します。これには、ご祝儀の記録やタクシー券の精算なども含まれます。
6 後日のフォローアップ
後日、出席者に礼状を送ります。欠席者についても、祝い品をもらった先や重要な先には、社長や役員が記念品などを持参して、お礼に伺います。これらのフォローアップは、式典から間が空くと効果が半減するので、速やかに実行できるように段取りを整えておきます。
お礼のあいさつ回りが一区切りついたら、撮影したビデオや写真類を記録・整理します。社内報やPR誌などで特集を組んだり、後日、社史を編さんする際にも利用したりします。
以上(2022年4月)
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画像:photo-ac